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8.対戦相手はラスボス?!2回目の観戦 中編
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試合は対戦相手のチーム優勢で進んでいる。
前半は相手チームの猛攻を凌いで0ー0で終わり、後半も相手の勢いは止まらず。
試合終了まで残り5分。
自陣で守備に徹する時間が多く、相手のシュートが何度も飛んでくる。
それでもキーパーのファインセーブもあり、なんとか失点せずここまできていた。
「ああ~~……危ない~~怖い~~……」
私は手を合わせ祈るようにして、独り言の様に呟く。
相手選手のシュートがゴールポストに当たった瞬間、
「ひゃっ」
「あぶなっ」
私と吉川さんともに声をあげる。
私達だけでなく、周りの観戦者たちも同様の声を上げていた。
そのゴールポストに跳ね返ったボールが、味方選手の足元に零れ落ちる。
それをピッチ中央にいた味方の選手にボールを送り、その選手は相手ゴールに向けて一気に走り出した。
相手も他の味方も一気に相手側ピッチに駆け上がる。
ボールを蹴っていた選手がシュートを放つが、相手キーパーのブロックに阻まれた。
キーパーの手に当たったボールは、ゴールラインを割り、味方のコーナーキックとなる。
「残り時間的にこれが最後のチャンスかな~」
「時間の表示も無くなったから……そうかもしれないね」
吉川さんの言葉に、私は時間や選手情報など表示してる大きな電光掲示板に視線を向ける。
試合の経過時間を表示していた部分は、今は非表示となっている。
おそらく、これが最後の攻撃チャンスだろう。
応援ゾーンから「ぶちこめーー!!」「決めろーー!!」という声があちらこちらから上がり、そのあと選手やチームを鼓舞する応援歌――チャントが流れ、そこから会場全体がそのチャントを歌い出し、手拍子が響き渡り、私もチャントに合わせて手拍子を叩く。
選手がコーナーキックからボールを蹴る。
そのボールは弧をえがき、ゴール周辺の敵味方が密集している方へ。
ボールは味方選手の頭に当たる。
選手は頭を振りかぶり、ボールはキーパーの手をすり抜けネットが揺れた。
ゴールが決まる。
「……っ!!!!」
私は息をのみ、会場に歓声が沸き起こる。
「やっ……たーー!!!!!」
席から立ち上がり、両手を上げてガッツポーズをする。
同じく立ち上がった吉川さんの方を見て、両手でハイタッチをする。
「吉川さん……!」
「やったね……!」
満面の笑みで吉川さんも私に合わせてハイタッチしてくれた。
試合終了を告げる「ピーーーー」という長いホイッスルがスタジアムに鳴り響いた。
その試合終了の合図に更に歓声が上がった。
ピッチ上を見ると、ゴールを決めた選手が味方にもみくちゃにされている姿と、膝から崩れ落ち、落ち込んでいる相手選手の姿があった。
試合も終わり、会場はまだ喜びの雰囲気に包まれていた。
「凄かったね」
「凄かったです……!!」
スタジアムを後にする人々の表情は晴れやかで、私も10年間勝てなかったチームからの初勝利という嬉しさと、今季無敗の相手から勝利をもぎ取ったという嬉しさの2重効果で、私のテンションも上がったままだ。
少し勝利の余韻に浸った後、帰ろうと椅子の上に置いている荷物を手にしていると、
「よう!!恭二!!!!」
吉川さんの名前を呼びながら、彼の背中を思いっきり叩いてきた男性が現れた。
「ぐっ……!」
吉川さんはぐっと声を堪えて、後ろを振り返り彼の名を言った。
「翔か……」
翔と呼ばれた男性は吉川さんと同じくらいの年齢だと思うが…爽やかな吉川さんに対し、彼の見た目はチャラい。
髪色はシルバーアッシュで、前髪をセンターに分けて緩くパーマをかけている。
耳に複数のピアスをつけており、チャラいという言葉しか思いつかない。
けれど、チームのユニフォームを着ており、この人が例のコアサポな吉川さんのお友達だろうかと思った。
彼も今日の試合結果に、私達同様テンションが高かった。
「やべー試合だったろ!!」
「ああ、凄かったよ」
彼の言葉に吉川さんも同意する。
