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3章 とこしえの大地亀ベルガド攻略編
261 なんここ
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「だいたいお前、なんでこんなところにいるんだよ? まだ修学旅行の真っ最中のはずだろ」
そうそう、確か予定だと生徒たち一行は明日にはドノヴォンに帰るはずなんだよな。
「そりゃあ、決まってるじゃないですが。晩御飯のあと、ホテルを抜け出して飛んできたんですよ」
リュクサンドールは背中から闇の翼を出し、俺に見せつけるように広げながら言った。それてここまで飛んできたってことか。というか、こいつはもう夜モードか。瞳も赤い。服装はいつもの教師の制服姿のようだが。
「抜け出したってなんだよ。お前、まだ仕事中だろ。教師の仕事さぼってんじゃねえよ」
「ふふ、大丈夫ですよ。僕は今、具合が悪くてホテルの部屋にある棺桶の中で寝ていることになっていますから。ちゃんと蓋に『就寝中、開けないでください』と書いたメモを置いてきたので、僕と同室のフェディニ先生は、その中身がからっぽだとはまず思わないでしょう!」
と、何やら小学生レベルの小細工を得意げに語る男であった。そうか、あの武術担当のおっさん教師と同じ部屋なのか、こいつ。
「いや、あのおっさん、けっこう鋭いからバレるんじゃないか?」
ラックマン刑事(ネム)相手に俺が手を抜いてたの見抜いてたしな。
「心配いりません。フェディニ先生は今頃、ホテルのバーで浴びるようにエールを飲んでいるはずです。昨夜と同じように」
「連日酒飲んでんのかよ、あのおっさん」
一応、この島には仕事で来てるんだろうがよ。
「なので、フェディニ先生が部屋に帰ってくるときにはすっかり泥酔しているはずで、僕の棺桶の中身なんて確認するわけはないのです」
「ふうん、なるほどな」
まあ、酔っ払い相手なら小学生レベルの小細工でも問題ないか。
「でも、なんでお前はわざわざホテルを抜け出してこんなところに来たんだよ?」
「ふふ、これですよ」
と、リュクサンドールは近くの石像の下の方を指さした。見ると、そこに何か文字が刻まれているようだ。ただ、古代文字みたいで、俺には全く読めなかった。日本でも古文は苦手だったしな。それに、だいぶ古いもののようで、文字の保存具合もいまいちだった。これじゃ、ビスケットのチョイスの表面のアルファベットのほうがまだ読みやすいぜ。あれうまいよな。もう日本に帰れないから食べられないけどさあ。
「なんなんだよ、この文字。もっとわかりやすく説明しろ」
「これはベルガドでかつて暮らしていた人たちの遺したものです。これだけではなく、この遺跡もそうなんですよ。今から千年ほど前、ここは彼らがあがめていた神を祀る神殿だったんです。これはクロイツェ教がベルガドに伝播される前の話です」
「へえ、宗教施設だったのか」
宗教なんてロクなもんじゃねえし、壁を壊しても問題なかったな。安心したぜ。
「この神殿を作った民族は千年の間に紛争によって滅亡しましたが、記録によると、なんと呪術を祭事で日常的に使う人たちだったようです」
「ふうん」
そりゃ滅んで正解だな、そんなクソ術を使う連中なんて。
「僕はその事実を文献で読んで知った時、とても感動しました。僕と同じように呪術をこよなく愛する人たちが昔のベルガドにいたのです。そして同時に、その民族がすでに滅亡していることに深い悲しみを覚えました。なぜ彼らと僕は同じ時代に生まれることができなかったのか。彼らのような人たちと呪術について語り合いたかった……」
リュクサンドールは石板の文字を見つめながら、遠い目で語る。
「だからせめて、ベルガドにいられる間にその愛の記録を確かめておこうと思い、僕はここに来たのです。なんせ僕は、本来ならベルガドどころか、ありとあらゆる国から入国禁止扱いで、ドノヴォンから出ることができない身の上ですからね」
「お前、ほとんどの国で出入り禁止なのかよ」
まあ、前科三犯の凶悪犯だしな。
「ところで、トモキ君こそ、なぜここにいるのですか? もしかして、僕と同じようにこの遺跡にのこされた呪術への愛の記録を探求しに――」
「いや、それはないから」
かくかくしかじか。ザックとはぐれたので探していることを説明した。
「というわけで、お前、ザックを見なかったか?」
「いえ、特には」
「そうか、ならいいや」
ザックのことを知らないんなら、こいつはもう用済みだ。ユリィたちのところに戻ろう。俺はすぐに「じゃあな」と、やつの前で踵を返した。
だが、そこで、
「待ってください。そういうことでしたら、僕も一緒にザック君を探しますよ」
闇の翼でぬるっと高速移動しながら、俺の前に回り込んでくる男だった。
「いや、いいよ。お前別に何か役に立つわけでもないだろ」
「始原の観測者が使えますよ!」
「え」
「僕なら、始原の観測者で、ピンチのザック君を救うことができます! 素晴らしいことでしょう! なんぜ始原の観測者ですからね!」
「あ、うん、そうね……」
うぜえ。どんだけ始原の観測者って連呼するんだ、お前は。単にザック探索を口実にその術を使いたいだけだろうがよ。
「ザック君はDIYを選ばずに呪術の選択授業を選んだ、未来ある若者です。そんな彼が一人でこんなところをさまよっているのを教師として見過ごすことはできません!」
「いや、急に建前みたいなこと言われても」
最初に本音がダダ漏れしてたじゃんよ。
