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少しして、笠置さんたちが教室に入ってきた。さっきのテレビの映像の音声は、隣の部屋にまで聞こえていたらしい。その音で彼らも起きたそうだ。
「……とりあえず朝が無事にきて良かったな。このまま漫画みたいにずっと夜だったらどうしようかと思ったぞ」
ずっと夜だったら、探索もかなり厳しそうになる。
「隣の教室は、一応昨日の夜のうちにあらかた調べたけど、脱出に使えそうなものはないし、窓は触れなかった」
「触れなかった?」
思わず聞き返すと、何かに拒まれているように、途中で手が止まってしまうと、笠置さんが教えてくれた。見えないだけで、この教室と同じように板が張り付けられていた跡が残っているのだろう。
「校舎自体は大きくないし、すぐに探し終わるだろ。……何かあるとまずいし、全員で行動しよう。分かれて探索してもあまりメリットがなさそうだしな」
笠置さんの提案に異を唱える人は誰もいない。これが、この××分校が普通の学校くらい大きい校舎だったら二手か三手に分かれて、と言うところだったが、こんな小さな校舎では分かれて探すより、一つの場所を大人数で隅々まで探す方がいいだろう。
「最初は――保健室、だっけ? おっさんが住んでた疑惑のある部屋から行こう」
職員室っぽい部屋は一応わたしがあまりものがないことを確認している。机や棚があるから、なんにも手がかりがない、ということはないだろうけど、でも、棚の扉は一部がガラスになっていて、中身が見えるタイプのものだったけれど、そこから見る限りでは目を引くものがなかった。あまり期待はしない方がいいだろう。
笠置さんや摩耶さん、小川さんが先行して廊下にでる。その少し後を晴海くんが、さらにその後をわたしと依鶴、端島さんが歩く、という形になった。
「――……」
目を凝らすと、廊下の窓にも木の板が打ち付けられている、ような気がした。試しに手を伸ばしてみると、指先が何かに当たった瞬間、その周りだけ、木の板の影のようなものが見える。
「廊下も打ち付けられていたの」
こっそりと端島さんに聞くと、彼はうなずいた。あちこち、廊下の窓の方に手を伸ばすけれど、ずっと木のようなものに触れている感覚があった。……一見すると、何もないのに。それでも目をこらえれば、木の板の影が見えてくるので、廊下の窓全てが出入口として機能しないことを知らしめられた。
ここに入る前、物音がしたような気がして、中を覗いたときはなにもなかったのに。
――と。
「先にこっち、調べておくか?」
笠置さんが足を止めて親指で指したのは、昇降口だった。
「……とりあえず朝が無事にきて良かったな。このまま漫画みたいにずっと夜だったらどうしようかと思ったぞ」
ずっと夜だったら、探索もかなり厳しそうになる。
「隣の教室は、一応昨日の夜のうちにあらかた調べたけど、脱出に使えそうなものはないし、窓は触れなかった」
「触れなかった?」
思わず聞き返すと、何かに拒まれているように、途中で手が止まってしまうと、笠置さんが教えてくれた。見えないだけで、この教室と同じように板が張り付けられていた跡が残っているのだろう。
「校舎自体は大きくないし、すぐに探し終わるだろ。……何かあるとまずいし、全員で行動しよう。分かれて探索してもあまりメリットがなさそうだしな」
笠置さんの提案に異を唱える人は誰もいない。これが、この××分校が普通の学校くらい大きい校舎だったら二手か三手に分かれて、と言うところだったが、こんな小さな校舎では分かれて探すより、一つの場所を大人数で隅々まで探す方がいいだろう。
「最初は――保健室、だっけ? おっさんが住んでた疑惑のある部屋から行こう」
職員室っぽい部屋は一応わたしがあまりものがないことを確認している。机や棚があるから、なんにも手がかりがない、ということはないだろうけど、でも、棚の扉は一部がガラスになっていて、中身が見えるタイプのものだったけれど、そこから見る限りでは目を引くものがなかった。あまり期待はしない方がいいだろう。
笠置さんや摩耶さん、小川さんが先行して廊下にでる。その少し後を晴海くんが、さらにその後をわたしと依鶴、端島さんが歩く、という形になった。
「――……」
目を凝らすと、廊下の窓にも木の板が打ち付けられている、ような気がした。試しに手を伸ばしてみると、指先が何かに当たった瞬間、その周りだけ、木の板の影のようなものが見える。
「廊下も打ち付けられていたの」
こっそりと端島さんに聞くと、彼はうなずいた。あちこち、廊下の窓の方に手を伸ばすけれど、ずっと木のようなものに触れている感覚があった。……一見すると、何もないのに。それでも目をこらえれば、木の板の影が見えてくるので、廊下の窓全てが出入口として機能しないことを知らしめられた。
ここに入る前、物音がしたような気がして、中を覗いたときはなにもなかったのに。
――と。
「先にこっち、調べておくか?」
笠置さんが足を止めて親指で指したのは、昇降口だった。
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