「だろだろ――!!祝、移籍初ゴールに開幕戦から無敗のチーム相手に勝利!それになんと言っても10年勝てなかったチームに、初めて勝てたんだから最高だよーー!!」
そう言って、再び吉川さんの背中をバシバシと叩く。
「翔…そんなに叩くな」
迷惑そうに眉を潜めながら吉川さんは注意する。
彼は叩くのをやめると、私の存在に気づいたようで、
「ん……あ、恭二と一緒に見るって人、女の子だったのかよーー!」
ズイッと私の前に近づいてきた。
「はじめましてー!楠木翔っていいますー!」
彼……楠木さんは明るく元気に挨拶をしてくれたが、私はその勢いにおされる。
「はっ、はじめまして、高藤弥生です……」
「弥生ちゃんね!よろしくー!」
「……翔」
吉川さんは楠木さんの肩を掴み、グイっと後ろに引き、私と楠木さんの距離をとってくれた。
楠木さんは、ヘラッとした笑みを浮かべ、軽い感じで吉川さんに謝った。
「わりぃわりぃ!2人はこの後どうするんだ?」
「帰るだけだが……」
「あれ?バス待ちしねーの?」
「バス待ち?」
吉川さんは首を傾げるが、私も何のことか分からず、同様に首を傾げる。
「今日の試合に出てた選手が、バスの前でサインとか、一緒に写真とかしてくれるぜ」
楠木さんの説明に、私はやっといつも疑問に思っていたことが解消された。
「あぁ……。あの人だかりが……」
グッズ売り場の隣に選手が乗ってきたバスが停車しているのだけど、試合終了後、そこに人だかりがあって、いつもあれは何の人だかりなのか疑問に思っていたのだ。
バスの乗車時間の関係もあって、それを見に行っていたら間に合わないからと、いつもスルーしていたけれど、あれがそうなのか。
「高藤さん行ったことは?」
「いつもバスの乗車時間の関係で行ったことないです」
「じゃあ、行ってみる?」
吉川さんの誘いに私は即頷いた。
「せっかくの機会なので、行ってみたいです!」
「じゃあ、俺がついていってやるよ!並んどきゃしてくれるとは思うけど、今日は人多いだろうしな~」
「お願いします」
私もバス待ちの仕方とか、どう選手に話しかけてサインとか貰ったらいいのか分からないから楠木さんが一緒なのは助かる。
「じゃあ、行くぞー!」
私達は楠木さんと一緒にスタジアムを出た。
前半は相手チームの猛攻を凌いで0ー0で終わり、後半も相手の勢いは止まらず。
試合終了まで残り5分。
自陣で守備に徹する時間が多く、相手のシュートが何度も飛んでくる。
それでもキーパーのファインセーブもあり、なんとか失点せずここまできていた。
「ああ~~……危ない~~怖い~~……」
私は手を合わせ祈るようにして、独り言の様に呟く。
相手選手のシュートがゴールポストに当たった瞬間、
「ひゃっ」
「あぶなっ」
私と吉川さんともに声をあげる。
私達だけでなく、周りの観戦者たちも同様の声を上げていた。
そのゴールポストに跳ね返ったボールが、味方選手の足元に零れ落ちる。
それをピッチ中央にいた味方の選手にボールを送り、その選手は相手ゴールに向けて一気に走り出した。
相手も他の味方も一気に相手側ピッチに駆け上がる。
ボールを蹴っていた選手がシュートを放つが、相手キーパーのブロックに阻まれた。
キーパーの手に当たったボールは、ゴールラインを割り、味方のコーナーキックとなる。
「残り時間的にこれが最後のチャンスかな~」
「時間の表示も無くなったから……そうかもしれないね」
吉川さんの言葉に、私は時間や選手情報など表示してる大きな電光掲示板に視線を向ける。
試合の経過時間を表示していた部分は、今は非表示となっている。
おそらく、これが最後の攻撃チャンスだろう。
応援ゾーンから「ぶちこめーー!!」「決めろーー!!」という声があちらこちらから上がり、そのあと選手やチームを鼓舞する応援歌――チャントが流れ、そこから会場全体がそのチャントを歌い出し、手拍子が響き渡り、私もチャントに合わせて手拍子を叩く。
選手がコーナーキックからボールを蹴る。
そのボールは弧をえがき、ゴール周辺の敵味方が密集している方へ。
ボールは味方選手の頭に当たる。
選手は頭を振りかぶり、ボールはキーパーの手をすり抜けネットが揺れた。
ゴールが決まる。
