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3章 とこしえの大地亀ベルガド攻略編

348 ワンダートレント

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 俺たちがそのポイントに到達したときには、もう日は暮れかかっていた。

「ワンダートレントってやつらは、夜になると動き回るんだっけ?」
「ああ。だが、すでに私たちは彼らに相当近づいているはずだ。日が落ちても、このまま捜索を続けたほうがいいだろう」

 と、俺の問いにキャゼリーヌが答えた。確かにここまで来たらそのほうがよさそうだ。俺たちは日が落ちると同時にランタンなどの明かりを用意して、暗い森をうろつきまわった。とっとと出てこい、動く?竹やーい。

 と、そんなとき、俺がリードを持っている野獣が急に反応した。

「コッチダ、トモダチ!」

 そう言って、野獣は暗い茂みの中に突撃して行く。俺たちはあわててその後を追った。

 するとすぐに俺たちは少し開けた場所に出て……ついにワンダートレントらしきやつらと遭遇した!

「え、これがそうなの?」

 俺はその姿にちょっと面食らってしまった。動き回る竹だというから、てっきりまっすぐ伸びた竹に笹の葉っぽい手足がついてるようなイメージだったのに。

 そう、ワンダートレント(夜の姿)は、全身の形こそ竹そのものだったが、決して「まっすぐ」ではなかった。緑色の長い体をひたすらうねうねさせていた。まるで竹模様の大蛇だ。

 しかも、

「おお、こんな夜更けに人間たちに出会うとは」
「初めまして、見知らぬ人」
「もしや迷い子たちかな? 夜の森は危険ですぞ。フォフォフォ」

 などと、妙に気さくに俺たちに話しかけてくるのだった。どっから声が出ているのか知らないが、ちゃんとした人間の言葉だ。

「お、お前たちがワンダートレントってやつなのか?」
「はい、そうですが」
「そ、そう……」

 間違いないらしい。さっきのケルジャンっていうパンダもどきと、対応違い過ぎるだろ。

 って、まあ、今は細かいことはいいか。やっと目的のモンスターに出会えたんだし。

「実は俺たち、あんたたちに聞きたいことがあってここまで来たんだよ――」

 と、俺が話しかけた瞬間だった。

「ウオオオッ! オレ、ワンダートレント、クウ! クウ!」

 野獣がまたしてもリードを引きちぎって、ワンダートレントたちのところに突撃して行った!

「おい、バカ、やめろ! 食うな!」

 俺はあわてて野獣を止めたが、

「ああ、我々を食べたいのなら、どうぞ」
「好きなだけ我々をお食べなさい、カプリクルスの若者よ」

 なんと、ワンダートレントたちは食べられてもいいらしい。

「いや、ヤギに食べられたらさすがにまずいだろ? あんたらだって死ぬだろ?」
「そうですね。何者かに捕食されれば、我々の個としての生命活動はついえるでしょう」
「しかし、我々の命は、我々を捕食したものの命のかてになって、生きるのです」
「つまり、他者に食べられることは、我々にとって死ではないのです」

 なんかもう、すごい悟り切っちゃってる! これが植物系の思考ってやつか。

「ただ、残念なことに、今は我々の繁殖期ではなく、人間やカプリクルスの好む繁殖用の地下茎はご用意できません。それが目的で来られたというのなら、また日を改めて出直してきてはもらえないでしょうか」
「いや、それはいいから……」

 そりゃ、タケノコは美味しいけどさあ。こんな紳士たちから奪ってまで食べる気はしないわよ、さすがに。

 まあ、こんな話をしている間にも、近くでは、野獣がバリバリとワンダートレント食ってるんだが。マジで食い放題でええんか、これ。

「実は、俺たちはあんたたちに聞きたいことがあってここまで来たんだ」

 かくかくしかじか。とりあえず野獣は無視して、今までのいきさつを説明した。

 すると、

「おお、そういえば、そちらの方には見覚えがありますな!」

 と、竹蛇の一体がヒューヴのほうを見て言った。

「確か、三百年ほど前に、我々とお会いしたはず……」
「え、そうだっけ?」

 と、バカは相変わらず何も覚えていないようだったが、俺は内心ほっとする思いだった。ワンダートレントうんぬんの話が、バカの記憶違いじゃなくて本当によかったあ。
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