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 お父様と話をして数日。婚約破棄の理由は気になるけれど、王城解放日の後、と明確に時間を指定されてしまっている以上、わたしにできることは何もない。今はブラッシング係として、獣化した第二騎士団の人たちのブラッシングを頑張ることしかできないのだ。

 今日は獣化した獣人が多いので、この前のようにすぐには終わらない。第二騎士団に来て、初めて午後までかかりそうだ。

「オルテシアさん、今日は食堂くるんすよね?」

 カインくんがわたしに話しかけてくれる。
 カインくんは基本的には第二騎士団の方へ訓練に行くが、わたしがブラッシング方法が分からない獣人がいると、やり方を教えに来てくれる。今日はパンダの獣人がいたので、それを教えて貰っていた。

 教えてくれた後に、掃除をして、その後はちょっとサボりらしく、わたしと雑談をしている。大丈夫なのかな、と思う反面、いてくれるのは心強いので、「戻らなくて平気なんですか?」とは聞けない。
 問題のパンダの獣人のブラッシングは終わって、後は勝手の分かる動物たちだけではあるものの、まだここに来るようになって数日。一人で放り出されるのは、少しばかり心細い。

「はい、今日はお邪魔しようと思ってます」

 今朝、ハウントさんにやんわりと、午後までかかるようだから昼食を準備しようか、という感じのことを聞かれたが、わたしはあえて、周りと一緒で大丈夫です、というニュアンスの言葉を返した。

 たぶん、男ばかりの食堂の中にぽいっと放り込まれるのはどうなのか、という配慮の元の提案だとは思うんだけど、別々にものを用意してもらうのも手間だし、なにより、騎士団の施設は、王城の方から少し離れているので、わざわざ昼食を取りに行くだけに、王城の客室に行くのが面倒くさい。

 そう言うわけで、今日はわたしも皆と一緒に食事を取る。
 前世では、チェーン店など、込み合う店の中で食べることがよくあったけれど、今やお嬢様。一人で食べることが多いし、家族で取るにしても、基本的に会話があまりなく、静かに食事を取るしかない。

 ハウントさんは「うるさいと思いますよ」と言っていたが、裏返せば賑やか、というわけだ。少しだけ楽しみなのである。質より量、とはいえ、王城勤務の人間に出されるものだし、騎士団の中には爵位持ちが少なからずいる。よっぽど変なものは出るまい。

 ――カラーン、カラーン……。

 そんな話をしていると、丁度、正午を知らせる鐘が鳴った。あと少しで、今している猫のブラッシングも終わる。

「それ終わったら食堂行きましょうか」

 カインくんの言葉に、わたしはうなずいた。
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