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第16話:秘密の痣

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街に戻ったリリーナは、宿屋の寝台に寝かされた。

毒に当てられた手はほぼ治ってきているが、発熱がありアレクシオが心配しアレコレと世話を焼く。


「喉が渇いたでしょう、冷たい水を用意しますね。頭痛はありませんか、熱が上がらないよう冷やしましょう。ああでも体は温めた方がいいですね、いや、毒が回ってしまうか?手だけ布団から出しておきましょうか」

「大丈夫よアレクシオ、すぐ治りそうだし」

「リリー様は頑張りすぎです、無理しすぎです、こんな時くらい大人しく休んでください!食欲はありますか?肉料理を頼んできましょうか?」

「ええお願い大盛りご飯もつけてね」


熱があろうとも食欲が衰えることなどない、真剣な顔で肉料理を求めるリリーナを見て、アレクシオはようやく笑う。


「よかった、いつも通りですね。では用意してきますから、休んでいてくださいね」


そしてマルロに留守番を任せ出て行くアレクシオ。

リリーナは砂だらけの体を綺麗にしたかったので、マルロに退室するよう求めた。


「体を洗いたいので少しの間一人にしてもらえますか」

「わかりました、気分がすぐれなくなったらすぐ呼んでくださいね」


マルロも部屋を出ていき一人になったリリーナは、ゆっくり身を起こし風呂場へ向かう。

服を脱ぐと砂がサラサラと落ちてきた。


「あらら、たくさん持ち込んじゃった」


後で掃除しないと宿屋の人に怒られてしまう。

熱が下がったら自分でやろう、そう考えて湯浴みをした。

毒はほぼ抜けて手荒れも引いているが、浄化の力を使ったことにより胸元に赤いアザが浮かび上がっている。

幼い頃から強く力を使うと出てくるこのアザが、昔は気味が悪くて大嫌いだった。


(あーあ、今回は濃く出ちゃってるなあ。やっぱり解毒って力を使うのね…数人分の治療並みだわ)


中心から両胸にかけて蝶の羽のように広がる赤いアザ。

見慣れて成長した今でもリリーナは嫌いだ。

修道院で他の子から悪魔の呪いだと言われた記憶が蘇る。


(マリーナ母さんは天使の印だって言ってくれてたけど、やっぱり気持ち悪いわよね)


なぜ胸に出るのだろうか。

背中など自分に見えない部分にも出ているのではないかと怯えて泣いた事もある。

神殿なら分かるのでは無いかと思い、聖女に認定されてから神官長に尋ねてみたが初めて聞くと言われてしまった。


(神官長様達も知らないってことは、聖女の印って訳でもない)


もしかしたらと期待したけれど違った、八方塞がりだ。


(一生これと付き合っていかないといけないんだろうなー…別に害はないんだろうけどさ)


アザが出ている間苦しいということもなく、ただ力を多く使うと現れて精神的に嫌だというだけ。

それでもリリーナは自分の体を好きになれなかった。
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