314 / 436
3章 とこしえの大地亀ベルガド攻略編
313 最強 VS 最速
しおりを挟む
「うわっ! なんでお前、翼もないのにこんなところまで来るんだよ!」
俺が空中を駆け上がってヒューヴの近くまで行くと、ヒューヴはぎょっとしたようだった。
「はっはー。翼なんかなくてもこれぐらい魔法でなんとかなるんだよ!」
「魔法?」
「ああ、俺の靴に空中を歩けるようにする魔法をかけてもらったからな」
「へー」
と、言うや否や、いきなり俺の靴に向かって矢を放ってくるヒューヴだった。うわっ! あぶねえ! とっさにそれをかわした。
なお、ヒューヴの射撃攻撃は昨日と同様ポンチョの下からだったので、使っている武器は見えなかったが、おそらくこいつは十五年前と同じように簡易式のボウガンを左手の肘に装着してるんだろう。確か、威力は弱いが速射性に優れたやつだ。
「お、お前! 話をしてる途中にいきなり攻撃するなよ!」
「いやだって、その靴どうにかしたらお前落ちるっぽいじゃん? 狙うしかないじゃん?」
「そ、そういう相手の弱みに付け込むようなことはよくない――」
「えー? 敵の弱点狙うとか、めっちゃ当たり前のことじゃん。お前、バカなの?」
「う……」
バカにバカと言われることほど腹立たしいことはないが、確かにその通り過ぎて反論できない! くそう! さすが俺の昔の冒険者仲間。バカとはいえ、戦闘でのとっさの判断はまともすぎる!
と、俺が歯ぎしりしていると……、
「でも、さっきからオレの攻撃、お前に全然当たらないな? お前、もしかして、めっちゃ戦闘慣れしてるほうなのか?」
バカなりに俺のただならぬ戦闘能力に気づいたようだ! おお! さすが俺の昔の仲間!
「そうだよ! 昨日も言ったけど、俺はお前の昔の仲間のアルドレイだよ!」
「えー、お前がアル? うっそだー」
「嘘じゃないから!」
「いや、嘘だ! アルの一番の親友だったオレにはわかる! アルは確か、童貞をこじらせてチンコが腐って死んだはずだからな!」
「ちょ、お前、人の死因をテキトーに作ってんじゃねえよ!」
昨日と言ってること違うし! 何が一番の親友だよ! 相変わらずデタラメな記憶力だぜ!
「俺の死因はそんなんじゃないの! 姫に告白した直後に刺されて死んだの!」
「え? 『俺の死因』って何?」
「えっ」
「お前、生きてるじゃん? 死因とかあるわけないじゃん。バカなの」
「ち、ちがっ! だから一度死んで生まれ変わったって説明しただろ!」
「オレそんなん知らねえし? 生まれ変わりとかあるわけないし?」
「あるよ!」
「ねーよ」
ヒューヴは昨日のように俺にあっかんべーしてきた。お前ほんとに四百歳なのかよ。いちいち言動がガキすぎるだろ、クソが。
「だいたい、お前が本当にあのアルなら、なんでオレに石とか投げてくるんだよ? 昔の仲間じゃねえのかよ?」
「いや、それはお前が急に逃げるからだろ!」
「だって、逃げなきゃ警察に捕まるじゃん?」
「逃げるようなことするお前が悪いだろ!」
「なんだよー! お前、オレにそんなに偉そうなこと言えるほど、立派なやつなのかよ?」
「当然だろ! 俺はあのアルドレイなんだぞ!」
「えー、なんかお前、すっごいワルのにおいがする……」
「う!」
さすが半分動物みたいな男だぜ。俺が元死刑囚であることはなんとなく察してやがる。おそるべし野生の勘。
「も、もういい! ベルガドの祝福のことはすっかり忘れちまってるし、俺が誰だかもわかってねえし、お前はもう用済みだ! とっとと俺に捕まりやがれ! 懸賞金のためになァ!」
俺はゴミ魔剣を鞘から抜くと、ただちにヒューヴに斬りかかった。うおおおっ、懸賞金四百万ゴンスのために、その首置いてけえっ!
