上 下
364 / 436
3章 とこしえの大地亀ベルガド攻略編

363 ベルガド封印窟へ

しおりを挟む
 封印窟へ続く洞穴は咆哮の滝の激しい水流の向こうにあったが、変態女が魔法で一時的に滝を真っ二つに割ったので、俺たちは問題なくそこに入ることができた。亀妖精も俺たちについてきた。案内役だろうか。

 洞穴の中の空気はひんやりしていて、真っ暗だった。変態女の出した照明魔法の光を頼りに俺たちは奥に進んだ。今のところ特に変わったところのない普通の洞穴だ。本当に、この先にヤバイ魔物たちが封印されているんだろうか?

「……そういや、あんたらどういう知り合いなんだ?」

 歩きながら、ふと気になったので、変態女とリュクサンドールに尋ねた。

「ああ。サキさんは、何年か前に、僕に呪い鑑定アプリ開発への協力を依頼してきたんですよ」
「ああ、あれか」

 どうりでリュクサンドールの謎器具とエフェクトが似てるわけだ。開発者同じなんだからな。

「サンディーのおかげで、アプリの開発もずいぶんスムーズにできたわ。さすが呪術の専門家ね」
「いやー、それほどでも」
「きっとあれは、サンディーが呪術師として唯一人に誇れる功績ね」
「いやー、それほどでも」

 と、皮肉ともとれるサキの発言も笑って流す男だった。呪術師として唯一人に誇れる功績ってなんだよ。唯一のって。まあ、どの通りすぎるけどさ。

「なーなー、サキちゃんっていっつもそんなエロい格好してるの?」

 と、今度はバカが変態女に尋ねた。

「そうね。私はいつもこんな感じよ」
「マジか! すげーな! おっぱいさわってもいい?」
「だーめ」
「うーん、さわるのはダメかあ……」

 と、何やら本気で落ち込んでいるバカだった。なぜこいつは、知り合ったばかりの女にこうもストレートに乳を触らせろと言えるのか。いくら格好が変態そのものだからってさあ。

 やがて、そんなこんなで俺たちは洞穴の行き止まり、封印窟とやらの入り口らしきところに到着した。

 そこの洞穴の岩肌には分厚い扉がはめ込まれていた。また、そのすみっこに小さく「必ず四人で入ること!」と注意書きが書かれていた。やはりここは四人でないとまずいらしい。

「よし、じゃあいくか!」

 俺はただちにその扉を拳でぶち破り、みんなと一緒に中に入った。

 中は、むき出しの岩肌が続いていた今までの洞穴とは違って、しっかりとした壁と天井があるようだった。また、俺たちが足を踏み入れた当初は真っ暗だったが、数歩進むと、急にあちこちに設置されている燭台に光がともった。人の気配を察知して作動するマジックアイテムだろうか。まるでスマート家電だぜ。

 扉からはしばらくは狭い通路が続いていたが、やがて開けた場所に出た。丸いホールのようなところで、その中央には青白く光る奇妙な玉が置かれていた。また、ホールの壁には四つの扉が等間隔に設置されていた。

「……なんだ、ここは?」

 と、俺が辺りを見回しながら言うと、

「ここはベルガド封印窟、第一の間。通称、怨念の間じゃ」

 亀妖精が答えた。

「怨念? そういう恨めしい気持ちを抱いたやつが、ここに封印されているのか?」
「さよう。あれじゃ」

 亀妖精はさらに中央の青白く光る玉を指さした。

 と、その直後、その光は大きく揺らぎ、人の姿に形を変えた。

「……憎い。ああ、なんて憎いのだろう……」

 突如俺たちの目の前に現れたその男は、膝を抱えてうずくまった態勢で床をじっと見つめながら、何やらブツブツつぶやいている。その体はやはり青白く光っている。

「はーん? こいつがここに封印されてる魔物ってやつか。ようは、これを倒せばいいんだな?」

 俺はすぐにゴミ魔剣でその男に斬りかかった――が、その刃はむなしく男の体をすり抜けるだけだった。くそ、こいつ実体がないのかよ。

「おい、こいつには武器は効かねえ。魔法使いチームなんとかしてくれ」
「それは無理よ、勇者様」
「え」
「生半可な魔法でなんとかできる存在なら、こんなところに封印されていないと思うの」

 と、サキは男を指さしながら言う。

「そうじゃ。こやつは、この世に残した恨みの念が強すぎるあまり、いかなる浄化の魔法も受け付けない存在となった、永劫地縛霊なのじゃ」
「永劫で地縛霊なのかよ」

 しょっぱなから死ぬほどめんどくさそうな相手だな、オイ!

「じゃあ、どうすりゃいいんだよ? こいつも含めてここの魔物全部倒せって話だったのに、武器も魔法も効かねえんじゃ倒せねえじゃねえか」
「倒すのではなく、成仏させればよいのじゃ。そのための四人なのじゃ」

 と、亀妖精はホールの壁にある四つの扉を指さしながら言った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ブラック宮廷から解放されたので、のんびりスローライフを始めます! ~最強ゴーレム使いの気ままな森暮らし~

ヒツキノドカ
ファンタジー
「クレイ・ウェスタ―! 貴様を宮廷から追放する!」  ブラック宮廷に勤めるゴーレム使いのクレイ・ウェスターはある日突然クビを宣告される。  理由は『不当に高い素材を買いあさったこと』とされたが……それはクレイに嫉妬する、宮廷魔術師団長の策略だった。  追放されたクレイは、自由なスローライフを求めて辺境の森へと向かう。  そこで主人公は得意のゴーレム魔術を生かしてあっという間に快適な生活を手に入れる。    一方宮廷では、クレイがいなくなったことで様々なトラブルが発生。  宮廷魔術師団長は知らなかった。  クレイがどれほど宮廷にとって重要な人物だったのか。  そして、自分では穴埋めできないほどにクレイと実力が離れていたことも。  「こんなはずでは……」と嘆きながら宮廷魔術師団長はクレイの元に向かい、戻ってくるように懇願するが、すでに理想の生活を手に入れたクレイにあっさり断られてしまう。  これはブラック宮廷から解放された天才ゴーレム使いの青年が、念願の自由なスローライフを満喫する話。 ーーーーーー ーーー ※4/29HOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝! ※推敲はしていますが、誤字脱字があるかもしれません。 見つけた際はご報告いただけますと幸いです……

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

美しい姉と痩せこけた妹

サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――

婚約破棄……そちらの方が新しい聖女……ですか。ところで殿下、その方は聖女検定をお持ちで?

Ryo-k
ファンタジー
「アイリス・フローリア! 貴様との婚約を破棄する!」 私の婚約者のレオナルド・シュワルツ王太子殿下から、突然婚約破棄されてしまいました。 さらには隣の男爵令嬢が新しい聖女……ですか。 ところでその男爵令嬢……聖女検定はお持ちで?

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

処理中です...