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日陰に立つ
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「周りが悪いわけじゃなくてね、ブラックボックスに入ったデータのように本物の感情が見えなくなってるの。」
そう言って本村薫は今日も仕事の送迎車を見えなくなるまで見送った。
別れた旦那が言っていた。今日、会った人が明日会えるとは、限らない。なら最後まできちんと見送るべきだと。
本村はこの十年そうして皆を見送ってきた。それでも心はささくれ立つ。
なら、止めてしまおうか。そうも思った。しかしそれ以上に皆が笑顔で帰っていくことに無駄なことではない。そう思った。
旦那は言っていた。新築の家を購入した時、必ず拭いてから物をしまうようにと。
私はそれも不思議だった。
自分の持ち物を自分で管理できなくなったら、おしまいだ。と。
その割には旦那は丁寧に私の靴を踏みつけて自分の靴を履く。言い訳は十ほどあったが、私は聞かなかった。
旦那の中で私の靴は踏み付けられても良いレベルのものなのだ。
旦那はデパートでしか靴を買わない。私は少し大きなスーパーで売っている三千円ほどの靴を買い、それを履いてどこにでも行った。
思い出すほど家庭環境の違いと、私は親から愛されてなかったことが良く分かった。
旦那は私が『わかりましたよ。』というのを嫌がる。『分かりました。』で良いんじゃないかと言うのだ。
たぶん私の中で『わかりましたよ。』というのはわかってますから大丈夫ですよの短縮形なのだと思う。『分かりました。』は私は分かったよ、その意味しかない。
別れてからの方が旦那とは仲良くなった。もともと女性であることに嫌悪感がある私は、この距離感だと旦那と適切な会話が出来た。
子供を前にすると母親譲りのヒステリーを起こす。旦那の再婚相手には感謝しか無い。子供を育ててくれる以上に旦那の妻で居ることを選んでくれたことに感謝していた。
「薫は再婚しないの?」
友達とご飯に行くと必ず突っ込まれる。育児だって育児ノイローゼで子供を殺してしまうかもしれなかったのにとんでもない。
皆が当たり前に出来ることが私には出来ない。
「薫は芸術家だからね。」
私は言葉が降りてこない。そのかわりなのか、絵が描けた。たまに人から頼まれて絵を描く。その程度のものだ。
「日展とか二科展とか出してみれば?」
「あのサイズは家で描けないからアトリエが必要になるんだよ。」
「アパート何だけど部屋数が多くて今の家賃より安い物件があるのよ。」
そう言って亜弥は笑った。不動産会社の息子と結婚しただけあって営業を怠らない。
「広いと寒いしなぁ…。」
「灯油ストーブも使えるわよ。」
そして私はその物件を見ることになった。
私が住む町からバスで乗り換えて30分で着く場所だった。
「駅は遠いけど画材屋さんの近くにはなるから。」
亜弥はニコニコとしている。私はそのアパートのドアに手をかけた。
「ああ、今鍵出すわね。」
新しい匂いがした。
「外観は古いけどなかはリノベーションしてあるから。」
亜弥はスリッパを2足用意して私に中を見るように促した。
広い物件だった。
「収納はないけど広いでしょう?」
「でも引っ越し代とか…。」
「今の時期なら安いわよ。電話して聞いてみようか?」
どうやら亜弥には既に私はお客さんのようだった。
そうしてトントンと私はこのアパートに引っ越した。アパートの上の住人は女の人でたまに彼氏とふたりで過ごしている。
壁が薄いかと言えばそんなこともない。私は週に4回定職で働き、残った時間を油絵制作に向けた。
日展や二科展に興味はあった。しかし、1度会場で友達に二科展なら薫は入賞出来るわよ、そう言われて周囲の視線から居心地の悪い思いをした。それが頭に残っている。
今回の作品は朱鷺を描いた。
たまたま雪景色のなか止まっていた朱鷺を見たからだ。
奇跡のような時間だった。
生き物は好きだ。大自然の中で生きるという事を見せつけてくれる。彼らには迷いなく生きるという選択肢しかない。
私は常に迷いの中にいる。母親を辞めて妻を辞めてそれでも生きていく中で私には何が残されているのだろう。そもそも人は誰かと家族にならなければ生きてはいけないのだろうか。
そう思った。
朱鷺を描いて1か月経った。仕上げの段階に入る頃、私は画材屋へ行った。狭い店内に所狭しと絵の具やパステル、イーゼル、キャンバスなどが並んでいる。
この日はレジでふたりの男が話し込んでいた。
