声優召喚!

白川ちさと

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シルフ編

第91話 竹林の風

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 サラマンダーが着陸した場所は小高い丘だった。

 眼下には竹林が茂っている。笹の葉がカサカサと擦れて鳴る音が絶えず聞こえてくる。

「あの竹林の中にいるみたいだ」

 ルーシャちゃんの精霊石から聞こえるシルフの言うことに頷いて、わたしたちは丘を下っていく。

 歩きながら作戦を確認する。

「作戦はまずはノームを呼び出して、土の箱を作り出すんだよね、イオ」

「そうだ。ひと方向だけ、箱に入口を開ける。その中にシルフの影をみんなでどうにか追い込むんだ」

「上空に逃げられたら、シュルカさんとサラマンダーに任せるしかないね」

 そうこう話している間に、竹林の前にたどり着く。

「ノーム召喚」

 イオが杖を掲げて、ノームを呼び出した。

「お呼びですね。ええ、わたしがやるべきことは分かっています」

 やっぱり青年の姿だけれど、もう誰もつっこまない。ノームは地面に手を付けた。

「大地よ。わたしの想像する姿へ変化しなさい」

 土がうねる。すぐに四角い土の塊が出来た。

 話していたように、一方だけ入り口が開いている。

「どうです? これならば風を捕えられるでしょう」

「よし。ノームはここで待機していてくれ。俺たちは竹林の中にシルフの影を探しに行こう」

 イオのいうことに頷き、わたしたちは竹林の中に入る。

 当たり前だけど長く伸びた竹ばかり。どれだけ歩いても右も左も竹に囲まれていた。

「ねえ、シルフ。詳しい場所は分からないの?」

「風はとらえどころがないからね。大体ここら辺に居るってことぐらいしか分からないな」

「でも、確かにここにいることは間違いないことですわ。気配がしますもの」

 ルーシャちゃんが言うことに、わたしは首を捻る。

「ルーシャちゃんにも気配が分かるの?」

「ええ。エレメンタルハーフなら、精霊の気配が分かりますわ」

「ゲーズの街では素通りしちゃったのにね!」

 エルメラが余計なことを言ってしまった。

 探していた水の精霊が居たのに素通りしてしまったことだ。

 ルーシャちゃんはぷいっと鼻先を上げて、そっぽを向く。

「そっ、それはッ! 弱い精霊は流石に分かりませんの!」

「ふーん。さすがにシルフの影は精霊の気配が強いってことかぁ」

「おい。お前たち、おしゃべりをしている場合じゃない。シルフの影がすぐ近くにいるんだぞ」

 おしゃべりをしていたら、シュルカさんに注意されてしまった。

 でも、確かに全く姿を現さないけれど、すぐ近くにいることは間違いない。

 ――注意しないと。

「俺は空から見てくる。しばらく待っていてくれ」

 あまりにシルフの影が姿を現さないからか、シュルカさんが精霊と融合して空を飛んでいく。空は竹の葉に囲まれているので、姿はすぐに見えなくなった。

「風も穏やかだよね」

 とても昨日見たような禍々しい風が近くにいる所とは思えない。

「どうにかおびき寄せることとか出来ないのかな。エサをまくとか」

 好物があれば影も出て来る可能性もある。

 だけど、シルフはあっけらかんと言う。

「エサは君たち自身だよ」

「どういうことですの」

 ルーシャちゃんが眉を八の字にして、精霊石に話しかける。

「珍しい人間がいれば面白そうだから、僕なら絶対出て来るもん。影だってそんなに違いはないはずだよ」

「でも、全然……」

 出てこないじゃない。そう言おうとしたときだ。

「伏せろ!」

 イオがわたしとルーシャちゃんの頭を地面へ押さえつけた。

「な、なに!?」

 ビュン!!

 一瞬あとに風が空気を切る音が鳴る。

「ひぃッ!」

 エルメラが小さく悲鳴をあげた。顔を上げると、周りにあった竹がスッパリ斬られている。カラカラと音を立てながら、竹は倒れて行く。

「どこにいるの?」

 辺りを見回しても、昨日みたいに黒い影がいない。

「上ですわ!」

 ルーシャちゃんの声に顔を上げる。そこには黒いもや、シルフの影が浮かんでいた。

 黒い影から鎌のような羽が伸びてくる。

「ひ、ひいい!」

 わたしは地面をゴロゴロと転がって、鎌のような羽を避ける。

 わたしが居た場所の地面は、スッパリ裂けていた。

 これではノームの所に追い込むどころか、わたしたちが先に切り刻まれてしまう。

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