「……っ!!!!」
私は息をのみ、会場に歓声が沸き起こる。
「やっ……たーー!!!!!」
席から立ち上がり、両手を上げてガッツポーズをする。
同じく立ち上がった吉川さんの方を見て、両手でハイタッチをする。
「吉川さん……!」
「やったね……!」
満面の笑みで吉川さんも私に合わせてハイタッチしてくれた。
試合終了を告げる「ピーーーー」という長いホイッスルがスタジアムに鳴り響いた。
その試合終了の合図に更に歓声が上がった。
ピッチ上を見ると、ゴールを決めた選手が味方にもみくちゃにされている姿と、膝から崩れ落ち、落ち込んでいる相手選手の姿があった。
試合も終わり、会場はまだ喜びの雰囲気に包まれていた。
「凄かったね」
「凄かったです……!!」
スタジアムを後にする人々の表情は晴れやかで、私も10年間勝てなかったチームからの初勝利という嬉しさと、今季無敗の相手から勝利をもぎ取ったという嬉しさの2重効果で、私のテンションも上がったままだ。
少し勝利の余韻に浸った後、帰ろうと椅子の上に置いている荷物を手にしていると、
「よう!!恭二!!!!」
吉川さんの名前を呼びながら、彼の背中を思いっきり叩いてきた男性が現れた。
「ぐっ……!」
吉川さんはぐっと声を堪えて、後ろを振り返り彼の名を言った。
「翔か……」
翔と呼ばれた男性は吉川さんと同じくらいの年齢だと思うが…爽やかな吉川さんに対し、彼の見た目はチャラい。
髪色はシルバーアッシュで、前髪をセンターに分けて緩くパーマをかけている。
耳に複数のピアスをつけており、チャラいという言葉しか思いつかない。
けれど、チームのユニフォームを着ており、この人が例のコアサポな吉川さんのお友達だろうかと思った。
彼も今日の試合結果に、私達同様テンションが高かった。
「やべー試合だったろ!!」
「ああ、凄かったよ」
彼の言葉に吉川さんも同意する。
「だろだろ――!!祝、移籍初ゴールに開幕戦から無敗のチーム相手に勝利!それになんと言っても10年勝てなかったチームに、初めて勝てたんだから最高だよーー!!」
そう言って、再び吉川さんの背中をバシバシと叩く。
「翔…そんなに叩くな」
迷惑そうに眉を潜めながら吉川さんは注意する。
彼は叩くのをやめると、私の存在に気づいたようで、
「ん……あ、恭二と一緒に見るって人、女の子だったのかよーー!」
ズイッと私の前に近づいてきた。
「はじめましてー!楠木翔っていいますー!」
彼……楠木さんは明るく元気に挨拶をしてくれたが、私はその勢いにおされる。
「はっ、はじめまして、高藤弥生です……」
「弥生ちゃんね!よろしくー!」
「……翔」
吉川さんは楠木さんの肩を掴み、グイっと後ろに引き、私と楠木さんの距離をとってくれた。
楠木さんは、ヘラッとした笑みを浮かべ、軽い感じで吉川さんに謝った。
「わりぃわりぃ!2人はこの後どうするんだ?」
「帰るだけだが……」
「あれ?バス待ちしねーの?」
「バス待ち?」
吉川さんは首を傾げるが、私も何のことか分からず、同様に首を傾げる。
「今日の試合に出てた選手が、バスの前でサインとか、一緒に写真とかしてくれるぜ」
楠木さんの説明に、私はやっといつも疑問に思っていたことが解消された。
「あぁ……。あの人だかりが……」
グッズ売り場の隣に選手が乗ってきたバスが停車しているのだけど、試合終了後、そこに人だかりがあって、いつもあれは何の人だかりなのか疑問に思っていたのだ。
バスの乗車時間の関係もあって、それを見に行っていたら間に合わないからと、いつもスルーしていたけれど、あれがそうなのか。
「高藤さん行ったことは?」
「いつもバスの乗車時間の関係で行ったことないです」
「じゃあ、行ってみる?」
吉川さんの誘いに私は即頷いた。
「せっかくの機会なので、行ってみたいです!」
「じゃあ、俺がついていってやるよ!並んどきゃしてくれるとは思うけど、今日は人多いだろうしな~」
「お願いします」
私もバス待ちの仕方とか、どう選手に話しかけてサインとか貰ったらいいのか分からないから楠木さんが一緒なのは助かる。
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