幸福の花束を

天空

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ヤドリギは芽を伸ばす

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 私が言われたまま厨房でぼーっと壁を見つめていると、扉が開いて中城さんと四葉ちゃんが戻ってきた。

「終わったわよ」

「2人は?」

「あんたが倒れたって知ると喧しくなりそうだったからスタッフルームで仕事する様に言っといたよ」

「ありがとうございます。それで、彼の式は」

「ん? あぁここでするってよ」

「そうですか」

 安堵と心配の混じったため息が口から溢れた。

「では、私はスタッフルームの方に顔出してきますね」

「あいよ、さっさと行ってやんな」

「先輩!」

 私が扉を開けると、途端黄色い塊がぶつかってきた。

「町田さん。どうしたのいきなり」

「どうしたもこうしたも無いですよ! 倒れたんですよね!?」

「あれ、聞いてたの?」

 中城さんめ、ちゃっかりしてるんだから。

「全く。今日はもう帰りなさいね。私は明日にでも思い出の公園とやらを実際に見て来るから」

「じゃあついでに町田さんも連れてってあげて」

「「え!?」」

 綺麗にハモって私を見る2人。

「な、何で連れてくのよ!」

「そうですよ! 私は先輩と仕事したいです!」

「駄目? 良い経験かなって思ったんだけど」

 しょぼんと俯き2人に目線で上目遣い気味に訴えた。

「全く。分かった分かった連れてくから。早くそれ辞めなさい」

「はい、決定ね。町田さんも分かった? 木那乃、貴方も嫌そうな顔しない!」

「分かったってば、もう。町田さんもごめんなさいね」

「いえ! 先輩が言うなら従います!」

「貴女も大概ね。んじゃ私は青園ちゃんを送ってくから、町田さんも今日は早く帰りなさいよ?」

「町田さん。お疲れ様」

「お疲れ様です! ゆっくり休んで下さい!」

 町田に見送られ、車に乗り込む2人。

「全く、一体どういうつもりであんな事言ったのかしら?」

「せっかくだから、2人にも仲良くなって欲しくて。木那乃、私以外に友達居ないでしょ?」

「だからって、強引よ」

「私、今回の式が終わったら父親に会いに行こうかと思うの」

 運転を始めて数分、ポツリと青園は呟いた。

「そう、大丈夫なの?」

「分かんない、でも私もそろそろ乗り越えて前に進まないとかなって」

「それってどうゆう……」

 鬼灯が助手席を横目に見ると、青園は話を遮るように夢の世界へ旅立っていた。
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