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3章 とこしえの大地亀ベルガド攻略編
428 ナントカは剣より強し
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「いいか、先生よお? 人っていう漢字は、人と人が支え合ってる字になってるんだぜ?」
とりあえず、俺はさらに踏み込んだ説得を試みた。相手が頭おかしいのは重々承知しているが、他に何すればいいのかわからんし。
しかし、
「え? カンジ? なんですかそれは?」
まるで俺の心は伝わってないようだ……。助けて金八先生!
「よく考えてみろよ! 世界が平和でストレスフリーだと毎日の生活も楽しいだろ! 飯も美味いし!」
「え? 僕としては世界が絶望と悲しみに満ちていたほうが、呪術の研究がはかどりますし、毎日のごはんも美味しく食べられるんですけど?」
「ひ、人の不幸でメシウマすんな!」
まあ、ちょっぴりその理屈もわからんでもないが……。
「いいか、この暴マーをこのまま野に放ったら、なんやかやで人がたくさん死ぬだろ? お前はもし、そんなふうにたくさんの人が死んでるのを目の当りにしたらどう思うよ? 辛いでしょ!」
「うーん、そうですね……。どっちかというと、もったいないなーって思うでしょうかねえ」
「もったいない?」
「はい。どうせたくさんの人が犠牲になるのなら、呪術の研究に使われたほうがはるかに有意義でしょう? それなのに、呪術とは関係のない事象で命を散らすとか、もったいない以外の何物でもない――」
「も、もういい! お前はもう何もしゃべるな!」
常人とは倫理観が違い過ぎる! こいつはしょせん、言葉が通じるだけのモンスターか。
しかし、このままではラチがあかない。平和の尊さをこうも理解できない生き物がいるとは。だいたいこいつ、呪術に執着しすぎだろ。世界の中心は呪術かよ。クソの極みの術なのにさあ。
と、俺が歯ぎしりしていると、
「トモキ君、困ってるみたいだねえ。うふふ」
近くで何やら聞き覚えのある声がした。なんだろう? 声のしたほうを見ると、そこにはネグリジェ姿の幼女が立っていた。声と同様、俺にはその顔にはよく見覚えがあった。
「お前、なんでここに!」
そう、ドノヴォンのロリババア女帝様だった。
「いるならいるで、もっと先に出て来いよ! お前の魔法でなんかこう……いろいろ楽にできただろ!」
「何言ってるの? ファニファ、ここにいないよ?」
「? 実際俺の目の前にいるじゃねえかよ」
「これは魔法で姿だけここに送っただけだよ。ほんとのファニファはモメモにいるの。ここにはいないんだよ」
「……立体映像みたいなもんかよ」
なるほど。よく見るとその姿はうっすら透明だ。本人の言う通り、本体は王宮の自分の寝室にいるんだろう。服装もそんな感じだし。
「サンディー先生の帰りが遅いから、何かあったのかなーって魔法で様子を見てみたら、ベルガドであのマーくんが復活してるんだもん! ファニファ、びっくりだよー」
「マーくんて」
あの竜の呼び方、これでええんか?
「まあいい。ちょうどいいところに来た。お前のチート神聖魔法であのバカをどうにかしてくれ」
「えー、無理だよー」
「え」
「だって、ほんとのファニファはここよりずっと遠くにいるんだよ? サンディー先生をやっつけられるような超すごい魔法なんてここで使えるわけないでしょ?」
「じゃあ、お前何しにここに出てきたんだよ! 役立たずかよ! 俺を煽りに来ただけなのかよ! クソかよ!」
一瞬で希望が断たれてキレるほかない俺だった。
「あっはっは。だいじょうぶだよ、トモキ君。魔法なんか使わなくても、サンディー先生はやっつけられるよー」
「え、マジで」
「マジでー」
「どうやって?」
「うーん? 方法はいろいろあるけど、例えばこういうのを使って……」
と、女帝様が言った直後、その手に分厚い、古びた魔導書が現れた。表紙には「ロードン暗黒魔術大全第二巻」とあった。って、これはもしや例の……。
「あ、その魔導書は!」
呪術バカがそこで素っ頓狂な声を上げた。やつにも立体映像の女帝様の姿は見えているようだ。
「サンディー先生。あんまり悪いことしちゃうと、ファニファがこの本、燃やしちゃうよ?」
女帝様はにっこり笑いながら言う。
「そ、それはやめてください! その本にはまだ解読してない部分がいっぱいあるんです!」
リュクサンドールは真っ青だ。
「悪い先生へのおしおきはもちろん、それだけじゃないよ? 学院の教師のお仕事はクビだし。明日から無職だし」
「うわあ。無職になったら、呪術関連の本も買えなくなっちゃうじゃないですか!」
「あと、先生を討伐対象のモンスターとして登録しちゃうし。高額の賞金かけちゃうし。毎日たくさんの人に狙われちゃって、これじゃあ呪術の研究どころじゃないよね、うっふっふ」
「な、なんでおそろしいことを!」
リュクサンドールはへなへなとその場に崩れ落ちた。
「陛下、お願いです! そんなことはどうかおやめください!」
「うーん? 悪い先生がいい先生になるって言うなら、やめてあげてもいいかなー」
「はい! 僕は今日からいい先生になります!」
「マーくんとは縁を切って、トモキ君の味方に戻らないと、いい先生とは言えないよ?」
「はい! すぐにそうします! 陛下の御心のままに!」
と、きっぱり答えると、暴マーの隣から俺の隣に高速移動してくる男だった。何このチョロすぎるコウモリ野郎……。
「というわけで、これからよろしくお願いします。トモキ君!」
「な、なにが『というわけで』だあっ!」
ハリセン(ゴミ魔剣)で呪術バカをどついて叫ばずにはいられない俺だった。この戦い、一応世界の命運がかかってるらしいのよ! わかってるの! ねえ!
