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3章 とこしえの大地亀ベルガド攻略編
393 大霊廟 Part 5
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「おい! しっかりしろ!」
俺はあわてて変態女の体を揺さぶったが返事はなかった。完全に力を使い果たして気絶しているようだった。
「わあ、大変ですよ! この中で一番頼りになるサキさんが気絶してしまいましたよ! 僕たち、これからどうしたらいいかさっぱりわからないじゃないですか!」
「まあ、確かに……」
俺たちがここまで順調に来れたのは、ほぼこの女のおかげだしなあ。今の棺のトラップだって、こいつは見抜いてたみたいだし。
「とにかく、この女は魔力なくなってこうなったんだから、お前、有り余ってる魔力を注入してやれよ」
「え、僕、誰かに魔力をあげる術なんて使えませんよ?」
「いや、なんかこう気合を入れれば、それっぽいことはできるだろ? ハイオク満タン魔力注入!ってイメージで」
「……はあ」
リュクサンドールはあいまいに首をかしげると、「じゃあ、とりあえずやってみますね」と、倒れている変態女の背中に手を置いた。そして、目を閉じ何やら集中し始めたが……直後、
「うひゃあ」
と、間抜けな声を出して、体が溶けてしまった。なんだコレ? きめえし。
「おい、誰が溶けろって言ったよ。ちゃんと魔力を送ったのか?」
いつもどおり瞬間再生して元の形に戻った男に俺は文句を言ったが、
「いやあ、人間慣れないことはするもんじゃないですね。拒絶反応が出てしまいました」
ということだった。拒絶反応で溶けるのかよ、お前は。
「それに、サキさんは神聖属性なので暗黒属性の僕とは相性最悪なんですよ。それもあるんじゃないですかね」
「へえ、こいつ神聖属性なのか」
痴女そのものなのに意外だな。まあ、あのユリィのお師匠さんだしな。
「じゃあ、他の奴らは大丈夫なんじゃないか? シャラは氷属性だし、ヒューヴも鳥人間だからたぶん風属性だろ」
俺は近くでうずくまっている二人を指さした。魔法陣が消えたとはいえ、魔力は完全に失ってしまったようで、二人とも真っ青な顔をしている。
「じゃあ二人にも同じことをしてみますね」
と、リュクサンドールはまずシャラに近づき、その肩に手を置いて集中し始めた。今度はうまくいくんだろうか? とりあえず体が溶けてはいないようだが。
やがて、シャラは自力で立ち上がった。その顔色はもう蒼白ではなく、背筋もピンと伸ばしている。魔力注入で復活したようだった。
ただ、その髪は今は真っ黒だった。目も赤い。ついでに、顔つきも妙に険悪で、まとっているオーラもまがまがしいような。これは……。
「おい、お前、シャラなのか?」
「お前、ですって? きやすくアタイに話しかけんじゃねーよ、このヒョーロクダマッ!」
シャラは下につばを吐きながら俺にメンチ切ってきた。なんだこれ、なんだこれ? 完全にキャラ変わってるじゃねえか。
「もしかして……邪悪な魔力をダイレクトに注入されたから、不良になっちまったのか?」
それでこんな昭和のスケバンみたいな残念なキャラに? なるほど、あの変態女が言った通り、邪悪な男の闇の魔力は普通の人間にとっては有害そのものみたいだな。
「おい、リュクサンドール! ヒューヴに魔力をやるのはいい! 今すぐやめろ!」
俺はあわててリュクサンドールに叫んだが、時すでに遅しだった。そう、リュクサンドールのやつ、すでにヒューヴに邪悪な魔力を注入し終えていたのだ。
当然、復活したヒューヴは今までとは様子が違っていた。二枚の翼は漆黒に染まり、顔つきもバカっぽさが抜けてきりっとしたものになっていた。
そして、そんなやつは今、顔を右手で覆い、うつむきながら「ククク……第一の封印がついに解かれたようだな……」とつぶやいている。やべえ、なんかまためんどくさそうなキャラがキタコレ。
「あのう、一応聞きますけど、あなたはヒューヴ君でいいんですよね?」
「ああ、その名はもう捨てた」
「えっ」
「オレは今、闇に導かれ生まれ変わった。名乗るとすれば、そう、閃光のダークレイヴン!」
シャキーンッ!と、かっこよさそうなポーズを決めながらヒューヴは言うのだった。よりによってこいつは痛い中二病キャラかよ。バカが無理すんな。
「よかったですねえ、二人とも元通り元気になって」
「どこが元通りだよ!」
相変わらずのん気そのものの男に俺は叫ばずにはいられなかった。変態女が倒れて、二人は昭和のスケバンと痛い中二病になって、いったいこのパーティーどうなるんだよ?
