【連載中】神色の血

九時せんり

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快進撃

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旅行から帰ってきた兄は学校の人気者だった。旅行の土産と言ってはみんなに色々配った。私も仲の良い友達にちょっとばかりのお土産を配ったものの、返ってきた試しはない。
兄は友人の喜ぶ顔を見て嬉々としていた。
学校ではたまに、
「お前タツキの妹だろう。何でそんなに出来悪いの?」
と言われた。
それでも通知表の生活欄のところは全て丸だった。忘れ物も遅刻もしたことがないし、学校の備品だって大切に使っている。
今日は最後の九九の日だった。放課後になり、教室が夕日で照らされる中、私は泣きながら九九を唱えた。
そうして28回目くらいで、ようやく成功した。しかし、ここから私の快進撃は始まっていった。

塾に入った。
塾ではプリントや小冊子が与えられて5~6人位の子どもと女性の先生がひとりいた。
「これ2週間分ね。」
先生からドリルを手渡された。パラパラとめくっていったものの全てに見覚えがあった。
早速ドリルに取り掛かる。20分経った頃、私は手を挙げた。
「あー。分からないところねー。」
先生はニコニコしながら近づいてくる。
「終わりました。」
「え?これ2週間分なのよ。」
先生はドリルを引き取って採点へと向かった。
少しして先生は興奮気味に戻ってきて、
「全問正解してたわよー、凄いのねー。」
と、周りに聞こえるような声で話し続けた。
塾での私は兄ほどではないがヒーローになれたのかもしれない。
ヒロインではなくヒーローになりたかったのは男なら祖父の会社が継げたからだ。
でもそれは数日後に全て終わった。
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