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3章 とこしえの大地亀ベルガド攻略編

391 大霊廟 Part 3

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 それから、俺たちはさらに奥に進んだ。霊廟の広間を抜けると、しばらくまた暗い通路が続いていた。この先にあの男が待ち構えているんだろうか?

「しかし、ラファディってやつはずいぶんは悪趣味だな。わざわざゾンビを作って番犬にしておくなんて」

 国を一つ滅ぼした話といい、明らかに他人の命を何とも思っちゃいないようだ。まさに狂人。

「おそらく彼は、他人を一度殺さないと支配下におけないのよ。死霊交信術ネクロマンシーの使い手だと名乗っていたでしょう」

 と、変態女が言った。そういや、あいつの特技は錬金術だけじゃないんだっけ。

死霊交信術ネクロマンシーは死者の魂を現世に呼び戻す、呪術と並ぶ邪悪な禁術だけど、術師のレベルによって、その魂の再現度は異なるの。技術が低い術師では、呼び戻した魂はあやふやで、せいぜい生前の強い記憶や感情が読み取れるくらいにしかならないけれど、ここにいる男の術はそうじゃないみたい。さっきの男たちを見る限り、ほぼ完ぺきに生前の魂を現世によみがえらせているようね。非常に危険な存在だわ」
「なるほど。そっちも相当な使い手ってことか」

 錬金術と死霊交信術ネクロマンシーの二刀流かよ。確かに危険な香りがするな。

「具体的にその二つを使って、どういうとんでもないことができるんだ?」
「最初に見かけた魔造人間ホムンクルスたちが、まさにその二つを組み合わせて作られたものでしょうね。彼女たちの体は錬金術で作られたもの。でも、その中に入っている魂は――」
「ああ、死霊交信術ネクロマンシーとやらで、冥界からお取り寄せしたものか」

 なるほどなあ。錬金術で人工の人間の体は作れても、心の制作は無理だから、どっかから持ってくる必要があるんだな。

「もちろん、死霊交信術ネクロマンシーにも、死者を肉体ごとこの世によみがえらせる術式はあるわ。とても高度なものだけれど。彼がその術ではなく、あえて魔造人間ホムンクルスに死者の魂を入れるやり方を選んだ理由ははっきりとはわからないけれど……なんとなく想像はつくわね」
「ああ、よりカスタマイズしやすいほうを選んだってわけか」

 死者の体をリサイクルするより、自分で一から体を組み立てたほうが、好きに改造しやすいだろうからなあ。

「それに、死霊交信術ネクロマンシーのみでこの世によみがえらせた死者は、不死族扱いになるから、どうしても弱点が出てくるわね」
「そうですね。僕も太陽の光や神聖魔法はすごく苦手です」

 と、近くの不死族の男が言った。いやお前、その二つはわりと平気なほうの不死族だろうがよ。太陽の光を浴びても灰にならないし、神聖属性の攻撃食らってもなかなか死なねえし。

「ということは、さっきの男たちは、死霊交信術ネクロマンシーのみで作られた、手抜きの不死族ってことね」

 と、今度はシャラが口を開いた。こいつには一応、ラファディという男について簡単に説明していた。

「そうね。彼らにはかなり高度な術式が使われているようだったけれど、この城のあるじが目指しているものという感じではなかったわね。シャラさんが言う通り、あれはただの手抜きだわ。強さも全然たいしたことなかったし」
「そう、そこよ! あんなヘナチョコを警備員にして置いておくなんて、ここの城主とやらもずいぶんなうっかりものね!」

 シャラは高飛車に笑った。いや、うっかりものはお前もだろうがよ。おまいう。

「ただ、油断はできないわ。きっとあんなのは、ただのあいさつがわりのようなものよ。こんな地下深くにこんな城を作れる男なんですもの。何かもっと仕掛けてくると思うわ。みんな慎重にね」

 変態女はラファディという男にとても用心深くなっているようだった。やはりこいつはいっぱしの魔法使いだから、相手がどれほどの魔法使いなのかわかるってことだろうか。

「そうですねえ。ラファディさんに僕の呪術が通用するといいですね!」

 一方、呪術オタはウキウキでこう言うだけだった。同じ魔法使いなのに、この違い。こいつ、少しは呪術以外の魔法のことも考えたらどうなんだよ。
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