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3章 とこしえの大地亀ベルガド攻略編
310 童貞勇者の同定作業
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「ちょ……待て! 字が似てるってだけで、こいつがその伝説のジーグとやらだと決めつけるのはまだ早いだろう!」
俺はあわてて叫んだ。そう、俺としてはこのバカがかつて伝説を作った男だったなんて認めたくはなかった。伝説の存在は俺だけでいいんだよ!
「ジーグとやらが活躍していた時代から、もう三百年も経ってるんだ。普通はその男はとっくに死んでるはずだろう?」
「いや、だからオレ、長生きなほうだから」
「な、長生きしてるだけで、ジーグを名乗れるわけないだろう! 三百年くらい余裕で生きる種族、お前の他にもいっぱいいるだろ!」
「いるの?」
「いるよ! エルフとか!」
「エルフはみんな、何百年も生きるの?」
「そうだよ!」
と、俺が適当に叫んだところで、
「それは違うぞ、トモキ」
ヤギが口をはさんできた。
「エルフと一口に言っても、実は細かく種類があってな。有翼人と同様、純血の古代種は確かに何百年と生きることができるようだが、近年は人間その他との混血が進んでいて、せいぜい二百年程度の寿命のものが大半なのだ」
「へ、へえ……」
エルフにもいろいろあるんだなって。
「じゃあ、三百年も生きていられる種族って?」
「人間社会と交流のある亜人種族に限定するなら、古代翼人か、古き森人のどちらかしかないだろうな」
「二つしかねえのかよ」
つまり、ジーグが今も生きてるとするなら、そのどっちかしかねえのか。
「ただ、人間に比べると、どちらも非常に数が少ない。また、古き森人は排他的で、森の奥で人と関わらぬ暮らしをしているものが大半だという」
「森の奥で……」
そういや、昔ティリセに、森の奥のエルフの里を抜け出してきたときの話を聞いたことがあったな。あいつ百歳超えても見た目ロリなままだし、古き森人ってやつだったのかな。まあ、今はどうでもいいことだが。
「じゃあ、結局、ジーグが今も生きてる確率って相当低いじゃねえか。そんな希少種のどっちかじゃないと成立しない話なんだからな」
「いや、だからオレ、古代翼人だし? 三百年前からずっと生きてるし?」
「うるさい! たったそれだけで伝説の男だと名乗れるわけないだろう、このバカちんがっ!」
俺はイライラして叫んだ。レア種族な上に伝説の男? そのうえイケメンとか、マジで死ねばいいのに!
そう死ねば……と、そこで俺ははっとひらめいた。
「そうだ、こいつを使えば、もうジーグってやつが死んでるかどうかわかるじゃん!」
と、叫びながら俺が道具袋から取り出したのは、例の貯金箱……じゃなかった、貯金箱風の死神電話だった。そう、あの守銭奴の女と直接電話ができ、誰か気になる人がすでに死んでいるかどうか教えてくれるのだというシロモノだ。
ただ、それには一回あたり百万ゴンスもの通話料を払わなければならないが……今は緊急事態だ。迷っているヒマはねえ! すぐにそこに十万ゴンス小金貨十枚をぶちこみ、あの女に電話した。トゥルルルルッ……っとな。
やがてすぐに電話はカロンにつながった。
「おい、カロン。至急確認してくれよ。ベルガドで三百年前に伝説を作った男、ロ・イン・ジーグってやつがもう死んでるかどうかを」
「三百年前? だったら調べるまでもなく、その人はもう死んでるのではなくて?」
「いや、普通に考えるとそうなんだけど、無駄に長生きしてるどっかのバカが、俺がそのジーグだって主張しやがってさ」
「ふうん? それであなたはその人の主張を否定したいわけね。そのために、また電話してきたわけね」
「ああ、そうだよ。わかったらとっとと調べてくれ。こっちは高い金払ってんだからな」
「はいはい。ちゃんと調べるわよ。検索するからちょっと待っててね。ええと、ロ・イン・ジーグさんね……」
と、前と同様に何か端末を操作してるらしい音が聞こえてきたのち、
「あ、その人、まだ生きてるみたいよ」
と、俺の予想に反する答えが返ってきたではないか!
「え、生きてるの? なんで? そいつ三百年前の人なんだけど?」
「きっと長生きの種族なのね。例えば、古代翼人や、古き森人みたいな?」
「やっぱその二択なのかよ!」
ぐぬぬ! これではまるでヒューヴがそのジーグであると言わんばかりじゃないか!
いやでも、仮にジーグとやらがまだ生きてるとしても、ヒューヴと同一人物であるという決定的な証拠はまだ何もないな? 字が似てること以外は……。
と、思った直後、
「あら、やだ。あなたってばおっちょこちょいね、トモキ君」
カロンが何かに気づいたように笑った。
「? 何がおかしいんだよ?」
「だって、このロ・イン・ジーグって人、あなたがこのあいだ生死を確認した人と同じ人じゃない」
「え」
このあいだ俺が生死を確認したやつって……ヒューヴじゃんよ?
「同じ人の生死を続けて二回も調べるなんて、またずいぶんとおかしなことをするものね。まあ、ちゃんと二回別々に調べたのだから、お金も二回分いただくけれども」
「あ、はい……」
俺は呆然としながらうなずいた。電話はその後、すぐに切れた。
「なあ、今の何? 何かわかったの?」
と、ヒューヴがバカ面のまま俺に尋ねてきた。
「うるせえ!」
俺はやつに怒鳴り散らすと、死神電話の箱を床に投げつけた。このバカの身分証明のためにまた百万ゴンスも無駄金使っちゃったじゃないか、ばかばかばーか! ヒューヴのばか! 俺のばか!
