上 下
374 / 436
3章 とこしえの大地亀ベルガド攻略編

373 大氷結の間

しおりを挟む
「で、この後はどこに行けばいいんだよ?」

 俺は亀妖精に尋ねた。ウェディングドレス姿から解放されて気分は爽快だったが、さすがにこれで終わりというわけではないだろうし。

「次はこの地下じゃ」

 亀妖精は俺たちのすぐ足元を指さした。

「地下? また落ちるのかよ」
「安心せい。ちゃんと階段はあるでの」

 と、亀妖精が言った通り、たちまちその場所には下に続く階段が現れた。というか、この階段の場所、あの霊が居座っていたところのちょうど真下だな。

「もしかして、あの霊をどうにかしない限り、こっから先に進めない構造になっていたのか? だから俺に、四人集めろって言ったのか?」
「まあ、そうじゃな」
「……そんだけの理由だったのかよ」

 四人がかりじゃないと絶対に倒せない敵がいるとか、もっと他にあるだろうがよお。

「じゃが、ここから先はさらなる強敵ぞろいじゃぞ。仲間は多いほうがよかろう」
「ま、確かに、人数が多いほうが仕事は早く終わるか」

 俺たちはそのまま地下へ続く階段を下りて行った。当然真っ暗だが、変態女の照明魔法のおかげで特に不自由はなかった……のだが、

「あ、もっと明かりが欲しいなら、僕が火葬の編み細工ウィッカーマンで周りを照らしますよ? どうですか一発?」

 と、さらに頭のおかしい男が頭のおかしい提案をしてくるのだった。お前のその術、明らかに照明用じゃないよね? 人をケシズミにするための術だよね? まあ、当然無視だ。

 やがて俺たちは階段を降り切り、扉の前に出た。この向こうにさらなる敵がいるんだろうか。

 ただ、その扉はコチコチに凍っていた。扉の周りの空気もかなりひんやりしているようだ。なんだろう。氷魔法の封印かな?

「おお! こんなに凍っていては、扉が開けられませんね! 今こそ、火葬の編み細工ウィッカーマンを使うとき!」
「いや、それはいいから!」

 俺はあわててやつをゴミ魔剣でぶった斬り、その詠唱を阻止した。だから、むやみに人をケシズミにする魔法を使うんじゃない!

「これぐらいの氷、俺がなんとかしてやらぁ!」

 そして、そのまま勢いよく扉を蹴った。ドーンッ! 扉を覆っていた氷は割れ、扉も中に吹き飛んでいった。どんなもんでいっ。

「すごいわ、勇者様。あんな上級の氷結封印術を蹴りだけで破るなんて。さすがのバカ力ね」
「バカ力っていうか、もはやただのバカだよなー」

 と、後ろから変態女とバカの声が聞こえてきた。バカにバカって言われたくないんですけど!

「いいから、とっとと仕事終わらせるぞ!」

 俺たちはそのまま中に入った。そこは扉と同様に氷で覆われた広間のようだった。空気は冷え冷えとしており、あちこちに何か閉じ込められた氷の塊が置かれている。

「……もしかして、あの氷に包まれているのが、ここに封印されているモンスターか?」
「そうじゃ。ここはベルガド封印窟第二の間。通称、大氷結の間じゃ。多くの邪悪な魔物たちを氷結系の魔術で氷漬けにして封印しておるのじゃ」
「あ、氷の封印魔術なら僕も何度か受けたことがあります。あれ、呼吸できないし、冷たいし、かなりきっついんですよねー」

 と、近くの邪悪な魔物が答えた。だからなんでこいつは、無駄にその手の経歴が豊富なんだよ。

「……この氷は、絶対刹那氷結術アブソリュート・モーメントね。相当に熟練した術者によるものだわ」

 変態女は周りの氷を見回しながら言う。よくわからんが、かなりの匠の仕事らしい。

「まあ、きっちり封印されてるんなら、ここのやつらはスルーでいいか。とっとと先に――」
「いや、それは無理じゃ。ここの封印はすでにその力をほぼ失っておる」

 と、亀妖精が言った直後だった。周りの氷が、ピキピキッと音を立てて次々と割れ始めた。

 そして当然、そこからはモンスターたちが次々と現れてくるわけで……。

「もしかして、こいつら全部片づけろってことか?」
「まあ、そうじゃな」
「……めんどくせえな」

 というわけで、唐突に俺たちのゴミ掃除のお仕事は始まったのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ブラック宮廷から解放されたので、のんびりスローライフを始めます! ~最強ゴーレム使いの気ままな森暮らし~

ヒツキノドカ
ファンタジー
「クレイ・ウェスタ―! 貴様を宮廷から追放する!」  ブラック宮廷に勤めるゴーレム使いのクレイ・ウェスターはある日突然クビを宣告される。  理由は『不当に高い素材を買いあさったこと』とされたが……それはクレイに嫉妬する、宮廷魔術師団長の策略だった。  追放されたクレイは、自由なスローライフを求めて辺境の森へと向かう。  そこで主人公は得意のゴーレム魔術を生かしてあっという間に快適な生活を手に入れる。    一方宮廷では、クレイがいなくなったことで様々なトラブルが発生。  宮廷魔術師団長は知らなかった。  クレイがどれほど宮廷にとって重要な人物だったのか。  そして、自分では穴埋めできないほどにクレイと実力が離れていたことも。  「こんなはずでは……」と嘆きながら宮廷魔術師団長はクレイの元に向かい、戻ってくるように懇願するが、すでに理想の生活を手に入れたクレイにあっさり断られてしまう。  これはブラック宮廷から解放された天才ゴーレム使いの青年が、念願の自由なスローライフを満喫する話。 ーーーーーー ーーー ※4/29HOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝! ※推敲はしていますが、誤字脱字があるかもしれません。 見つけた際はご報告いただけますと幸いです……

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

婚約破棄……そちらの方が新しい聖女……ですか。ところで殿下、その方は聖女検定をお持ちで?

Ryo-k
ファンタジー
「アイリス・フローリア! 貴様との婚約を破棄する!」 私の婚約者のレオナルド・シュワルツ王太子殿下から、突然婚約破棄されてしまいました。 さらには隣の男爵令嬢が新しい聖女……ですか。 ところでその男爵令嬢……聖女検定はお持ちで?

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件

月風レイ
ファンタジー
 普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。    そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。  そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。  そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。  そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。  食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。  不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。  大修正中!今週中に修正終え更新していきます!

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

処理中です...