「常滑さんなら今回も入賞するでしょうね。」
「いやいやお恥ずかしい限りです。」
常滑という名前に私は聞き覚えがあった。二科展の常連作家だ。
「今回はどんな作品なんです?」
「それは会場で見ていただかないと。」
「お。会場に並ぶんですね?」
そこまで話すと常滑は私に気付いた。
「申し訳無い、お嬢さん。」
「いらっしゃいませ。」
ふたりはよそ行きの顔になった。私はふたりの会話がなんとなく好きでもっと話を聞いていたかったのでぶっきらぼうに、
「絵の具を買いに来ただけなんで。」
そう答えた。
「私も油絵を描くんです。」
常滑は目をキラキラさせた。
「好きな作家は誰ですか?」
「印象派全般が好きですね。」
「私もなんです。また、ここで会えたらお話しませんか。」
そう言って常滑は帽子を取って頭を下げた。
「ぜひ、お願いします。」
そう言って私は店を出た。
家に戻ると亜弥に電話した。
「画材屋が近くにあるだけあって芸術家がいるんだね。」
そう言って笑った。
「薫だって世界の大先生かもよ。」
「ほとんど描かないのに?」
「その分1枚ずつに魂がこもっているわよ。」
「描けば描くほど自分の形が分からなくなって来るのはやっぱり魂が入るからなんだよね。」
そう言って私は紅茶を口にした。
「ゴッホみたいにならない限り絵を描き続ければ良いわ。」
そう言って亜弥との通話を終えた。
あの日、私が出会った朱鷺は飛ぼうとしていたのか、それとも獲物を狙って地面に降りたのか分からない。
それでも何にも恥じない姿をしていた。
私が引っ越してからというもの、常滑は良く画材屋に姿を表した。
芸術家というのは孤独な生き物だ。ひとりひとりどこかが違う。同じものを描く作家はいない。私は極極薄い水色を使った作品が好きで青と白を多用する。限りなくクリアに近い。そんな作品を描く。
常滑は大地を震わすような木々の作品を描く。旦那とは違って話してみると本当に楽だった。彼の中には専業主婦の私の姿はなく、あくまでもひとりの芸術家として私がその瞳に映り込んでいた。
「二科展も日展も出してみたら良いですよ。そこから世界がひらけますから。」
常滑は毎回のようにそう話した。常滑は紳士のような、おちゃらけたようなそんな話し方をする。それでも彼の生み出す作風には重圧がある。あれが彼の本当の姿なのだろう。
私は7月ごろに締め切りがある二科展に向けて作品を作ることにした。
テーマは翼の折れた少女だった。
それからも私は仕事と油絵制作に力を入れた。この頃から私は子どもたちと会わなくなった。子どもがそうしたいと言ったのだ。母は理由のわからない話ばかりする、そう言っていたと旦那から聞いた。
普通の人と私達はどこが違うのだろう。別れた旦那は私のことは芸術家だと言っていた。しかし、その目には私は女性として映っていた。
常滑の目には確かに私を芸術家だと見ているフィルターがかかっているのだ。
それが私はたまらなく心地よかった。今まで社会から背負わされてきた当たり前の母親像からようやく解放された気がした。
その日は常滑のアトリエに訪ねた。イーゼルが何台かあって、沢山のボロキレと制作途中の油絵があった。
「木とか花が好きでそればっかりなんですけど、それしか無いと自分では思っています。」
常滑は私の横に椅子を置き、コーヒーを入れに行った。
「良く日が入りますね。」
「この物件を見たとき、それで決めたんです。」
常滑はまたキラキラとしていた。彼は永遠に少年なのだろうか、そんな事を思わせた。
「大人になったら何でも出来ると思ってましたが逆になんにも出来ないものですね。」
そう言って常滑は笑った。
「月末になると家賃が怖くて。」
「分かります。」
そんな他愛のない話を私達はして解散した。
それからも私達は互いのアトリエを行き来した。それでも私達は男女の仲にはならなかった。少年と少女のように手を繋いでは新しい何かを探しにふたりで彷徨った。
そんな私に旦那は苛立った。
「別れたから俺のことは別にいい。でも子供にはまだ母親像が必要なんだ。ふざけるのもいい加減にしてくれ!!」
そう言って罵声を浴びせられた。
私は素直に私を母親だと思わないて欲しい。友達か何かだと思って欲しい。そう告げた。
常滑とはこんなことにはならないのに、そう思うほど私は油絵に向かう時間が延びていった。
二科展に出品料を払って応募した。賞はともかく、私の作品は美術館に飾られた。
子どもと旦那が見に行ったよ、君には世界がそんなふうに見えるんだね。そう言われた。