俺はあわてて変態女の体を揺さぶったが返事はなかった。完全に力を使い果たして気絶しているようだった。
「わあ、大変ですよ! この中で一番頼りになるサキさんが気絶してしまいましたよ! 僕たち、これからどうしたらいいかさっぱりわからないじゃないですか!」
「まあ、確かに……」
俺たちがここまで順調に来れたのは、ほぼこの女のおかげだしなあ。今の棺のトラップだって、こいつは見抜いてたみたいだし。
「とにかく、この女は魔力なくなってこうなったんだから、お前、有り余ってる魔力を注入してやれよ」
「え、僕、誰かに魔力をあげる術なんて使えませんよ?」
「いや、なんかこう気合を入れれば、それっぽいことはできるだろ? ハイオク満タン魔力注入!ってイメージで」
「……はあ」
リュクサンドールはあいまいに首をかしげると、「じゃあ、とりあえずやってみますね」と、倒れている変態女の背中に手を置いた。そして、目を閉じ何やら集中し始めたが……直後、
「うひゃあ」
と、間抜けな声を出して、体が溶けてしまった。なんだコレ? きめえし。
「おい、誰が溶けろって言ったよ。ちゃんと魔力を送ったのか?」
いつもどおり瞬間再生して元の形に戻った男に俺は文句を言ったが、
「いやあ、人間慣れないことはするもんじゃないですね。拒絶反応が出てしまいました」
ということだった。拒絶反応で溶けるのかよ、お前は。
「それに、サキさんは神聖属性なので暗黒属性の僕とは相性最悪なんですよ。それもあるんじゃないですかね」
「へえ、こいつ神聖属性なのか」
痴女そのものなのに意外だな。まあ、あのユリィのお師匠さんだしな。
「じゃあ、他の奴らは大丈夫なんじゃないか? シャラは氷属性だし、ヒューヴも鳥人間だからたぶん風属性だろ」
俺は近くでうずくまっている二人を指さした。魔法陣が消えたとはいえ、魔力は完全に失ってしまったようで、二人とも真っ青な顔をしている。
「じゃあ二人にも同じことをしてみますね」
と、リュクサンドールはまずシャラに近づき、その肩に手を置いて集中し始めた。今度はうまくいくんだろうか? とりあえず体が溶けてはいないようだが。
やがて、シャラは自力で立ち上がった。その顔色はもう蒼白ではなく、背筋もピンと伸ばしている。魔力注入で復活したようだった。
ただ、その髪は今は真っ黒だった。目も赤い。ついでに、顔つきも妙に険悪で、まとっているオーラもまがまがしいような。これは……。
「おい、お前、シャラなのか?」
「お前、ですって? きやすくアタイに話しかけんじゃねーよ、このヒョーロクダマッ!」
シャラは下につばを吐きながら俺にメンチ切ってきた。なんだこれ、なんだこれ? 完全にキャラ変わってるじゃねえか。
「もしかして……邪悪な魔力をダイレクトに注入されたから、不良になっちまったのか?」
それでこんな昭和のスケバンみたいな残念なキャラに? なるほど、あの変態女が言った通り、邪悪な男の闇の魔力は普通の人間にとっては有害そのものみたいだな。
「おい、リュクサンドール! ヒューヴに魔力をやるのはいい! 今すぐやめろ!」
俺はあわててリュクサンドールに叫んだが、時すでに遅しだった。そう、リュクサンドールのやつ、すでにヒューヴに邪悪な魔力を注入し終えていたのだ。
当然、復活したヒューヴは今までとは様子が違っていた。二枚の翼は漆黒に染まり、顔つきもバカっぽさが抜けてきりっとしたものになっていた。
そして、そんなやつは今、顔を右手で覆い、うつむきながら「ククク……第一の封印がついに解かれたようだな……」とつぶやいている。やべえ、なんかまためんどくさそうなキャラがキタコレ。
「あのう、一応聞きますけど、あなたはヒューヴ君でいいんですよね?」
「ああ、その名はもう捨てた」
「えっ」
「オレは今、闇に導かれ生まれ変わった。名乗るとすれば、そう、閃光のダークレイヴン!」
シャキーンッ!と、かっこよさそうなポーズを決めながらヒューヴは言うのだった。よりによってこいつは痛い中二病キャラかよ。バカが無理すんな。
「よかったですねえ、二人とも元通り元気になって」
「どこが元通りだよ!」
相変わらずのん気そのものの男に俺は叫ばずにはいられなかった。変態女が倒れて、二人は昭和のスケバンと痛い中二病になって、いったいこのパーティーどうなるんだよ?
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