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3章 とこしえの大地亀ベルガド攻略編
327 続・ベルガドふるさと通信
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聖ドノヴォン帝国のラスーン家は名門の上流貴族だということで、住所や連絡先は半ば公開されているようなものらしく、キャゼリーヌからの通信はすぐにつながった。最初に対応したのは下っ端執事と思われる男だったが、俺が顔を見せて勇者アルドレイだと名乗ると、ただちに当主のジジイに通信をつなげてくれた。
「あ、おじいさん、はじめまして。俺は勇者アルドレイ改めトモキ・ニノミヤといいます。お孫さんにはお世話になっております」
ザックの祖父にしてラスーン家の当主のジジイはちょうど書斎のような部屋にいた。七十歳くらいだろうか。白髪で貫録のあるジジイだった。
「これはこれは勇者様。今日はなんという素晴らしい日なのでしょう。このような形であなた様のご尊顔を拝し奉ることができるとは」
「あ、別に堅苦しい挨拶とかはいいんで」
かくかくしかじか。俺はすぐに事情を説明した。
「……なるほど。それはさぞやお困りのことでしょう。私でよければ、いくらでもあなた様のお力になりましょうぞ」
「マジか! ありがとな、じいさん!」
うわーい、上流貴族があっという間に俺の頼みを聞いてくれたぞ。やっぱ勇者特権マジパねえ!
と、一瞬喜んだのもつかの間、
「ですが、実は私は、過去にベルガドには行ったことがないのです。ゆえに、今からそちらへ向かうとなると入国審査を受けなくてはなりません」
「あ、例の三か月はかかるってやつか」
そういや、そんなめんどくさいもんもあったな。
「はい。ですから、勇者様のかつてのお仲間であったという方に、私のところに来ていただくほうがよいでしょう」
「そうだな。そっちから来れないってことは、このバカをそっちに送るしかないよな」
と、俺が言ったとたん、
「それは無理ですわ、勇者様。ジーグ様はまだ保釈中の身ですから、国外には出られないはずです」
と、シャンテリーデが言った。ぐぬぬ。そういえばそうだったな。保釈中の容疑者が国外に出られるわけはねえ。
「じゃあ、もしかして俺、じいさんの入国審査が終わるのを待つしかないのかよ?」
三か月もかかるんですけど!
「なあ、あんたドノヴォンでは相当な大物だろ? なんか裏技みたいなのでチャチャっとこっちに来れる方法あるんじゃないか?」
「はあ、あいにく私には、ベルガド方面と強いつながりはありませんので……」
「ないかー」
俺はがっくりと肩を落とした。
だが直後、
「ですが、勇者様。今すぐに勇者様のお望みに答える方法は一つだけあるようです」
ジジイは何やら意味深なことを言った。
「今すぐにってなんだよ? あんた、こっちには来れないって今言ったじゃん?」
「はい。私は無理ですが、勇者様のお近くに、私と同じことができるものがいるはずです」
「俺の近くに? あ、そうか」
俺はそこではっとして、ザックのほうを見た。やつは今、部屋の隅っこでうずくまっていて、まさに置物になっていた。
「おい、ザック。じいさんがお前を呼んでるぞ」
「お、俺に話すことなんて何も――」
「いいから、こっちに来い」
俺は強引にその首根っこをつかんで、キャゼリーヌ通信のカメラの前に運んだ。
「おお、ザック! 元気そうで何よりだ」
じいさんはザックの顔を見るや否や、とろけるような笑顔になった。家出したザックのことを怒ってる様子は少しもなさそうだ。
いや、それどころか……、
「ほれほれ、もっとこっちに来て、じいじにその顔を見せておくれ!」
ってな具合に、俺と話している時とまるで口調が違うんだが! ハイパー猫なで声なんだが! じいじってのも何だよ……。
「じ、じいちゃん、俺……俺……」
ザックもそんなじいじの笑顔を見て、何か感情が込み上げてきたようだ。その目が涙で潤み始めた。
「学院から聞いたぞ。なんでもお前、勇者様と武者修行の旅をしているそうだな」
「う、うん……」
え? 今までのどこに武者修行要素あった? お前、遺跡で迷子になった後は、回復薬強化する係になっただけだろ。
「やはりそうか! 少し見ない間に、見違えるようなよい面構えになっているわけだ!」
じいじもまた適当なこと言ってんじゃねえよ。お前の孫は、俺が道で拾った時から一ミリも変わってねえよ。
「あ、あの、おじいさん? 孫と祖父の感動の再会の途中に悪いんですけど、そろそろ本題に……」
「おお、そうでしたな、勇者様! これはお見苦しいところをお見せしました」
「ええ、まあ」
孫バカなジジイとか、赤の他人から見れば見苦しい以外の何ものでもない。
「で、こちらのザック君は、あなたの代わりに使える人材なので?」
「ええ、それはもちろん。私の孫のザックはやればできる子ですから!」
「や、やればできる子?」
「強い子、元気な子!」
「あ、はい……」
うーん、このじいさん、第一印象ではすごくしっかりしてそうだったけど、どうやら相当な孫バカのようだ。本当にザックに頼っていいのか、これ?