常滑は私に出品者の何人かを紹介して来た。絵が描けて良かった。私はそう思って常滑の作品の前に立った。
ブレることのない大木だった。
そう言って本村薫は今日も仕事の送迎車を見えなくなるまで見送った。
別れた旦那が言っていた。今日、会った人が明日会えるとは、限らない。なら最後まできちんと見送るべきだと。
本村はこの十年そうして皆を見送ってきた。それでも心はささくれ立つ。
なら、止めてしまおうか。そうも思った。しかしそれ以上に皆が笑顔で帰っていくことに無駄なことではない。そう思った。
旦那は言っていた。新築の家を購入した時、必ず拭いてから物をしまうようにと。
私はそれも不思議だった。
自分の持ち物を自分で管理できなくなったら、おしまいだ。と。
その割には旦那は丁寧に私の靴を踏みつけて自分の靴を履く。言い訳は十ほどあったが、私は聞かなかった。
旦那の中で私の靴は踏み付けられても良いレベルのものなのだ。
旦那はデパートでしか靴を買わない。私は少し大きなスーパーで売っている三千円ほどの靴を買い、それを履いてどこにでも行った。
思い出すほど家庭環境の違いと、私は親から愛されてなかったことが良く分かった。
旦那は私が『わかりましたよ。』というのを嫌がる。『分かりました。』で良いんじゃないかと言うのだ。
たぶん私の中で『わかりましたよ。』というのはわかってますから大丈夫ですよの短縮形なのだと思う。『分かりました。』は私は分かったよ、その意味しかない。
別れてからの方が旦那とは仲良くなった。もともと女性であることに嫌悪感がある私は、この距離感だと旦那と適切な会話が出来た。
子供を前にすると母親譲りのヒステリーを起こす。旦那の再婚相手には感謝しか無い。子供を育ててくれる以上に旦那の妻で居ることを選んでくれたことに感謝していた。
「薫は再婚しないの?」
友達とご飯に行くと必ず突っ込まれる。育児だって育児ノイローゼで子供を殺してしまうかもしれなかったのにとんでもない。
皆が当たり前に出来ることが私には出来ない。
「薫は芸術家だからね。」
私は言葉が降りてこない。そのかわりなのか、絵が描けた。たまに人から頼まれて絵を描く。その程度のものだ。
「日展とか二科展とか出してみれば?」
「あのサイズは家で描けないからアトリエが必要になるんだよ。」
「アパート何だけど部屋数が多くて今の家賃より安い物件があるのよ。」
そう言って亜弥は笑った。不動産会社の息子と結婚しただけあって営業を怠らない。
「広いと寒いしなぁ…。」
「灯油ストーブも使えるわよ。」
そして私はその物件を見ることになった。
私が住む町からバスで乗り換えて30分で着く場所だった。
「駅は遠いけど画材屋さんの近くにはなるから。」
亜弥はニコニコとしている。私はそのアパートのドアに手をかけた。
「ああ、今鍵出すわね。」
新しい匂いがした。
「外観は古いけどなかはリノベーションしてあるから。」
亜弥はスリッパを2足用意して私に中を見るように促した。
広い物件だった。
「収納はないけど広いでしょう?」
「でも引っ越し代とか…。」
「今の時期なら安いわよ。電話して聞いてみようか?」
どうやら亜弥には既に私はお客さんのようだった。
そうしてトントンと私はこのアパートに引っ越した。アパートの上の住人は女の人でたまに彼氏とふたりで過ごしている。
壁が薄いかと言えばそんなこともない。私は週に4回定職で働き、残った時間を油絵制作に向けた。
日展や二科展に興味はあった。しかし、1度会場で友達に二科展なら薫は入賞出来るわよ、そう言われて周囲の視線から居心地の悪い思いをした。それが頭に残っている。
今回の作品は朱鷺を描いた。
たまたま雪景色のなか止まっていた朱鷺を見たからだ。
奇跡のような時間だった。
生き物は好きだ。大自然の中で生きるという事を見せつけてくれる。彼らには迷いなく生きるという選択肢しかない。
私は常に迷いの中にいる。母親を辞めて妻を辞めてそれでも生きていく中で私には何が残されているのだろう。そもそも人は誰かと家族にならなければ生きてはいけないのだろうか。
そう思った。
朱鷺を描いて1か月経った。仕上げの段階に入る頃、私は画材屋へ行った。狭い店内に所狭しと絵の具やパステル、イーゼル、キャンバスなどが並んでいる。
この日はレジでふたりの男が話し込んでいた。
「常滑さんなら今回も入賞するでしょうね。」
「いやいやお恥ずかしい限りです。」
常滑という名前に私は聞き覚えがあった。二科展の常連作家だ。
「今回はどんな作品なんです?」
「それは会場で見ていただかないと。」