だが、その俺の攻撃はむなしく空を斬るだけだった。ヒューヴにさらっとよけられてしまったのだ。
「ぬううん……相変わらずすばっしこいやつめ」
と、俺はとっさに悔しがってみせたが、内心は違うことを考えていた。確かにヒューヴは素早い。単純に敏捷性だけなら俺と互角かそれ以上かぐらいには早い。能力値はDEXに全振りみたいなやつなのだ。
ただ、今の俺の攻撃が外れた理由はそこにあるわけではなかった。そう、どうやら今の俺は、地上にいるときほど素早く動けないようなのだ。今の攻撃も実際かなりダメダメだったし。
原因はきっと靴にかけられた空中歩行とかいう魔法だ。この魔法はおそらく、俺の足の動きにあわせてその都度足の裏に反発力を発生させているんだと思うが、俺の動きが速すぎるとその処理が遅れて、一瞬「足が沈む」ような状態になるようなのだ。これが痛い。踏ん張りがきかないなんてもんじゃねえ。
そういや、ヤギのやつ、この魔法を使ったとき「効果はあまり期待するな」と言ってたな。それはつまり、こういうことだったってわけだ。俺の速さに対応しているほど上等な魔法じゃないっていう……。そもそもこういう移動系の魔法って無属性だったはずだが、ヤギのやつは明らかに土属性キャラだよな。おそらくあいつは、この手の移動系の魔法は得意なほうじゃないんだろう。
「お前、そんなヘナチョコ攻撃で、よく自分がアルだって言えたな。うっけるー!」
と、ヒューヴは少し離れた高みから俺を嘲笑った。
「うるさいっ!」
俺だって好きでこんなヘナチョコやってんじゃねえんだぞ! 何も知らないからって調子に乗ってんじゃねよ、バーカバーカ!
俺が空中を駆け上がってヒューヴの近くまで行くと、ヒューヴはぎょっとしたようだった。
「はっはー。翼なんかなくてもこれぐらい魔法でなんとかなるんだよ!」
「魔法?」
「ああ、俺の靴に空中を歩けるようにする魔法をかけてもらったからな」
「へー」
と、言うや否や、いきなり俺の靴に向かって矢を放ってくるヒューヴだった。うわっ! あぶねえ! とっさにそれをかわした。
なお、ヒューヴの射撃攻撃は昨日と同様ポンチョの下からだったので、使っている武器は見えなかったが、おそらくこいつは十五年前と同じように簡易式のボウガンを左手の肘に装着してるんだろう。確か、威力は弱いが速射性に優れたやつだ。
「お、お前! 話をしてる途中にいきなり攻撃するなよ!」
「いやだって、その靴どうにかしたらお前落ちるっぽいじゃん? 狙うしかないじゃん?」
「そ、そういう相手の弱みに付け込むようなことはよくない――」
「えー? 敵の弱点狙うとか、めっちゃ当たり前のことじゃん。お前、バカなの?」
「う……」
バカにバカと言われることほど腹立たしいことはないが、確かにその通り過ぎて反論できない! くそう! さすが俺の昔の冒険者仲間。バカとはいえ、戦闘でのとっさの判断はまともすぎる!
と、俺が歯ぎしりしていると……、
「でも、さっきからオレの攻撃、お前に全然当たらないな? お前、もしかして、めっちゃ戦闘慣れしてるほうなのか?」
バカなりに俺のただならぬ戦闘能力に気づいたようだ! おお! さすが俺の昔の仲間!
「そうだよ! 昨日も言ったけど、俺はお前の昔の仲間のアルドレイだよ!」
「えー、お前がアル? うっそだー」
「嘘じゃないから!」
「いや、嘘だ! アルの一番の親友だったオレにはわかる! アルは確か、童貞をこじらせてチンコが腐って死んだはずだからな!」
「ちょ、お前、人の死因をテキトーに作ってんじゃねえよ!」
昨日と言ってること違うし! 何が一番の親友だよ! 相変わらずデタラメな記憶力だぜ!
