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3章 とこしえの大地亀ベルガド攻略編
285 例の箱の正体は
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俺たちはその後、ザレの村にある道具屋に行った。回復薬をしこたま消費したので補充しておこうと思ったのだ。クルードに出発するのは明日なので、今日はヒマだしな。日暮れまでまだそこそこ時間もあるし。
店に入ると、回復薬を買う前に、まず店主のオヤジに空になった回復薬の空き瓶を渡し、一つあたり三百ゴンスの金をもらった。これは瓶そのものの代金だ。中身を使い切った後に店に持っていくと返金してもらえるシステムなのだ。普通の日本人の感覚だと二千ゴンスの商品の瓶代が三百ゴンスなんてちょっと高すぎる気もするが、この世界では瓶の素材のガラスはそこそこ貴重なのでこれぐらいは普通だ。
と、そのとき、道具袋の底に、金属製の四角い箱が入っているのに気づいた。カロンからもらった粗品の貯金箱だ。ドノヴォン国立学院の寄宿舎を出る時、数少ない俺の私物なのでとりあえず一緒に持ってきたわけだが、貯金箱なんてこれから先使う機会はなさそうだ。処分しよう。(もちろん、俺は当然、例の暴マーのレジェンド・コアも持ち歩いている。売れはしないが、どこかで何かの役に立つ機会があると信じて!)
「おい、おっさん、こういうのって買い取ってもらえるか?」
俺は道具袋から貯金箱を出し、店主に見せた。
「? これはなんだい?」
「貯金箱だよ。ここに金を入れる穴があるだろ」
俺は箱のてっぺんのコインの投入口を指さした。
「ふむ。確かにコインを入れるのにちょうどよさそうな形の穴だが……。本当にこれ、貯金箱なのかい?」
「え」
「お客さんの出身地じゃどうだったか知らないけど、ここベルガドで貯金箱と言えば、こういう陶器のものが一般的でね」
と、カウンターの横にちょうど置いてあった陶器製の豚の貯金箱を指さす店主だった。なんというベタな貯金箱。
「まあ、俺もこういうタイプの貯金箱は知ってるけどさ。金属製のやつがあったっていいだろ」
そうそう、五百円玉入れて十万円たまる金属製の貯金箱とかあったしな。
「……いや、やっぱりこれは貯金箱じゃないだろう。コインを入れたとして、取り出す方法がないよ、これだと」
店主は俺が差し出した箱を持ち上げ、いろんな角度から眺めつつ、指でトントンと弾きつつ言った。
「バカだなー、おっさん。こういうのは最後に缶きりで開けるんだよ」
「この箱を壊すってことかい? 無理だね、この素材じゃ」
「素材?」
「これはどう見ても、鉄や銅みたいな普通の金属じゃないよ。詳しくはわからないが、相当な強度の素材だ」
「マジか」
なるほど、確かに貯金箱じゃなさそうだ。普通に缶きりで開けられないんだからな。
「じゃあ、これはいったい何なんだよ、おっさん。あんた道具屋だろ。鑑定してみてくれよ」
「ああ、ちょっと待ってくれ」
店主は懐から鑑定用と思しきルーペを取り出し、謎の箱をそれ越しにしげしげと見つめ始めた。そして、「うーん?」と難しい顔をしながら首をかしげた。ルーペを使ったところで何もわからないようだ。
「君、これをいったいどこで手に入れたんだい?」
「カロンって女にもらったんだよ」
「カロン?」
「冥府の川の渡し守をしてる女だよ」
「え……そのカロン?」
店主はたちまちぎょっとしたようだった。
「すげーな、トモキ。カロンって教科書にも載ってるようなやつだぞ。そんなやつとダチだなんてよお!」
ザックも驚いているようだ。他のみんなも面食らっているようだ。そういや、ヤギが以前、有名人だとかなんとか言ってたな。
「な、なんで君、そのカロンにこんなのもらったの」
「知り合いがためこんでいたツケを俺が代わりに払ってやったから、その礼だよ」
「いや、そもそもなんでそういう話の流れになったの? 普通に生きてたらカロンと会うことなんてないよね?」
「ああ、軽く死んだから」
「えっ」
「いやまあ、実際、軽く死んだのは俺じゃなくてその知り合いだったんだけどさ。そいつの臨死体験に俺の魂が巻き込まれて冥府の川にすっ飛ばされたんだよ。迷惑な話だよな」
「そ、そうか……わかったような、わからないような」
店主は困惑気味にまた首をかしげた。ちょっと話が浮世離れしすぎたか。
「ということは、だ。おそらくこれは、この世の物質でできてるわけではないんだろうね」
店主はルーペを懐に戻しながら言った。鑑定あきらめたのかよ。
「じゃあ、結局何なんだよ、これは?」
「さあ? 実際に使ってみればわかるんじゃないか?」
「使う?」
「ここに、いかにもコインを入れてくださいという感じの穴があるじゃないか」
店主は箱のてっぺんの穴を指でトントンと叩いた。
店に入ると、回復薬を買う前に、まず店主のオヤジに空になった回復薬の空き瓶を渡し、一つあたり三百ゴンスの金をもらった。これは瓶そのものの代金だ。中身を使い切った後に店に持っていくと返金してもらえるシステムなのだ。普通の日本人の感覚だと二千ゴンスの商品の瓶代が三百ゴンスなんてちょっと高すぎる気もするが、この世界では瓶の素材のガラスはそこそこ貴重なのでこれぐらいは普通だ。
と、そのとき、道具袋の底に、金属製の四角い箱が入っているのに気づいた。カロンからもらった粗品の貯金箱だ。ドノヴォン国立学院の寄宿舎を出る時、数少ない俺の私物なのでとりあえず一緒に持ってきたわけだが、貯金箱なんてこれから先使う機会はなさそうだ。処分しよう。(もちろん、俺は当然、例の暴マーのレジェンド・コアも持ち歩いている。売れはしないが、どこかで何かの役に立つ機会があると信じて!)
