幸福の花束を

天空

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ヤドリギは芽を伸ばす

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 内容の朧げな夢の不快感と憂鬱な気分を抱えたまま私が式場に着くと、普段は1台も停まってない駐車場に今日は赤い車が1台堂々と停まっていて、それを見ただけで私の気分は晴れていた。

「青園ちゃん! 従業員を名乗る不審者が居たわよ!」

「先輩! なんなんですかこの人!」

 自動ドアを開くと赤い髪を床ギリギリまで垂らした木那乃に町田さんが首根っこを掴まれて子猫の様にプラーンとしていた。

「こら、木那乃。町田さんを虐めないの。私の後輩なんだから」

「え、このプリン頭、本当にここで働いてるの?」

 信じられないという顔をしながら雑に町田さんを下ろして私の顔にグイっと近づいた。

「雇うのはいいけどせめてあたしにくらい教えなさいよ!」

「……言ってなかったっけ?」

「言ってないわよ!」

 ごめんねー。と町田さんに手を合わせて謝る木那乃を見ていたら今朝の嫌な気分が有ったことすら忘れてしまった。

「青園先輩、この方はモデルさんか何かですか?」

 私の後ろに隠れて小動物の様に木那乃を警戒する。

「ほら、青園ちゃんのせいで怯えられちゃったじゃない!」

「初対面で木那乃みたいな巨人に掴まれたらそりゃこうもなるでしょ」

 それにしてもモデルかぁ、確かにあの身長と人形のように整った顔つき。そう間違えてもおかしくないくらい最近の木那乃は美容に凝っていた。

「そうそう、木那乃は装飾担当よ。そういえば教えて無かったわね」

「え、この式場の作者さんですか!?」

「そうよ~」

 目をまん丸にして驚く町田に満足そうな顔で手を顎に添える木那乃。

「で、今日はどうしたの?」

「どうしたのって」

 木那乃はドカッと受付に座った。

「新しく客来たって言うから来たのよ? 次のモチーフどうするのか、聞いてるでしょ?」

 数秒の沈黙の後、町田は慌ててポケットからメモ帳を取り出し、そのまま固まった。

「……聞くの忘れました」

「「えぇ!?」」
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