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第12話:拳闘士聖女、狩人始めます
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トンカーンに着いたリリーナ達は、街に入ってすぐ買取業者を見つけることができた。
最初に入った店は鉱石の買取専門店だったのだが、魔物肉を扱っている店を紹介してくれたのだ。
「こんなに傷の少ない肉は初めてだよ、毛皮の加工を試したいって言ってる奴がいるから喜ぶはずだ!」
一撃必殺、リリーナの拳一発で仕留められたウサギ魔物は上質だったらしく喜ばれ、良い値段で売れた。
「うふふ、こんなにお金になるなら魔物専門の狩人になろうかしら」
肩書きを増やそうとするリリーナの呟きを聞き逃さなかったアレクシオ。
「リリー様…本気ですか」
国王すら頭を下げに来るほどの地位である聖女になったというのに、なぜ彼女が外で活動しようとするのか理解できない。
「あら、長旅にお金は必要よ?神殿から貰ったとはいえ、三人旅ならすぐ無くなるわ」
稼ぐ方法があるに越したことはないのだ。
当たり前だと言わんばかりのリリーナに、マルロが頷き同意を示す。
猟師を親に持つ彼には理解できる話のようだ。
「さ、お腹も空きましたし腹ごしらえをしましょう」
肉の買取店の隣には食堂があった。
きっと良い肉料理が食べられるに違いない、そう期待して入店したリリーナは料理の安さに目を輝かせる。
「まあ。随分お手軽価格」
「仕入業者が経営しているからのようですね」
品数は多くないが、珍しい食材や安さに惹かれた客で店内は賑わっていた。
リリーナも早速魔物肉の揚げ物を注文する。
アレクシオは普通の牛肉ステーキ、マルロは魔物肉のサイコロステーキを選んだ。
料理が来るまでの間、リリーナはマルロに魔物肉について質問する。
「取扱方法は普通の肉と同じなのですか?」
「種類にもよります、蛇型などは毒を持つ場合もありますので」
毒抜きが必要なもの、臭みが強いもの、硬くてそのまま食べることに向かないものなど。
野生動物より更に癖が強いと言う以外は同じだとマルロは言うが、そもそも魔物を倒さなければならないという大前提がある。
だから出回る量も少ないのだなとリリーナは納得した。
「魔物の出現率はその年によってまちまちだったり、家畜化がほぼ不可能であったり。食肉加工は可能でも、食材としてアテにするのは現実的ではありません」
「そうよね、わざわざ野生動物よりも危険な魔物に手を出す必要はないわよね」
魔物肉の流通自体わりと最近で、食糧難の時にたまたま食べた人間が、ものによっては食べられると広めたらしい。
そんな話をしていると、料理が運ばれてきた。
「いただきます」
食前の祈りを捧げてから肉を口に運ぶ。
「…うん、悪くないわ」
教会へ祈りに来る人が少なかった時などに裏庭の草を食べていたリリーナは、肉というだけで美味しく感じられる舌の持ち主。
そして彼女は決意する。
「決めた、魔物肉を狩りましょう」
聖女様は狩人になることを宣言した。
最初に入った店は鉱石の買取専門店だったのだが、魔物肉を扱っている店を紹介してくれたのだ。
「こんなに傷の少ない肉は初めてだよ、毛皮の加工を試したいって言ってる奴がいるから喜ぶはずだ!」
一撃必殺、リリーナの拳一発で仕留められたウサギ魔物は上質だったらしく喜ばれ、良い値段で売れた。
「うふふ、こんなにお金になるなら魔物専門の狩人になろうかしら」
肩書きを増やそうとするリリーナの呟きを聞き逃さなかったアレクシオ。
「リリー様…本気ですか」
国王すら頭を下げに来るほどの地位である聖女になったというのに、なぜ彼女が外で活動しようとするのか理解できない。
「あら、長旅にお金は必要よ?神殿から貰ったとはいえ、三人旅ならすぐ無くなるわ」
稼ぐ方法があるに越したことはないのだ。
当たり前だと言わんばかりのリリーナに、マルロが頷き同意を示す。
猟師を親に持つ彼には理解できる話のようだ。
「さ、お腹も空きましたし腹ごしらえをしましょう」
肉の買取店の隣には食堂があった。
きっと良い肉料理が食べられるに違いない、そう期待して入店したリリーナは料理の安さに目を輝かせる。
「まあ。随分お手軽価格」
「仕入業者が経営しているからのようですね」
品数は多くないが、珍しい食材や安さに惹かれた客で店内は賑わっていた。
リリーナも早速魔物肉の揚げ物を注文する。
アレクシオは普通の牛肉ステーキ、マルロは魔物肉のサイコロステーキを選んだ。
料理が来るまでの間、リリーナはマルロに魔物肉について質問する。
「取扱方法は普通の肉と同じなのですか?」
「種類にもよります、蛇型などは毒を持つ場合もありますので」
毒抜きが必要なもの、臭みが強いもの、硬くてそのまま食べることに向かないものなど。
野生動物より更に癖が強いと言う以外は同じだとマルロは言うが、そもそも魔物を倒さなければならないという大前提がある。
だから出回る量も少ないのだなとリリーナは納得した。
「魔物の出現率はその年によってまちまちだったり、家畜化がほぼ不可能であったり。食肉加工は可能でも、食材としてアテにするのは現実的ではありません」
「そうよね、わざわざ野生動物よりも危険な魔物に手を出す必要はないわよね」
魔物肉の流通自体わりと最近で、食糧難の時にたまたま食べた人間が、ものによっては食べられると広めたらしい。
そんな話をしていると、料理が運ばれてきた。
「いただきます」
食前の祈りを捧げてから肉を口に運ぶ。
「…うん、悪くないわ」
教会へ祈りに来る人が少なかった時などに裏庭の草を食べていたリリーナは、肉というだけで美味しく感じられる舌の持ち主。
そして彼女は決意する。
「決めた、魔物肉を狩りましょう」
聖女様は狩人になることを宣言した。
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