『番』という存在

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本編

リアリーの日常

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ボルテ王国、ここはヒト族、獣人族、エルフ族、ドワーフ族など現在で確認されていないような種族が多数共存する世界にあるうちの一つの王国だ。種族間の中は良く、技術や知識、資源などのさまざまなものが取引され、そこから発展されている。


その世界には、『番』というヒト族以外が認識できる人生の伴侶という不思議な力があり、ヒト族以外の種族ではこの『番』を見つけるために人生を賭けることもよくある。また、ヒト族が『番』であった場合は、全力で外堀を埋め根回しをし、『番』を自分のものにするための行動を起こすことが当たり前となっている。


その結果、人生を幸せに暮らすことができたヒト族と他種族のカップルは多く、生まれる子供も親のどちらかの種族を受け継ぐ。

ヒト族以外の種族同士のカップルは、『番』というものを本能的に感じ取れるためそれが当たり前となり、束縛や嫉妬、浮気などの心配は少ないが、ヒト族と他種族のカップルでは他種族側が束縛し、溺愛し、あるいは閉じ込めることもあり得る。でも、ヒト族はそれがとても嬉しく、幸せだと感じるためまあ結果オーライという感じである。ここら辺は、ヒト族でも人それぞれ違うところもあるが少数派である。


*****


「今日も寒いな。」

寒すぎて凍える手に息をかけながら自分の部屋…といっても使用人部屋と同じくらいの部屋から出てきた私はまず今日の最初の仕事をこなすことにした。

「今日の最初の仕事は何かな~…えっと…今日は水汲みをしてから、食堂の準備をして、洗濯をした後に掃除したら、午後は自由時間か。」

今日の作業が一人一人紙に書いてあるため、書いてあるとおりに仕事をすればいいから楽だ。紙に書いているのは、私だけなんだけどね。

「今日は水汲みからか。ちょっと大変だけど明日はお休みの日だからがんばろう!」

気合を入れながら、水汲みに取り掛かる。おいしょっと、と声をかけながら屋敷1日の使う分の大量の水を運び始めた。

「ふぅー。水汲み終わった。もう水汲みのプロになれるくらいのスピードだったわね。」

1人で自画自賛しながら、次の仕事に取り掛かろうとして食堂に向かった。



コンコン

「失礼します。」

一応、誰かがいるといけないからノックをするが、5秒くらい経っても返事がないため、ドアを開けた。

「あら、リアリーじゃない。朝から嫌なものを見たわ。朝早く起きたからいい気分だったのに気分が悪くなっちゃったじゃない。部屋に戻るわ。」

「申し訳ございません。アナスタシアお嬢様。」

「もういいわ、あ、そうだ。あなたにいい仕事をあげるわ。明日大事なお客様が来るから最高のドレスでお出迎えしたいの、だから明日着るドレスは誕生日会に来たドレスをリメイクしたのを着たいから、明日までにやって置いて。」

そう言い残して部屋に戻っていった。私はアナスタシアが食堂から出て行くまで頭を下げていたため表情が見えなかったが、絶対に性悪な顔をしていたに違いない。

「はぁ、今日の午後は昼寝でもしようと思っていたのに。でも、やっておかないと何されるかわかんないしやるしかないか。」

テンションだだ下がりだが、早くしないと奥様も来てしまうから早く終わらせないと。

その後、手早く食堂の準備を終わらせて、掃除もぱぱっと終わらせてご飯を食べ始めた。

アナスタシアの部屋に入る時にノックをしたが声が聞こえてこなかったため、そのまま部屋に入ったが今度は誰もいなかったため胸を撫で下ろした。

クローゼットの前に立ち扉をを開けると、とてもたくさんのドレスが出てきた。ふと、端っこの方を見ると懐かしいドレスが置いてあり嬉しくなり、寂しくもなった。
気を取り直して…これか。アナスタシアのお気に入りのドレスを取り出して自分の部屋で作業するために持ち出した。多分、アナスタシアは出かけているはずだから、帰ってくるまでに戻しておけば大丈夫。

自分の部屋に戻ってきたら、早速裁縫道具を取り出して付いている装飾を外し始めた。やるなら、きっちりやらないと手を抜いた時や気に入らないアレンジだった時は恐ろしく、持っている扇で手と顔を打たれて1週間くらい腫れが引かなかった。それを思い出して涙目になったが明るく気合を入れ直して、作業を開始した。

アナスタシアは、ドレスの布を着るようなことをされるのが嫌いで、ゴテゴテしたものが好きだから…
今回は等間隔についていた宝石を花に見立てて胸元や腰の位置にまとめて縫おう。あとは、裾についているレースを外して腰に巻き付けるようにして腰を細く見せる。あ、そのレースの上に宝石の花を一つ縫い付ければもっといいかも。

今は全然触ることができなくなったドレスをアレンジするという目的でしか触れないことに寂しさを感じながら、テキパキと終わらせていく。



「よし!完成。今回は綺麗にできたわ、やっぱり人は慣れで大体なんでもできるようになるのね。戻しにいかなくっちゃ。時間が少しかかりすぎてしまったかしら。」

慌てて、アナスタシアの部屋に戻ると、ちょうど奥様と鉢合わせをしてしまった。

「ちょっと、そこのメイド。アナスタシアの部屋で何をしているの。そのドレス…盗み出そうとしたのかい?」

「違います!奥様。私はアナスタシア様からこのドレスをアレンジしておくように言われたので、終わったものを持ってきたのです。」

「そうなの。なら早くしまいなさい、そのドレスにあなたが触れるなんて本来なら許されないのだからね。」

盗みの疑いをかけられそうになったが大丈夫なようだ。よかった。
ぽろっと、束ねて置いた髪の毛があわててきた時に解けていたようで解けてしまっていた。まずい。

「あなた、だらしないわよ。…その髪の色…リアリー、あなただったの。はっ!もしかして、本当にアナスタシアのものを盗みにきたのね。ちょっとこっちにきなさい!」

私だとわかった奥様が私の腕をひねり上げるように掴んで問いただした。

「やめてください、奥様。私は本当にドレスのアレンジを頼まれていて、それを戻しにきただけなんです。」

必死に抵抗するも、奥様は聞く耳を持ってくれない。しかも、腕がどんどんひねあげられていってとても痛い。このまま気が済むまで耐えよう、そう思った時に。

「奥様!ここにいましたか。明日のことでご相談がございましてよろしいですか?なにぶん大事なお客様ですので奥様の意見を参考にしたいのです。」

執事長がやってきたため、奥様が私の手を離した。

「あら、何かしら。リアリー、今日は明日の方が大事なので許してあげます。せいぜい、使用人らしくしていなさい。いくわよ、セバスチャン。」

「はい、奥様。君も早く仕事に戻りなさい。」

そういい残して、奥様と執事長は書斎の方に行ってしまった。

助かったわ、これ以上掴まれていたら折れていたかもしれないもの。でも、手を動かすと少し痛みがあるわね。明日は休みだからその間に治ればいいけど。

「早いうちに、部屋に戻らないと。」

部屋にもどって、ベッドにダイブしてお昼寝をしてから明日のお休みの予定を立てようとしてそのまま眠った。



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