声優召喚!

白川ちさと

文字の大きさ
上 下
93 / 153
シルフ編

第93話 捕まえた風

しおりを挟む

 さてと、と言って、シルフがルーシャちゃんの杖から出てきた。

「これから、影を取り込むよ」

「あ! ねぇ、まだシュルカさんが戻ってきていないよ」

 シュルカさんは空へ見回りに行った切り、帰ってきていなかった。もしかしたら、精霊に襲われているかもしれない。

 イオも竹林の上空を見上げる。

「探しに行くか」

「それには及ばない」

 探しに行く前に、竹林からシュルカさんが出てきた。

「影の配下の精霊に襲われていた。すまない。影を追い込むのに、手伝えなくて」

 シュルカさんは所々細かい傷を負っている。

「それならしょうがないよ。いま、シルフが影を取り込むところだよ」

「じゃあ、行くよ。ノーム蓋を開けて」

 シルフが言うと、ノームは頷き、土の手を操って蓋を開けた。その途端に影が飛び出そうとする。

 しかし、その前にシルフが待ち構えていた。

 シルフは腕を大きく広げる。胸の前には緑色に光る渦が出てきた。

「さあ! 僕の元へ戻るんだ!」

 黒いシルフの影が渦の中に吸い込まれていく。完全に影の羽まで見えなくなると、緑色に光る渦も一緒に消えていった。

 どう見ても成功だ。

「やったー!」「やったね!」「やりましたわ!」

 わたしとエルメラとルーシャちゃんは手を取り合って喜ぶ。

「ふう。何とかなったな」

 イオも額の汗をぬぐった。

「それにしても、時間がかかったね」

 シルフがケロッとして言う。シルフが手伝ってくれたら、もっと早く終わっていたのではと思うけれど、シルフは飄々としている。

「これじゃ、先が思いやられるよ。おそらく影たちは情報を共有しているはずだからね」

 わたしたちはシルフの言うことに頭を捻る。

「情報を共有?」

「ああ。だって、もともと僕たちは一つだったんだよ。だから、起こったことは全て別の影に伝わっているんだ」

 なるほどとは思うが、そんなの向こうに都合がいいだけ。

 もう、わたしたちが影を捕まえようとしていることは伝わっている。

 そして、それを影は待ち構えているわけだ。

 イオが渋い顔をして言う。

「……パワーアップが必要だな。シュルカさんが居なかったとはいえ、一体捕まえるのにもギリギリだった」

「確かにそうかもしれないけれど、いきなりパワーアップだなんて」

 自分で言うのも何だけど、わたしの火力は相当なものだ。これ以上、火力を上げるなんて無理だろう。出来たとしても、辺り一帯が焼け野原になってしまう。

「……わたしには必要かも。どうしたら、パワーアップできますの!?」

「そうだな。例えば精霊による武器の具現化だ」

 ルーシャちゃんの質問に答えたのはシュルカさんだ。わたしにも心当たりがあった。

「武器の具現化……。それって、イオの剣やシュルカさんの薙刀みたいな?」

 うんと頷くシュルカさん。サラマンダーに挑んだときに一緒だったビューロさんは、槍を持っていた。みんな、精霊に命令して作った武器だ。

 胸の前でグッと拳を握るルーシャちゃん。

「わたくしも武器を持ちたい……!」

「うん! わたしも、もっと役に立ちたいから、一緒にがんばろう! ルーシャちゃん!」

 シルフの影を追いながら、わたしとルーシャちゃんは武器を作り出す修行をすることになった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

竜と絵描きは世界で一番仲が悪い

mitsuo
児童書・童話
竜と人が共に学ぶ「学舎」でパートナーになった人間の少女アイと、たてがみを持った竜の少年リオン。彼女と彼が抱える秘密が明らかになった時、最悪だったコンビに変化が起きる…。 クーザという架空の大陸を舞台にした、ファンタジー要素の強い小説です。小学校高学年から中学生までを対象に考えて書いた小説ですが、異世界やファンタジーが好きな大人の方にも読んでいただけるとうれしいです。

普通じゃない世界

鳥柄ささみ
児童書・童話
リュウ、ヒナ、ヨシは同じクラスの仲良し3人組。 ヤンチャで運動神経がいいリュウに、優等生ぶってるけどおてんばなところもあるヒナ、そして成績優秀だけど運動苦手なヨシ。 もうすぐ1学期も終わるかというある日、とある噂を聞いたとヒナが教えてくれる。 その噂とは、神社の裏手にある水たまりには年中氷が張っていて、そこから異世界に行けるというもの。 それぞれ好奇心のままその氷の上に乗ると、突然氷が割れて3人は異世界へ真っ逆さまに落ちてしまったのだった。 ※カクヨムにも掲載中