とりあえず、俺はさらに踏み込んだ説得を試みた。相手が頭おかしいのは重々承知しているが、他に何すればいいのかわからんし。
しかし、
「え? カンジ? なんですかそれは?」
まるで俺の心は伝わってないようだ……。助けて金八先生!
「よく考えてみろよ! 世界が平和でストレスフリーだと毎日の生活も楽しいだろ! 飯も美味いし!」
「え? 僕としては世界が絶望と悲しみに満ちていたほうが、呪術の研究がはかどりますし、毎日のごはんも美味しく食べられるんですけど?」
「ひ、人の不幸でメシウマすんな!」
まあ、ちょっぴりその理屈もわからんでもないが……。
「いいか、この暴マーをこのまま野に放ったら、なんやかやで人がたくさん死ぬだろ? お前はもし、そんなふうにたくさんの人が死んでるのを目の当りにしたらどう思うよ? 辛いでしょ!」
「うーん、そうですね……。どっちかというと、もったいないなーって思うでしょうかねえ」
「もったいない?」
「はい。どうせたくさんの人が犠牲になるのなら、呪術の研究に使われたほうがはるかに有意義でしょう? それなのに、呪術とは関係のない事象で命を散らすとか、もったいない以外の何物でもない――」
「も、もういい! お前はもう何もしゃべるな!」
常人とは倫理観が違い過ぎる! こいつはしょせん、言葉が通じるだけのモンスターか。
しかし、このままではラチがあかない。平和の尊さをこうも理解できない生き物がいるとは。だいたいこいつ、呪術に執着しすぎだろ。世界の中心は呪術かよ。クソの極みの術なのにさあ。
と、俺が歯ぎしりしていると、
「トモキ君、困ってるみたいだねえ。うふふ」
近くで何やら聞き覚えのある声がした。なんだろう? 声のしたほうを見ると、そこにはネグリジェ姿の幼女が立っていた。声と同様、俺にはその顔にはよく見覚えがあった。
「お前、なんでここに!」
そう、ドノヴォンのロリババア女帝様だった。
「いるならいるで、もっと先に出て来いよ! お前の魔法でなんかこう……いろいろ楽にできただろ!」
「何言ってるの? ファニファ、ここにいないよ?」
「? 実際俺の目の前にいるじゃねえかよ」
「これは魔法で姿だけここに送っただけだよ。ほんとのファニファはモメモにいるの。ここにはいないんだよ」
「……立体映像みたいなもんかよ」
なるほど。よく見るとその姿はうっすら透明だ。本人の言う通り、本体は王宮の自分の寝室にいるんだろう。服装もそんな感じだし。
「サンディー先生の帰りが遅いから、何かあったのかなーって魔法で様子を見てみたら、ベルガドであのマーくんが復活してるんだもん! ファニファ、びっくりだよー」
「マーくんて」
あの竜の呼び方、これでええんか?
「まあいい。ちょうどいいところに来た。お前のチート神聖魔法であのバカをどうにかしてくれ」
「えー、無理だよー」
「え」
「だって、ほんとのファニファはここよりずっと遠くにいるんだよ? サンディー先生をやっつけられるような超すごい魔法なんてここで使えるわけないでしょ?」
「じゃあ、お前何しにここに出てきたんだよ! 役立たずかよ! 俺を煽りに来ただけなのかよ! クソかよ!」
一瞬で希望が断たれてキレるほかない俺だった。
「あっはっは。だいじょうぶだよ、トモキ君。魔法なんか使わなくても、サンディー先生はやっつけられるよー」
「え、マジで」
「マジでー」
「どうやって?」
「うーん? 方法はいろいろあるけど、例えばこういうのを使って……」
と、女帝様が言った直後、その手に分厚い、古びた魔導書が現れた。表紙には「ロードン暗黒魔術大全第二巻」とあった。って、これはもしや例の……。
「あ、その魔導書は!」
呪術バカがそこで素っ頓狂な声を上げた。やつにも立体映像の女帝様の姿は見えているようだ。
「サンディー先生。あんまり悪いことしちゃうと、ファニファがこの本、燃やしちゃうよ?」
女帝様はにっこり笑いながら言う。
「そ、それはやめてください! その本にはまだ解読してない部分がいっぱいあるんです!」
リュクサンドールは真っ青だ。
「悪い先生へのおしおきはもちろん、それだけじゃないよ? 学院の教師のお仕事はクビだし。明日から無職だし」
「うわあ。無職になったら、呪術関連の本も買えなくなっちゃうじゃないですか!」
「あと、先生を討伐対象のモンスターとして登録しちゃうし。高額の賞金かけちゃうし。毎日たくさんの人に狙われちゃって、これじゃあ呪術の研究どころじゃないよね、うっふっふ」
「な、なんでおそろしいことを!」
リュクサンドールはへなへなとその場に崩れ落ちた。
「陛下、お願いです! そんなことはどうかおやめください!」
「うーん? 悪い先生がいい先生になるって言うなら、やめてあげてもいいかなー」
「はい! 僕は今日からいい先生になります!」
「マーくんとは縁を切って、トモキ君の味方に戻らないと、いい先生とは言えないよ?」
「はい! すぐにそうします! 陛下の御心のままに!」
と、きっぱり答えると、暴マーの隣から俺の隣に高速移動してくる男だった。何このチョロすぎるコウモリ野郎……。
「というわけで、これからよろしくお願いします。トモキ君!」
「な、なにが『というわけで』だあっ!」
ハリセン(ゴミ魔剣)で呪術バカをどついて叫ばずにはいられない俺だった。この戦い、一応世界の命運がかかってるらしいのよ! わかってるの! ねえ!
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