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2章 ドノヴォン国立学院編

71 ついにあのドラゴンの正式名称が判明!

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『ようするに、これは呪いなのデスヨ。そう、レベルカンストした勇者のみに発動する、その名もバッドエンド呪い!』
「そのまんますぎるだろ……」

 つか、何気にレベルカンストしてたん、俺? やっぱタダモノじゃなかったか、はっは――って、笑ってる場合じゃあ、ない!

「なんだその意味わからん呪いは。しかも発動条件狭すぎるだろ」
『狭いどころじゃあねーですネ。この世界広しと言えども、条件満たしてるのは間違いなくマスターしかいねーじゃん的な? よっ、さすマスター!』
「茶化すのはいいから、呪いについて詳しく話せ」
『呪いの根源はあの暴虐の黄金竜マーハティカティですヨ』
「マーハ? なんだそのトンチキな名前?」
『つい先日、マスターがワンターンキルした引きこもり爬虫類でさあ』
「ああ、そんな正式名称あったんだな、アイツ」

 昔は確かに覚えてたはずなんだけど、なんかめっちゃ初めて聞く響きだな? まあ、どうでもいいか。

『あの爬虫類はマスターに瞬殺されたうえに、ワタシに美味しく食べられたとはいえ、一応、この世界では数体しかいないディヴァインクラスのモンスターでしたからネ。めんどくせー能力持ってたんですヨ。その一つが、自分が倒されたときに、相手に発動する呪いってわけで』
「え、何そのいやがらせみたいな呪い……」

 アンデット系モンスターだとそういうのよく聞くけどさあ。まさか、ラスボスクラスの超つよ系のモンスターが自分が倒された時のこと想定してそんな呪い用意してるとか、ないわー。悪の大魔王が倒されること前提に生きてるとか、ないわー。

「呪いの正式名称はバッドエンド呪いであってるんだよな? ま、まさか、俺が前世で姫に刺されて死んだのはその呪いのせい――」
『せやでー』
「って、なんでそこで唐突に関西弁なの、お前!」

 当人としてはメッチャ重い話なのに、あのキツネさんみたいに軽く流すのやめてよ、もう!

『そして、つい先日、十五年前と同様にあの爬虫類をさくっとキルしちゃったわけで、バッドエンド呪いがすでに発動しちゃってる可能性が高い』
「う……」

 やべーな。うっかり前世で勇者プレイやりこんでレベルカンストしてる場合じゃなかったよ、俺! カンスト手前で寸止めしとけば呪い回避できたんじゃないですか、俺!

「い、いやでも、今の俺のジョブは学生だし? いや、勇者やめたからただの無職か。とりあえず、呪いの発動条件からは外れる――」
『アッハ、そんなムシのいい話で現実逃避するのは無理無理カタツムリ。そもそも、勇者とは職業ではなく称号なのデスヨ? 自分で職業として名乗って勇者、ではなく、多くの人に勇者と呼ばれたとき、その人は勇者になるのデス! そういうふうにこの世の中はできてるもんデスヨ?』
「いや、俺、最近はそんなに勇者って呼ばれてな――って、よく考えたら、呼ばれまくりじゃねえか、チクショウ!」

 そうそう、あのクソ国のクソ連中ども! 動画拡散とかやりやがって! あいつらのせいで、俺は呪いの発動条件満たしちまったのかよ! クソが! 

『このままだと近いうちにマスターは死ぬ! それも最も死にたくない瞬間に死ぬ! 人生の幸せの絶頂を迎える直前に死ぬ! それがこのバッドエンド呪いの正体でさあ』
「し、幸せの絶頂を迎える直前に死ぬ呪い、だとう……」

 そんなハイパー陰湿極まりない呪いがあるわけな……いや、あるよ、超あるある! 俺、前世で好きな人に告白した直後に、その好きな人に殺されて死んだもん。告白する直前まで、まさかそんなことになるとは夢にも思わず、愛しの姫との幸せな家族計画しか頭になかったのになあ。子供は二人は欲しいかなあとか、思いながら……童貞なのにね!

「もしかすると、俺、この先幸せになっちゃいけない人なの? 人並みの幸せを手に入れようとしたら死ぬ体質になっちゃったの?」
『いえーす。そういうことになりますネー』
「そ、そんなバカなっ!」

 さすがに話が絶望的すぎて、にわかに受け入れられない。つか、意味が分からん! マーなんとかというあの竜は倒され世界は平和になったはずなのに、世界を救ったはずの俺だけ幸せになっちゃいかんとか、そんな理不尽許されるわけないだろ!

「よ、よく考えたら、お前みたいなゴミ魔剣の話を信じる理由なんてどこにもねーんだよ! 何がバッドエンド呪い(笑)だ! 作り話ならもっとマシな名前用意しろってんだ!」
『ナルホドー。この船に殺人鬼が乗っている? そんなバカな話を信じるか、俺は自分の部屋に戻る! みたいなことを口走っちゃう人だったんですネー、マスターってば』
「ちょ、勝手に人の言葉を死亡フラグにすりかえるのやめてくれる!」

 それ、ミステリーで真っ先に殺されちゃう人のセリフじゃんよ……。

『信じる者は救われる、と。ワタシとしてはそう言いたいだけなのデスネ』
「う、うっさい! 今のお前の話が正しいなんて保証はどこにもないんだからなっ!」

 と、腰に差しているゴミ魔剣に叫んだところで、俺は、周りを行きかう人たちからじろじろ見られていることに気づいた。みんな、「この人、さっきから一人で何しゃべってんの? 頭かわいそうな人なの?」みたいな視線で見ている……。うわ、めっちゃ恥ずかしい!

『マスター、ワタシは一応、あの竜を食っちまったんですぜ? したがって、あの竜の情報はすべて解析済みで、その上でこうしてマスターに警告してるってわけでさあ。そこんとこ、ご理解頼む』
「知るかっ! お前はもう黙ってろ!」

 そう言うと、俺は足早にその場を離れた。
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