「俺の死因はそんなんじゃないの! 姫に告白した直後に刺されて死んだの!」
「え? 『俺の死因』って何?」
「えっ」
「お前、生きてるじゃん? 死因とかあるわけないじゃん。バカなの」
「ち、ちがっ! だから一度死んで生まれ変わったって説明しただろ!」
「オレそんなん知らねえし? 生まれ変わりとかあるわけないし?」
「あるよ!」
「ねーよ」
ヒューヴは昨日のように俺にあっかんべーしてきた。お前ほんとに四百歳なのかよ。いちいち言動がガキすぎるだろ、クソが。
「だいたい、お前が本当にあのアルなら、なんでオレに石とか投げてくるんだよ? 昔の仲間じゃねえのかよ?」
「いや、それはお前が急に逃げるからだろ!」
「だって、逃げなきゃ警察に捕まるじゃん?」
「逃げるようなことするお前が悪いだろ!」
「なんだよー! お前、オレにそんなに偉そうなこと言えるほど、立派なやつなのかよ?」
「当然だろ! 俺はあのアルドレイなんだぞ!」
「えー、なんかお前、すっごいワルのにおいがする……」
「う!」
さすが半分動物みたいな男だぜ。俺が元死刑囚であることはなんとなく察してやがる。おそるべし野生の勘。
「も、もういい! ベルガドの祝福のことはすっかり忘れちまってるし、俺が誰だかもわかってねえし、お前はもう用済みだ! とっとと俺に捕まりやがれ! 懸賞金のためになァ!」
俺はゴミ魔剣を鞘から抜くと、ただちにヒューヴに斬りかかった。うおおおっ、懸賞金四百万ゴンスのために、その首置いてけえっ!
だが、その俺の攻撃はむなしく空を斬るだけだった。ヒューヴにさらっとよけられてしまったのだ。
「ぬううん……相変わらずすばっしこいやつめ」
と、俺はとっさに悔しがってみせたが、内心は違うことを考えていた。確かにヒューヴは素早い。単純に敏捷性だけなら俺と互角かそれ以上かぐらいには早い。能力値はDEXに全振りみたいなやつなのだ。
ただ、今の俺の攻撃が外れた理由はそこにあるわけではなかった。そう、どうやら今の俺は、地上にいるときほど素早く動けないようなのだ。今の攻撃も実際かなりダメダメだったし。
原因はきっと靴にかけられた空中歩行とかいう魔法だ。この魔法はおそらく、俺の足の動きにあわせてその都度足の裏に反発力を発生させているんだと思うが、俺の動きが速すぎるとその処理が遅れて、一瞬「足が沈む」ような状態になるようなのだ。これが痛い。踏ん張りがきかないなんてもんじゃねえ。
そういや、ヤギのやつ、この魔法を使ったとき「効果はあまり期待するな」と言ってたな。それはつまり、こういうことだったってわけだ。俺の速さに対応しているほど上等な魔法じゃないっていう……。そもそもこういう移動系の魔法って無属性だったはずだが、ヤギのやつは明らかに土属性キャラだよな。おそらくあいつは、この手の移動系の魔法は得意なほうじゃないんだろう。
「お前、そんなヘナチョコ攻撃で、よく自分がアルだって言えたな。うっけるー!」
と、ヒューヴは少し離れた高みから俺を嘲笑った。
「うるさいっ!」
俺だって好きでこんなヘナチョコやってんじゃねえんだぞ! 何も知らないからって調子に乗ってんじゃねよ、バーカバーカ!
0
お気に入りに追加
211
あなたにおすすめの小説
ブラック宮廷から解放されたので、のんびりスローライフを始めます! ~最強ゴーレム使いの気ままな森暮らし~
ヒツキノドカ
ファンタジー
「クレイ・ウェスタ―! 貴様を宮廷から追放する!」
ブラック宮廷に勤めるゴーレム使いのクレイ・ウェスターはある日突然クビを宣告される。
理由は『不当に高い素材を買いあさったこと』とされたが……それはクレイに嫉妬する、宮廷魔術師団長の策略だった。
追放されたクレイは、自由なスローライフを求めて辺境の森へと向かう。
そこで主人公は得意のゴーレム魔術を生かしてあっという間に快適な生活を手に入れる。
一方宮廷では、クレイがいなくなったことで様々なトラブルが発生。
宮廷魔術師団長は知らなかった。
クレイがどれほど宮廷にとって重要な人物だったのか。
そして、自分では穴埋めできないほどにクレイと実力が離れていたことも。
「こんなはずでは……」と嘆きながら宮廷魔術師団長はクレイの元に向かい、戻ってくるように懇願するが、すでに理想の生活を手に入れたクレイにあっさり断られてしまう。
これはブラック宮廷から解放された天才ゴーレム使いの青年が、念願の自由なスローライフを満喫する話。
ーーーーーー
ーーー
※4/29HOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!
※推敲はしていますが、誤字脱字があるかもしれません。
見つけた際はご報告いただけますと幸いです……
スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件
月風レイ
ファンタジー
普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。
そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。
そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。
そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。
そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。
食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。
不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。
大修正中!今週中に修正終え更新していきます!
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる