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46.女神様と菜摘とお泊りと

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「いらっしゃい、なっちゃん」
「こんにちは。本日はお世話になります」

 そう言ってやってきたのは菜摘。
 俺が知らないうちに話が進んでいて、菜摘が泊まりに来ることになったのだ。
 浩介も一緒ならまだわからんでもないが、菜摘一人だからな。
 これなら、俺がどこか行った方がいいような気がするが、それではダメらしい。

「ふふふ……優希さん、今夜はよろしくお願いしますね」
「おい、なんか誤解を生みそうな言い方はやめろ」

 冗談だとわかっているからいいが、普通に心臓に悪い。やってないからわからないが、冗談でも菜摘の誘いに乗っかったら、穂香から何を言われるか……。
 怒られるくらいならまだいいが、泣かれたりしたら対応に困る。その時は菜摘もいるわけだから、どうなるか考えたくもない。
 暫くの間は弄られるネタになるに違いない。
 逆に、穂香と協力して、菜摘の誘いにわざと乗ってみるというのは面白いかもしれないが……。

「それにしても……なんか荷物多くないか?」

 菜摘の荷物は、一泊するだけの着替えが入っているにしては大きすぎる気がする。

「え?そうですか?二泊するんですからこれくらい普通ですよ。私も女の子ですし……」

 んん?今、聞き間違いじゃなったら、二泊って言わなかったか?

「あれ?ユウ君、もしかしてちゃんと聞いてなかった?なっちゃんはこの週末、二泊するのよ」
「……聞いてなかった……まぁ、俺は構わないが……」
「ちゃんと浩介さんには言ってあるので大丈夫です」

 浩介もわかっているならいいが、こういうお泊り会みたいなのは、仲の良い女子同士で結構やっているみたいだ。男同士はあまり聞かないけどな。

「ユウ君はいつも通り過ごしてくれていたらいいから、私達の事は気にしてくれなくていいよ」
「ああ……それは難しいかもしれないが、善処する」

 何となく、この二日間は精神的に疲れそうな予感しかしないな。



 夕食の時間、今日は穂香と菜摘が作ってくれるので、俺は完全にフリーだ。次々と運ばれてくる料理を見ていればいいだけだから楽ではある。
 今日は生姜焼きとポテトサラダ、大根の味噌汁、ナスの揚げ浸し、野菜の煮物だ。
 相変わらず美味そうだ。

「ふふっ……やっぱり穂香さんのご飯は美味しいですね」
「なっちゃんも美味しいよ。前よりずっと上手くなってるよね?」
「結構練習してますから。それにしても、優希さんは美味しそうに食べますね。食べ方も綺麗です。浩介さんにも見習ってほしいくらいですね」
「いや、実際美味いからな。浩介ってそんなに食べ方酷かったか?」

 浩介の食べている姿を思い出してみるが……あ~、まあ、綺麗ではないか……。

「そうですね、浩介さんは前よりはかなりマシになりましたよ?ずっと言い続けてますからね。ダメな時は私用の料理を食べさせてるので、効率がよくなりました」
「あはは……なっちゃんらしいね」
「そうだな、浩介も大変だ……」
「浩介さんの家族も私の味方なので、色々とやり易いです」

 うわぁ、浩介、それはわかる。俺も母さんは完全に穂香側だからな……また、浩介と一緒に飯でも食いに行くか。守も誘って三人で。
 
「なっちゃん、お風呂沸いたよ~」

 夕食が終わって、テレビ見たりしながら時間を潰していたら、穂香から声がかかった。

「私、最後でいいですよ?」
「いや、先に行ってくれていいぞ。俺は筋トレしてから行くから最後でいいし」
「ほら、ユウ君もそう言ってるし」
「……じゃあ、穂香さん、一緒に入りませんか?」
「え?私?」
「はい、女同士お風呂で語り合いましょう」
「ん~いいよ。少し、身の危険を感じるけど……じゃあ、ユウ君、私達先にお風呂入ってくるね」
「ああ、ゆっくり入ってきてくれ」

 約一時間くらいだろうか?俺が筋トレのメニューを終える頃、二人がパジャマを着て出てきた。
 二人とも肌から湯気が出るほど温まってきた感じだ。顔など見える部分の肌はピンク色に上気して、湯上がりならではの色気が感じられる。
 菜摘も普段は子供っぽいが、今の姿からは子供っぽさよりも、少女から大人になりかけのような可愛さと色気が同居しているような感じだ。

「ふぅ~危なかった……」
「くっ、穂香さんがあれほどとは思いませんでした……お姉様って呼んでもいいですか?」
「ダメよ、ダメに決まってるじゃない。そんな呼ばれ方したら、みんなに説明するのが大変だもの」
「残念です……」

 おい、何があった?風呂に入って危なかったとか、お姉様とか……何があったのか想像もつかない。

「優希さん、寝起きの浩介さんみたいな顔して、何かあったんですか?」

 菜摘は普段通りみたいだ。それにしても寝起きの浩介ってどんな顔だ?いや、どんな意味だ?

「いや……風呂で何かあったのか?お姉様とかどうとか言っていたが……」

「え?それは……」
「優希さん、それは女同士の秘密なのです。詮索するのは良くないですよ」

 穂香が言おうとしたのを遮って、菜摘が言った。
 んん?菜摘から進んでこういうのを秘密にするのって珍しいような気がするが……何となく、詳しくは聞かない方が良さそうだな。

「そうか……いや、問題ないならいいんだ。じゃあ、俺も風呂入ってくるよ」
「うん、ゆっくりしてきてね」
「私達の残り湯で変な事しないでくださいね。通報されますよ」
「ちょっと待て、俺は普通に風呂に入るだけしかしないぞ」

 菜摘が変な事言ってきたが、適当にあしらって風呂へ向かった。まともに相手してたらそれだけで疲れるからな。

 風呂から戻ってきてから気付いたが、穂香と菜摘のパジャマってよく似てると思ったら、全く同じじゃないか?

「そうなの。これは完全に偶然よね」
「そうですね……私もこれには驚きました」

 二人が来ているのはふわふわした生地のピンク色のパジャマだ。二人とも良く似合っているし、こうやって並んでいると、美少女姉妹って感じもするな。

「ユウ君、どうしたの?」
「いや……同じパジャマ着てると、姉妹みたいだなと思ってな……」
「おお~優希さん、なかなかいいこと言いますね」
「ふふっ……なっちゃんみたいな可愛い妹なら大歓迎かな」
「穂香さん、せっかくなので写真撮りましょう」
「うん、いいよ」

 そして、二人の撮影会が始まった。基本的に自撮りで色々撮っていたが、たまに俺もカメラマンをさせられた。しかし、美少女二人がパジャマ姿で絡む姿は絵になるな。
 俺もこの写真ほしいかも。

 撮影会が終わって、しばらくだらだら過ごしていたが、いよいよ寝る時間がやってきた。
 菜摘は空いている部屋の方で寝てもらう予定だ。
 しかし、菜摘がそんな予定通りに動いてくれるはずもなく、

「せっかくなので、私も同じ部屋で寝たいです」

 と、まぁ、想定の範囲内の無茶を言ってきた。

「いや、それだと俺がいるのはマズイだろ?」

 とりあえず、もっともらしい意見で回避する。

「穂香さんもいるので大丈夫ですよ。それに、優希さんのことは信じてますから。布団も別ですし問題ないですよ」
「まぁまぁ、ユウ君、いいじゃない。実際、何かするわけじゃないでしょ?」
「ああ、そりゃそうだが……穂香が言うならいいか」
「ふふふっ、ありがとうございます。警戒しなくても大丈夫ですよ。今日は何もしませんから」

 おい、それって明日は何かするって予告のようなものじゃないか。
 菜摘がなにかしでかさないように、一応警戒しておくか……。
 菜摘の分の布団も準備して全員が就寝する。
 結構疲れていたのか……俺は穂香と菜摘より先に寝入ってしまった。


 次の朝、俺は二人より先に目が覚めた。
 まだ眠たくて、目を閉じたままだが、穂香が俺の腕を抱き枕にしているのが感覚でわかる。
 だが、いつもとなんか違う。
 丁度、手の平に軟らかい部分が当たっているが、いつもより少し柔らかく小ぶりな感じがする。ゆっくり目を開けてみると……俺の腕を抱き枕にしていたのは菜摘だった。




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