『空気は読めないボクだけど』空気が読めず失敗続きのボクは、小六の夏休みに漫画の神様から『人の感情が漫画のように見える』能力をさずけられて……

弓屋 晶都
児童書・童話
「空気は読めないけど、ボク、漫画読むのは早い方だよ」 そんな、ちょっとのんびりやで癒し系の小学六年の少年、佐々田京也(ささだきょうや)が、音楽発表会や学習発表会で大忙しの二学期を、漫画の神様にもらった特別な力で乗り切るドタバタ爽快学園物語です。 コメディー色と恋愛色の強めなお話で、初めての彼女に振り回される親友を応援したり、主人公自身が初めての体験や感情をたくさん見つけてゆきます。 ---------- あらすじ ---------- 空気が読めず失敗ばかりだった主人公の京也は、小六の夏休みに漫画の神様から『人の感情が漫画のように見える』能力をさずけられる。 この能力があれば、『喋らない少女』の清音さんとも、無口な少年の内藤くんとも話しができるかも……? (2023ポプラキミノベル小説大賞最終候補作)

犬と歩けば!

もり ひろし
児童書・童話
孤独な少年らのもとにやって来た犬たち、犬たちは彼らの周辺を変えてゆく。犬のいる生活。

アポロ・ファーマシー

中靍 水雲
児童書・童話
薬局・アポロファーマシーは不思議な薬局だ。 店主の玉野は常にカラスの被り物をしているし、売っている薬も見たことのないものばかり。 そして、対価は「マテリアル」という薬に使われる素材。 マテリアルは人間からしか取れないもので、それは爪や髪の毛のように取り出しても痛くも痒くもないのだ。 店主の玉野の不思議な力で取り出し、対価としていた。 * この町に引っ越して来たばかりのモコはアポロファーマシーの存在を知り、店を訪ねる。 仲よくなったクラスメイト・ユナが可愛がっていたペットを亡くし、元気をなくしていたのだ。 どうにか元気づけたいと言ったモコに玉野が処方したのは「ソレイユの花の種」。 植えると一生の友情が咲くと言う。 早速それをユナにプレゼントしたモコ。 ユナはモコの気持ちに応え、懸命に花を育てる。 そしてある日、「いよいよ咲きそう」とユナに言われ、花を見に行くことになったモコ。 しかし、家に着くとユナは「間に合わなかった」と泣いていた。 モコは薬の説明書を読んでいなかったのだ。 薬には副作用があった。 「一週間以内に咲かせないと、一生の友情を失う」。 もうダメだとモコは落ち込む。 「ユナの笑顔を見たかっただけなのに」と。 するとユナは「違うよ」とモコに言う。 「私は二人で花を見たかった。 そのために花を咲かせたかった」。 すると、悪天候だった空が晴れ、突然ソレイユの花が開き始めた。 目的は達成したが、納得がいかないモコはそのまま玉野の元へ。 「副作用なんて聞いてない」「一般の薬局でも言っていますよ。 用法容量は守るようにと」玉野の言い分にぐうの音も出ないモコ。 「でも何でいきなり花が咲いたんだろう」「あの花は最後に友情という養分を与えなければ咲かないのですよ」。 * 他にも「アプロディテのと吐息」「石清水のせせらぎジェル」「妖精用丸型オブラート」「ヒュギエイアの整腸薬」など多数取り揃えております。 * 表紙イラスト ノーコピーライトガールさま

【完結】誰かの親切をあなたは覚えていますか?

なか
児童書・童話
私を作ってくれた 私らしくしてくれた あの優しい彼らを 忘れないためにこの作品を

魔法使いアルル

かのん
児童書・童話
 今年で10歳になるアルルは、月夜の晩、自分の誕生日に納屋の中でこっそりとパンを食べながら歌を歌っていた。  これまで自分以外に誰にも祝われる事のなかった日。  だが、偉大な大魔法使いに出会うことでアルルの世界は色を変えていく。  孤独な少女アルルが、魔法使いになって奮闘する物語。  ありがたいことに書籍化が進行中です!ありがとうございます。

『完結』セプトクルール 勇者エルニスのワンダーランド

マイマイン
児童書・童話
 これは、すぐるがやってくる前の『幻想界』の物語です。ある日突然、平和な国『スピネル王国』にやってきた謎の少年エルニスが、平和を脅かす『魔王軍』に立ち向かう王道ファンタジーです。『セプトクルール』シリーズの始まりの物語をお楽しみください。

処理中です...