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一年生編
舗装道路6
しおりを挟む偶然か必然か。名前に四季を持つ5人は、入学から一月という僅かな間に、既に学年の間では知らぬ者の居ない程に有名になっていた。
先ずは前述したシキ――桜井志貴。
彼は端正で柔らかな顔立ちをしているので女性からの人気が高いのだが、その人当たりの良さとノリの良さで男性からの人望も厚い。所謂「人気者」に位置している。
通常、異性に人気のある者は同性に嫌われがちなのだが、彼の親しみやすさからか、久保の様にあからさまに騒がれる事もなく、本人にもその自覚が無いため、彼に妬心が向けられる事は殆どない。実に稀有な人だった。
次にハル――春川悠慈。
春という穏やかな季節とは裏腹に、非常に暑苦しい人間だ。
単純明快豪放磊落。兎に角ハルという人間は、頭よりも体が先に動く方で、思考を経由せず、脳と筋肉が直結しているとさえ言われている。
そしてその能力は超人的。陸上部と勝負して世界記録を叩き出しただとか、バスケ部でパスを出して体育館上部の窓を割っただとか、バレー部でアタックを決めて部員の腕の骨を折っただとか、眉唾ものな噂に事欠かない。
少し毛色の変わっているのがナツ――伊川夏輝。
背が低く女の子の様に愛らしい顔立ちをしており、成績は普通、運動能力はやや低め、気弱な性格で常にハルの後ろに隠れている様な、何処にでもいるような平凡な――否、クラスの中でも目立たない部類の人間だ。
正直、ナツがこのグループに属しているというのは意外としか言いようがないのだが、ハルと幼馴染という事もあり、強制的に一纏めにされていた。
最後に、アキとフユ――市崎秋人と加布雪成。
平凡な顔立ちに平凡な能力、クラスに一人は居るであろうお調子者なアキと、イケメンと騒がれている久保より更に美しく、美術品の様に整った顔立ちをしたフユ。
彼等はいつも共にあり、相棒、ツイン等々呼び方は様々だが、常にワンセットで取り扱われ、常にコントの様な言動で日々騒がしくしている。
そしてフユが仲間入りする際、ひと悶着あったとかなかったとか。
彼には名前に季節が入っておらず、名前が「雪」と冬を示す季語であったため、補欠要因のような形で仲間入りを果たそうとしたところ、苗字と名前をくっつけた所、かフユきなりと「冬」が入っている事に気付き、結果無事に仲間入りを果たしたという――心の底からどうでも良い逸話まであった。
そして、春、夏、秋、冬と、それらを総合した呼び方である四季を名に持つシキがリーダーという事らしい。
先ずは同じクラスであるアキとフユが仲良くなり、新入生の親睦キャンプでアキとシキが親しくなり、そして幼馴染であるナツに会いにやってくるハルとシキが意気投合し、結果が今の状態だそうだ。
噂話に全く興味を持たない久保の耳にすらそんな情報が入ってくるほど、彼等は有名だった。
そしてその中の2人、シキとナツと同じクラスになってしまった事により、久保は望まずともその渦中へと引き摺り込まれてしまっているのだ。
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