「あ、おじいさん、はじめまして。俺は勇者アルドレイ改めトモキ・ニノミヤといいます。お孫さんにはお世話になっております」
ザックの祖父にしてラスーン家の当主のジジイはちょうど書斎のような部屋にいた。七十歳くらいだろうか。白髪で貫録のあるジジイだった。
「これはこれは勇者様。今日はなんという素晴らしい日なのでしょう。このような形であなた様のご尊顔を拝し奉ることができるとは」
「あ、別に堅苦しい挨拶とかはいいんで」
かくかくしかじか。俺はすぐに事情を説明した。
「……なるほど。それはさぞやお困りのことでしょう。私でよければ、いくらでもあなた様のお力になりましょうぞ」
「マジか! ありがとな、じいさん!」
うわーい、上流貴族があっという間に俺の頼みを聞いてくれたぞ。やっぱ勇者特権マジパねえ!
と、一瞬喜んだのもつかの間、
「ですが、実は私は、過去にベルガドには行ったことがないのです。ゆえに、今からそちらへ向かうとなると入国審査を受けなくてはなりません」
「あ、例の三か月はかかるってやつか」
そういや、そんなめんどくさいもんもあったな。
「はい。ですから、勇者様のかつてのお仲間であったという方に、私のところに来ていただくほうがよいでしょう」
「そうだな。そっちから来れないってことは、このバカをそっちに送るしかないよな」
と、俺が言ったとたん、
「それは無理ですわ、勇者様。ジーグ様はまだ保釈中の身ですから、国外には出られないはずです」
と、シャンテリーデが言った。ぐぬぬ。そういえばそうだったな。保釈中の容疑者が国外に出られるわけはねえ。
「じゃあ、もしかして俺、じいさんの入国審査が終わるのを待つしかないのかよ?」
三か月もかかるんですけど!
「なあ、あんたドノヴォンでは相当な大物だろ? なんか裏技みたいなのでチャチャっとこっちに来れる方法あるんじゃないか?」
「はあ、あいにく私には、ベルガド方面と強いつながりはありませんので……」
「ないかー」
俺はがっくりと肩を落とした。
だが直後、
「ですが、勇者様。今すぐに勇者様のお望みに答える方法は一つだけあるようです」
ジジイは何やら意味深なことを言った。
「今すぐにってなんだよ? あんた、こっちには来れないって今言ったじゃん?」
「はい。私は無理ですが、勇者様のお近くに、私と同じことができるものがいるはずです」
「俺の近くに? あ、そうか」
俺はそこではっとして、ザックのほうを見た。やつは今、部屋の隅っこでうずくまっていて、まさに置物になっていた。
「おい、ザック。じいさんがお前を呼んでるぞ」
「お、俺に話すことなんて何も――」
「いいから、こっちに来い」
俺は強引にその首根っこをつかんで、キャゼリーヌ通信のカメラの前に運んだ。
「おお、ザック! 元気そうで何よりだ」
じいさんはザックの顔を見るや否や、とろけるような笑顔になった。家出したザックのことを怒ってる様子は少しもなさそうだ。
いや、それどころか……、
「ほれほれ、もっとこっちに来て、じいじにその顔を見せておくれ!」
ってな具合に、俺と話している時とまるで口調が違うんだが! ハイパー猫なで声なんだが! じいじってのも何だよ……。
「じ、じいちゃん、俺……俺……」
ザックもそんなじいじの笑顔を見て、何か感情が込み上げてきたようだ。その目が涙で潤み始めた。
「学院から聞いたぞ。なんでもお前、勇者様と武者修行の旅をしているそうだな」
「う、うん……」
え? 今までのどこに武者修行要素あった? お前、遺跡で迷子になった後は、回復薬強化する係になっただけだろ。
「やはりそうか! 少し見ない間に、見違えるようなよい面構えになっているわけだ!」
じいじもまた適当なこと言ってんじゃねえよ。お前の孫は、俺が道で拾った時から一ミリも変わってねえよ。
「あ、あの、おじいさん? 孫と祖父の感動の再会の途中に悪いんですけど、そろそろ本題に……」
「おお、そうでしたな、勇者様! これはお見苦しいところをお見せしました」
「ええ、まあ」
孫バカなジジイとか、赤の他人から見れば見苦しい以外の何ものでもない。
「で、こちらのザック君は、あなたの代わりに使える人材なので?」
「ええ、それはもちろん。私の孫のザックはやればできる子ですから!」
「や、やればできる子?」
「強い子、元気な子!」
「あ、はい……」
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