「お。会場に並ぶんですね?」
そこまで話すと常滑は私に気付いた。
「申し訳無い、お嬢さん。」
「いらっしゃいませ。」
ふたりはよそ行きの顔になった。私はふたりの会話がなんとなく好きでもっと話を聞いていたかったのでぶっきらぼうに、
「絵の具を買いに来ただけなんで。」
そう答えた。
「私も油絵を描くんです。」
常滑は目をキラキラさせた。
「好きな作家は誰ですか?」
「印象派全般が好きですね。」
「私もなんです。また、ここで会えたらお話しませんか。」
そう言って常滑は帽子を取って頭を下げた。
「ぜひ、お願いします。」
そう言って私は店を出た。
家に戻ると亜弥に電話した。
「画材屋が近くにあるだけあって芸術家がいるんだね。」
そう言って笑った。
「薫だって世界の大先生かもよ。」
「ほとんど描かないのに?」
「その分1枚ずつに魂がこもっているわよ。」
「描けば描くほど自分の形が分からなくなって来るのはやっぱり魂が入るからなんだよね。」
そう言って私は紅茶を口にした。
「ゴッホみたいにならない限り絵を描き続ければ良いわ。」
そう言って亜弥との通話を終えた。
あの日、私が出会った朱鷺は飛ぼうとしていたのか、それとも獲物を狙って地面に降りたのか分からない。
それでも何にも恥じない姿をしていた。
私が引っ越してからというもの、常滑は良く画材屋に姿を表した。
芸術家というのは孤独な生き物だ。ひとりひとりどこかが違う。同じものを描く作家はいない。私は極極薄い水色を使った作品が好きで青と白を多用する。限りなくクリアに近い。そんな作品を描く。
常滑は大地を震わすような木々の作品を描く。旦那とは違って話してみると本当に楽だった。彼の中には専業主婦の私の姿はなく、あくまでもひとりの芸術家として私がその瞳に映り込んでいた。
「二科展も日展も出してみたら良いですよ。そこから世界がひらけますから。」
常滑は毎回のようにそう話した。常滑は紳士のような、おちゃらけたようなそんな話し方をする。それでも彼の生み出す作風には重圧がある。あれが彼の本当の姿なのだろう。
私は7月ごろに締め切りがある二科展に向けて作品を作ることにした。
テーマは翼の折れた少女だった。
それからも私は仕事と油絵制作に力を入れた。この頃から私は子どもたちと会わなくなった。子どもがそうしたいと言ったのだ。母は理由のわからない話ばかりする、そう言っていたと旦那から聞いた。
普通の人と私達はどこが違うのだろう。別れた旦那は私のことは芸術家だと言っていた。しかし、その目には私は女性として映っていた。
常滑の目には確かに私を芸術家だと見ているフィルターがかかっているのだ。
それが私はたまらなく心地よかった。今まで社会から背負わされてきた当たり前の母親像からようやく解放された気がした。
その日は常滑のアトリエに訪ねた。イーゼルが何台かあって、沢山のボロキレと制作途中の油絵があった。
「木とか花が好きでそればっかりなんですけど、それしか無いと自分では思っています。」
常滑は私の横に椅子を置き、コーヒーを入れに行った。
「良く日が入りますね。」
「この物件を見たとき、それで決めたんです。」
常滑はまたキラキラとしていた。彼は永遠に少年なのだろうか、そんな事を思わせた。
「大人になったら何でも出来ると思ってましたが逆になんにも出来ないものですね。」
そう言って常滑は笑った。
「月末になると家賃が怖くて。」
「分かります。」
そんな他愛のない話を私達はして解散した。
それからも私達は互いのアトリエを行き来した。それでも私達は男女の仲にはならなかった。少年と少女のように手を繋いでは新しい何かを探しにふたりで彷徨った。
そんな私に旦那は苛立った。
「別れたから俺のことは別にいい。でも子供にはまだ母親像が必要なんだ。ふざけるのもいい加減にしてくれ!!」
そう言って罵声を浴びせられた。
私は素直に私を母親だと思わないて欲しい。友達か何かだと思って欲しい。そう告げた。
常滑とはこんなことにはならないのに、そう思うほど私は油絵に向かう時間が延びていった。
二科展に出品料を払って応募した。賞はともかく、私の作品は美術館に飾られた。
子どもと旦那が見に行ったよ、君には世界がそんなふうに見えるんだね。そう言われた。
常滑は私に出品者の何人かを紹介して来た。絵が描けて良かった。私はそう思って常滑の作品の前に立った。
ブレることのない大木だった。
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