「おい、おっさん、こういうのって買い取ってもらえるか?」
俺は道具袋から貯金箱を出し、店主に見せた。
「? これはなんだい?」
「貯金箱だよ。ここに金を入れる穴があるだろ」
俺は箱のてっぺんのコインの投入口を指さした。
「ふむ。確かにコインを入れるのにちょうどよさそうな形の穴だが……。本当にこれ、貯金箱なのかい?」
「え」
「お客さんの出身地じゃどうだったか知らないけど、ここベルガドで貯金箱と言えば、こういう陶器のものが一般的でね」
と、カウンターの横にちょうど置いてあった陶器製の豚の貯金箱を指さす店主だった。なんというベタな貯金箱。
「まあ、俺もこういうタイプの貯金箱は知ってるけどさ。金属製のやつがあったっていいだろ」
そうそう、五百円玉入れて十万円たまる金属製の貯金箱とかあったしな。
「……いや、やっぱりこれは貯金箱じゃないだろう。コインを入れたとして、取り出す方法がないよ、これだと」
店主は俺が差し出した箱を持ち上げ、いろんな角度から眺めつつ、指でトントンと弾きつつ言った。
「バカだなー、おっさん。こういうのは最後に缶きりで開けるんだよ」
「この箱を壊すってことかい? 無理だね、この素材じゃ」
「素材?」
「これはどう見ても、鉄や銅みたいな普通の金属じゃないよ。詳しくはわからないが、相当な強度の素材だ」
「マジか」
なるほど、確かに貯金箱じゃなさそうだ。普通に缶きりで開けられないんだからな。
「じゃあ、これはいったい何なんだよ、おっさん。あんた道具屋だろ。鑑定してみてくれよ」
「ああ、ちょっと待ってくれ」
店主は懐から鑑定用と思しきルーペを取り出し、謎の箱をそれ越しにしげしげと見つめ始めた。そして、「うーん?」と難しい顔をしながら首をかしげた。ルーペを使ったところで何もわからないようだ。
「君、これをいったいどこで手に入れたんだい?」
「カロンって女にもらったんだよ」
「カロン?」
「冥府の川の渡し守をしてる女だよ」
「え……そのカロン?」
店主はたちまちぎょっとしたようだった。
「すげーな、トモキ。カロンって教科書にも載ってるようなやつだぞ。そんなやつとダチだなんてよお!」
ザックも驚いているようだ。他のみんなも面食らっているようだ。そういや、ヤギが以前、有名人だとかなんとか言ってたな。
「な、なんで君、そのカロンにこんなのもらったの」
「知り合いがためこんでいたツケを俺が代わりに払ってやったから、その礼だよ」
「いや、そもそもなんでそういう話の流れになったの? 普通に生きてたらカロンと会うことなんてないよね?」
「ああ、軽く死んだから」
「えっ」
「いやまあ、実際、軽く死んだのは俺じゃなくてその知り合いだったんだけどさ。そいつの臨死体験に俺の魂が巻き込まれて冥府の川にすっ飛ばされたんだよ。迷惑な話だよな」
「そ、そうか……わかったような、わからないような」
店主は困惑気味にまた首をかしげた。ちょっと話が浮世離れしすぎたか。
「ということは、だ。おそらくこれは、この世の物質でできてるわけではないんだろうね」
店主はルーペを懐に戻しながら言った。鑑定あきらめたのかよ。
「じゃあ、結局何なんだよ、これは?」
「さあ? 実際に使ってみればわかるんじゃないか?」
「使う?」
「ここに、いかにもコインを入れてくださいという感じの穴があるじゃないか」
店主は箱のてっぺんの穴を指でトントンと叩いた。
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