上 下
261 / 436
3章 とこしえの大地亀ベルガド攻略編

260 エンカウント

しおりを挟む
 遺跡の奥に進んでいくと、俺たちはやがてすぐに地下へと降りる階段を見つけた。それほどめんどくさい構造の建物じゃなさそうだ。ただ、真っ暗なのでランタンの光で足元を照らしながらゆっくりと階段を降りた。また崩れたら困るしな。

 遺跡の地下は、一階に比べると空気がひんやりしていた。さらに、どこか不穏な気配も感じられた。たぶん、レジェンド以外にもそれなりにモンスターが出るところなんだろう。冒険者時代によく潜ったダンジョンと同じ感じがする。

「こんなところを一人でさまよって、ザックは大丈夫だろうか」

 ヤギも俺と同じようにモンスターがいそうな気配を感じたようだった。まあ、こいつもモンスターだしな。

「まあ、あいつも電撃の魔法は使えるし、自分の身を守るくらいはできるだろ」

 そうそう、確かあいつ、魔術の実技のテストでちゃんと的の紙に電撃当ててたからな。あの感じなら、魔法を使えばそれなりに戦えるはず。

 ただ、メンタルと身体能力がゴミカスなのが気になるところだが。特にメンタル。なんせ、母親のことママって呼んじゃう甘ったれのボンボンだからな。

「でも、ここにはレジェンド・モンスターが潜んでいるんでしょう? 一刻も早くザックさんを見つけないと、危険です」

 ユリィが言った。確かにな。たとえ最低ランクのノーブルでも、あいつがかなう相手じゃない。遭遇したら即お陀仏だ。

 俺たちはすぐにそこから歩き出した。ザックの名前を大きな声で呼びながら。しかし、いっこうに返事はなかった。あいつ、どこまで行ったんだ?

「……トモキ、やはりここは危険な場所のようだな」

 と、歩きながら、ふとヤギが言った。

「それが男たちの言っていたレジェンド・モンスターとやらかはわからんが、先ほどからとても禍々しい気配を感じる。この俺の、真ん中のツノがうずくのだ。ここにいる、邪悪なるものを滅せよと」

 そういや、こいつの頭の中心のツノは、並みの不死族なら一撃で浄化できるくらいの聖なる攻撃力があるんだったな。

「この気配は、おそらく夜に力を増すタイプの闇の魔物だろう。しかも、もうすでに俺たちとはそう遠くないところにいるようだぞ」
「え、そんなのわかるのかよ」

 こいつも妖怪アンテナ搭載だったか……と、そこで俺ははっと気づいた。そういえば俺、高性能の妖怪アンテナ持ってたじゃん!

「おい、ネム。俺たちの近くにレジェンドがいるって本当かよ?」

 俺は腰に差しているゴミ魔剣に尋ねた。

『ア、ハイ。いることはいるっすネー』
「マジか」

 あの男たちの話は見間違いとかじゃなかったんだな。

「じゃあ、ザックが出くわすより先に、俺がそいつを倒すから、どこにいるか言えよ」
『エー、アレ倒すんですか? ワタシ的にはマジノーサンキューですケド?』

 と、大好物のレジェンドがいるはずなのに、なぜかめっちゃ及び腰のゴミ魔剣だった。

「いいから、レジェンドの場所を教えろ!」
『ア、ハイー。上上下下左右左右――』
「適当にゲームの裏技のコマンド言ってんじゃねえ! 早くレジェンドの場所を言え!」
『チッ、めんどくせーですネー。マスターから見て三時の方向に直進して30mの距離ですヨ』
「そうか、ここから三時の方向に突き進めばいいのか」

 ようは右だな。俺はすぐにそっちに向きを変え、走り出した。

 そして、直後、壁にぶつかった。

「ちょ、途中に壁があるのかよ!」

 めんどくせえ。レジェンドに逃げられても困るし、壁を拳でぶっこわしてそのまま直進した。人の命がかかってるんだし、これぐらいの破壊活動、別にいいだろ。この遺跡の学術的価値とか知らん。

 やがて俺は、広間のような場所に出た。暗くてよくわからんが、ぼろぼろの石像が並んでいるようだ。

 そして、その石像の一つの近くに、何やらうごめいている影があった。

「あれか!」

 俺はゴミ魔剣を鞘から抜き、すぐにそっちに駆け寄った。

 と、そこで、

「あれ? どうしてトモキ君がこんなところに?」

 その影がこっちに気づいて言った。聞き覚えのある声だった。それが誰なのか俺は瞬時にわかった――いや、わからん! ここにいるのは、間違いなく邪悪なレジェンド・モンスター! 断じて俺の知り合いなどではない! 今すぐ俺がこの手で倒さないといけない相手のはずなんだ!

「うおおお、滅びろ邪悪の権化!」

 スパスパッ! 瞬時にゴミ魔剣でその長身の男の体をバラバラにしてやった! よし、邪悪は滅びた! 俺はレジェンドに勝った! 討伐クエスト完了!

 と、まあ、そんなはずもなく……。

「なんでいきなり斬りつけるんですか、トモキ君。痛いじゃないですか」

 その男はすぐに体を元通りに再生させ、俺に文句を言うのだった。

「いやー、悪い。お前だって気づかなかったわ。すまんすまん」

 俺はテヘペロしながら、適当に答えた。本当は直前で気づいたけど、相手がこいつならむしろっちゃえ☆って気持ちにしかならなかったんだよな。まあ、れてないけど。

 そう、今俺の目の前にいるのは、あの邪悪なる不死族の男、リュクサンドールだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ブラック宮廷から解放されたので、のんびりスローライフを始めます! ~最強ゴーレム使いの気ままな森暮らし~

ヒツキノドカ
ファンタジー
「クレイ・ウェスタ―! 貴様を宮廷から追放する!」  ブラック宮廷に勤めるゴーレム使いのクレイ・ウェスターはある日突然クビを宣告される。  理由は『不当に高い素材を買いあさったこと』とされたが……それはクレイに嫉妬する、宮廷魔術師団長の策略だった。  追放されたクレイは、自由なスローライフを求めて辺境の森へと向かう。  そこで主人公は得意のゴーレム魔術を生かしてあっという間に快適な生活を手に入れる。    一方宮廷では、クレイがいなくなったことで様々なトラブルが発生。  宮廷魔術師団長は知らなかった。  クレイがどれほど宮廷にとって重要な人物だったのか。  そして、自分では穴埋めできないほどにクレイと実力が離れていたことも。  「こんなはずでは……」と嘆きながら宮廷魔術師団長はクレイの元に向かい、戻ってくるように懇願するが、すでに理想の生活を手に入れたクレイにあっさり断られてしまう。  これはブラック宮廷から解放された天才ゴーレム使いの青年が、念願の自由なスローライフを満喫する話。 ーーーーーー ーーー ※4/29HOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝! ※推敲はしていますが、誤字脱字があるかもしれません。 見つけた際はご報告いただけますと幸いです……

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件

月風レイ
ファンタジー
 普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。    そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。  そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。  そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。  そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。  食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。  不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。  大修正中!今週中に修正終え更新していきます!

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

誰にも信じてもらえなかった公爵令嬢は、もう誰も信じません。

salt
恋愛
王都で罪を犯した悪役令嬢との婚姻を結んだ、東の辺境伯地ディオグーン領を治める、フェイドリンド辺境伯子息、アルバスの懺悔と後悔の記録。 6000文字くらいで摂取するお手軽絶望バッドエンドです。 *なろう・pixivにも掲載しています。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

処理中です...