俺はあわてて叫んだ。そう、俺としてはこのバカがかつて伝説を作った男だったなんて認めたくはなかった。伝説の存在は俺だけでいいんだよ!
「ジーグとやらが活躍していた時代から、もう三百年も経ってるんだ。普通はその男はとっくに死んでるはずだろう?」
「いや、だからオレ、長生きなほうだから」
「な、長生きしてるだけで、ジーグを名乗れるわけないだろう! 三百年くらい余裕で生きる種族、お前の他にもいっぱいいるだろ!」
「いるの?」
「いるよ! エルフとか!」
「エルフはみんな、何百年も生きるの?」
「そうだよ!」
と、俺が適当に叫んだところで、
「それは違うぞ、トモキ」
ヤギが口をはさんできた。
「エルフと一口に言っても、実は細かく種類があってな。有翼人と同様、純血の古代種は確かに何百年と生きることができるようだが、近年は人間その他との混血が進んでいて、せいぜい二百年程度の寿命のものが大半なのだ」
「へ、へえ……」
エルフにもいろいろあるんだなって。
「じゃあ、三百年も生きていられる種族って?」
「人間社会と交流のある亜人種族に限定するなら、古代翼人か、古き森人のどちらかしかないだろうな」
「二つしかねえのかよ」
つまり、ジーグが今も生きてるとするなら、そのどっちかしかねえのか。
「ただ、人間に比べると、どちらも非常に数が少ない。また、古き森人は排他的で、森の奥で人と関わらぬ暮らしをしているものが大半だという」
「森の奥で……」
そういや、昔ティリセに、森の奥のエルフの里を抜け出してきたときの話を聞いたことがあったな。あいつ百歳超えても見た目ロリなままだし、古き森人ってやつだったのかな。まあ、今はどうでもいいことだが。
「じゃあ、結局、ジーグが今も生きてる確率って相当低いじゃねえか。そんな希少種のどっちかじゃないと成立しない話なんだからな」
「いや、だからオレ、古代翼人だし? 三百年前からずっと生きてるし?」
「うるさい! たったそれだけで伝説の男だと名乗れるわけないだろう、このバカちんがっ!」
俺はイライラして叫んだ。レア種族な上に伝説の男? そのうえイケメンとか、マジで死ねばいいのに!
そう死ねば……と、そこで俺ははっとひらめいた。
「そうだ、こいつを使えば、もうジーグってやつが死んでるかどうかわかるじゃん!」
と、叫びながら俺が道具袋から取り出したのは、例の貯金箱……じゃなかった、貯金箱風の死神電話だった。そう、あの守銭奴の女と直接電話ができ、誰か気になる人がすでに死んでいるかどうか教えてくれるのだというシロモノだ。
ただ、それには一回あたり百万ゴンスもの通話料を払わなければならないが……今は緊急事態だ。迷っているヒマはねえ! すぐにそこに十万ゴンス小金貨十枚をぶちこみ、あの女に電話した。トゥルルルルッ……っとな。
やがてすぐに電話はカロンにつながった。
「おい、カロン。至急確認してくれよ。ベルガドで三百年前に伝説を作った男、ロ・イン・ジーグってやつがもう死んでるかどうかを」
「三百年前? だったら調べるまでもなく、その人はもう死んでるのではなくて?」
「いや、普通に考えるとそうなんだけど、無駄に長生きしてるどっかのバカが、俺がそのジーグだって主張しやがってさ」
「ふうん? それであなたはその人の主張を否定したいわけね。そのために、また電話してきたわけね」
「ああ、そうだよ。わかったらとっとと調べてくれ。こっちは高い金払ってんだからな」
「はいはい。ちゃんと調べるわよ。検索するからちょっと待っててね。ええと、ロ・イン・ジーグさんね……」
と、前と同様に何か端末を操作してるらしい音が聞こえてきたのち、
「あ、その人、まだ生きてるみたいよ」
と、俺の予想に反する答えが返ってきたではないか!
「え、生きてるの? なんで? そいつ三百年前の人なんだけど?」
「きっと長生きの種族なのね。例えば、古代翼人や、古き森人みたいな?」
「やっぱその二択なのかよ!」
ぐぬぬ! これではまるでヒューヴがそのジーグであると言わんばかりじゃないか!
いやでも、仮にジーグとやらがまだ生きてるとしても、ヒューヴと同一人物であるという決定的な証拠はまだ何もないな? 字が似てること以外は……。
と、思った直後、
「あら、やだ。あなたってばおっちょこちょいね、トモキ君」
カロンが何かに気づいたように笑った。
「? 何がおかしいんだよ?」
「だって、このロ・イン・ジーグって人、あなたがこのあいだ生死を確認した人と同じ人じゃない」
「え」
このあいだ俺が生死を確認したやつって……ヒューヴじゃんよ?
「同じ人の生死を続けて二回も調べるなんて、またずいぶんとおかしなことをするものね。まあ、ちゃんと二回別々に調べたのだから、お金も二回分いただくけれども」
「あ、はい……」
俺は呆然としながらうなずいた。電話はその後、すぐに切れた。
「なあ、今の何? 何かわかったの?」
と、ヒューヴがバカ面のまま俺に尋ねてきた。
「うるせえ!」
俺はやつに怒鳴り散らすと、死神電話の箱を床に投げつけた。このバカの身分証明のためにまた百万ゴンスも無駄金使っちゃったじゃないか、ばかばかばーか! ヒューヴのばか! 俺のばか!
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