「まあ、さすがに夜ならお前も役立たずにはならんか」
「そうですね。今の僕は、始原の観測者が使えますからね!」
めんどくさいので、しぶしぶその男と行動を共にすることにした。
そうそう、確か予定だと生徒たち一行は明日にはドノヴォンに帰るはずなんだよな。
「そりゃあ、決まってるじゃないですが。晩御飯のあと、ホテルを抜け出して飛んできたんですよ」
リュクサンドールは背中から闇の翼を出し、俺に見せつけるように広げながら言った。それてここまで飛んできたってことか。というか、こいつはもう夜モードか。瞳も赤い。服装はいつもの教師の制服姿のようだが。
「抜け出したってなんだよ。お前、まだ仕事中だろ。教師の仕事さぼってんじゃねえよ」
「ふふ、大丈夫ですよ。僕は今、具合が悪くてホテルの部屋にある棺桶の中で寝ていることになっていますから。ちゃんと蓋に『就寝中、開けないでください』と書いたメモを置いてきたので、僕と同室のフェディニ先生は、その中身がからっぽだとはまず思わないでしょう!」
と、何やら小学生レベルの小細工を得意げに語る男であった。そうか、あの武術担当のおっさん教師と同じ部屋なのか、こいつ。
「いや、あのおっさん、けっこう鋭いからバレるんじゃないか?」
ラックマン刑事(ネム)相手に俺が手を抜いてたの見抜いてたしな。
「心配いりません。フェディニ先生は今頃、ホテルのバーで浴びるようにエールを飲んでいるはずです。昨夜と同じように」
「連日酒飲んでんのかよ、あのおっさん」
一応、この島には仕事で来てるんだろうがよ。
「なので、フェディニ先生が部屋に帰ってくるときにはすっかり泥酔しているはずで、僕の棺桶の中身なんて確認するわけはないのです」
「ふうん、なるほどな」
まあ、酔っ払い相手なら小学生レベルの小細工でも問題ないか。
「でも、なんでお前はわざわざホテルを抜け出してこんなところに来たんだよ?」
「ふふ、これですよ」
と、リュクサンドールは近くの石像の下の方を指さした。見ると、そこに何か文字が刻まれているようだ。ただ、古代文字みたいで、俺には全く読めなかった。日本でも古文は苦手だったしな。それに、だいぶ古いもののようで、文字の保存具合もいまいちだった。これじゃ、ビスケットのチョイスの表面のアルファベットのほうがまだ読みやすいぜ。あれうまいよな。もう日本に帰れないから食べられないけどさあ。
「なんなんだよ、この文字。もっとわかりやすく説明しろ」
「これはベルガドでかつて暮らしていた人たちの遺したものです。これだけではなく、この遺跡もそうなんですよ。今から千年ほど前、ここは彼らがあがめていた神を祀る神殿だったんです。これはクロイツェ教がベルガドに伝播される前の話です」
「へえ、宗教施設だったのか」
宗教なんてロクなもんじゃねえし、壁を壊しても問題なかったな。安心したぜ。
「この神殿を作った民族は千年の間に紛争によって滅亡しましたが、記録によると、なんと呪術を祭事で日常的に使う人たちだったようです」
「ふうん」
そりゃ滅んで正解だな、そんなクソ術を使う連中なんて。
「僕はその事実を文献で読んで知った時、とても感動しました。僕と同じように呪術をこよなく愛する人たちが昔のベルガドにいたのです。そして同時に、その民族がすでに滅亡していることに深い悲しみを覚えました。なぜ彼らと僕は同じ時代に生まれることができなかったのか。彼らのような人たちと呪術について語り合いたかった……」
リュクサンドールは石板の文字を見つめながら、遠い目で語る。
「だからせめて、ベルガドにいられる間にその愛の記録を確かめておこうと思い、僕はここに来たのです。なんせ僕は、本来ならベルガドどころか、ありとあらゆる国から入国禁止扱いで、ドノヴォンから出ることができない身の上ですからね」
「お前、ほとんどの国で出入り禁止なのかよ」
まあ、前科三犯の凶悪犯だしな。
「ところで、トモキ君こそ、なぜここにいるのですか? もしかして、僕と同じようにこの遺跡にのこされた呪術への愛の記録を探求しに――」
「いや、それはないから」
かくかくしかじか。ザックとはぐれたので探していることを説明した。
「というわけで、お前、ザックを見なかったか?」
「いえ、特には」
「そうか、ならいいや」
ザックのことを知らないんなら、こいつはもう用済みだ。ユリィたちのところに戻ろう。俺はすぐに「じゃあな」と、やつの前で踵を返した。
だが、そこで、
「待ってください。そういうことでしたら、僕も一緒にザック君を探しますよ」
闇の翼でぬるっと高速移動しながら、俺の前に回り込んでくる男だった。
「いや、いいよ。お前別に何か役に立つわけでもないだろ」
「始原の観測者が使えますよ!」
「え」
「僕なら、始原の観測者で、ピンチのザック君を救うことができます! 素晴らしいことでしょう! なんぜ始原の観測者ですからね!」
「あ、うん、そうね……」
うぜえ。どんだけ始原の観測者って連呼するんだ、お前は。単にザック探索を口実にその術を使いたいだけだろうがよ。
「ザック君はDIYを選ばずに呪術の選択授業を選んだ、未来ある若者です。そんな彼が一人でこんなところをさまよっているのを教師として見過ごすことはできません!」
「いや、急に建前みたいなこと言われても」
最初に本音がダダ漏れしてたじゃんよ。
「まあ、さすがに夜ならお前も役立たずにはならんか」
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