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3章 とこしえの大地亀ベルガド攻略編

315 勇者、風になる

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「バーカ! パンツを脱いだぐらいで、このオレが倒せるわけないだろ!」

 ヒューヴはそう言って再び俺にボウガンを発射してきた。

 だが、その言葉とは裏腹に、狙いはさっきまでとは大きく変わっていた。そう、俺が挑発した通り、やつは俺の股間めがけて矢を撃ってきやがったのだ。

 ふふ、バカめ! まんまと俺の誘いに乗りやがって!

 俺はすかさず腰をひねり、ボウガンの矢をよけた。ぷるんっ。俺の腰の動きに合わせてまた揺れる俺のちんこ。

 しかし、もちろんそれで俺の動きは止まるはずはなかった。ただ矢をよけるだけでは、さっきと何も変わらないからだ。それではなぜ人としての尊厳をかなぐり捨ててまでフルチンになったのかわからないではないか!

 そう、俺は矢をよけると同時に、下に沈まない程度の速さで足を前に動かしていた。やつの注意が俺の股間に引き付けられているうちに、こっそりやつとの距離を縮めるっ! それこそが俺の真の狙いだった! 

 もろちん、じゃなくて、もちろん、男としての最大の急所を攻撃の的としてさらすリスクはマジはんぱない。正直、今のこの状況は金玉がきゅっと縮こまりそうだ。しかし、俺は勇者。勇ましい者と書いて「勇者」! 少しでも裏筋、じゃなくて勝ち筋が見えるのなら臆してはならぬ! どんな方法を使っても最後に勝てばいいのだ!

 さらに、

「ヒューヴ、お前の射撃の腕もずいぶん落ちたもんだなあァ? こんな目立つ的に矢が当たらないとはなあ!」

 飛んでくる矢をよけながら腰を振り、相手を挑発し続けることも忘れなかった。ふふ、俺の作戦に抜かりはない!

「うるせえな! お前が変なよけ方するのが悪いんだろうがよ!」

 ヒューヴは俺の股間に矢が一発も当たらないのでイライラしてきているようだ。

「変なってどんな? こんな?」

 俺はそこで、サザエさんのエンディングの最後でリンゴからパカっと出てきたタマのように、水平に腰を振った。うーん、我ながらセクシー。

「あ、遊んでんじゃねえぞ!」

 ヒューヴはそんな俺にさらにイライラして、矢を高速連射してきた。

 だが、そんな怒りに身を任せた単調な攻撃、この俺に当たるはずもないっ! 俺は瞬間、一陣の風になった。そう、バレリーナのようにふわっとその場から舞い上がったのだ。そして、俺の股間に向けて発射された矢はすべて、そんな俺の真下を通過していった。

 もちろん、相手も百戦錬磨の射撃のプロだ。俺が跳躍すると同時に、上方へ軌道修正して再び射撃してきた。しかし、やはりそれらは一発も俺には当たらなかった。なぜなら今の俺はいたずらな風の妖精だから。エアーだから。

 そう、俺は股間を外気にさらすことで風と一体になることに成功したのだ。おそらく、金玉を収納している袋にしわがたくさんはいっているせいだろう。ここは人体の中でもひときわ表面積が多いんだ。それはすなわち、他の部位に比べて何倍も外気にさらされるということを意味している。風と一体になるのも当然にして自然の摂理だ!

 そして、風と一体になった俺は、もはや矢をよけるために足が沈むほどの速さで動く必要はなかった。速さは必要ないんだ。大切なのは無駄をとことんはぶいた、流麗な動き。紙一重のその先にある、さらにギリギリの回避モード「神一重」……。俺はまさに今、その境地に立っている。ちんこを揺らしながら。

「な、なんでオレの矢が一発も当たらないんだよ!」

 ヒューヴはやはりイラ立ちを隠せないようだ。すでに俺との距離はだいぶ縮まっているが、それすら気づいていないようだ。まさに俺の狙い通りだ。

「ここに一発当てればお前の勝ちなのになァ? なんで当たらないんだろうなァ?」

 じりじり間合いをつめつつ、さらに腰を振って煽る俺だった。

「お、お前、パンツを脱いでから急に動きが変わったよな? 何かインチキしてるだろ!」
「インチキ? 何をバカなことを。俺はただ風と一体になっただけだよ」
「風と一体? なにそれ?」
「ここで風を感じるってことさ……フフ」

 俺はさらに腰を振ってちんこを揺らし、ヒューヴを挑発した――つもりだったが、

「マジか! フルチンになると風と一体になれるのか! スゲーな、おい!」

 あれ、反応が何かおかしい?

「じゃあ、オレもパンツ脱ぐわ!」
「え」
「脱いだらオレも風と一体になれるんだろ! やるしかねえじゃねえか!」

 と、瞬時にズボンとパンツを脱ぎ捨てるヒューヴだった……。
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