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第11話:お忍びの旅は危険がいっぱい?
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聖女であることが知られれば大騒ぎになる、ということで外では聖女を名乗れない。
リリーナはアレクシオとマルロに「リリー」と呼ぶように頼んだ。
「せ…リリー様、本当に旅をなさるおつもりですか?」
真面目なアレクシオは神殿を出てから何度も同じ質問をしてくる。
マルロはあまり口数が多くないタイプらしく、じっと様子を窺っている。
「神託で拳闘士と告げられたのですから、これもまた神のご意志に違いありません」
きっと神は魔物が活発化した時のことを考えてリリーナに力を授けたのだろう、そういうことにしておこう。
リリーナの言葉にアレクシオは納得がいかないようだったが、マルロは無言で頷いている。
「さあ、ここでのんびりしていると早速野宿になってしまいます。先を急ぎますよ」
リリーナは野宿でも構わないのだが、しかし街で食事もしたい。
神殿近くの街は避け、なるべく離れてから休憩することに。
鉱山の街トンカーンが遠目に確認できるところまできたとき、
クケケケケッ
長い耳を引きずったウサギ型の魔物が三頭現れた。
「うわ!本当に魔物が出た!」
「リリー様、下がっていてください」
アレクシオとマルロはリリーナを庇おうと前に出る。
しかし守られるより守りたい、リリーナは二人を押し退けて魔物に殴りかかった。
「…えー!!??」
「……」
驚く二人を尻目に、一頭二頭と倒して行くリリーナ。
クケケケケーッ
怒った三頭目がリリーナ目掛けて飛び上がった。
さすがウサギ型、かなりのジャンプ力。
「リリー様危ない!」
「あらよっと」
敵の動きをしっかり見定め、リリーナはジャンプ攻撃をサッと避ける。
魔物が着地した瞬間、その脳天に拳を叩き込んで一撃で沈めた。
「…マジか」
「……」
アレクシオとマルロは拳で戦うリリーナの噂を知らなかったため、目の前で何が起きたのか理解が追いつかない。
神託で拳闘士と告げられたのも何かの間違いでは、と思っていたのだ。
「…神の御加護です。さ、参りましょう」
説明を放棄し歩き出そうとするリリーナを、マルロが呼び止めた。
「お待ちください」
「なんでしょう」
「この魔物は食用にできます、トンカーンに持っていけば売れますよ」
筋肉質で硬いため、煮込んでシチューにするか乾燥させて保存食にするらしい。
手慣れた様子で血抜きをし袋に入れるマルロ。
「慣れているのですね」
「父が猟師なのです」
なるほど、とリリーナは納得した。
彼の知識は役に立ちそうだ。
(魔物って食べられるのね…勿体ないことしたわ)
知らなかったリリーナは、いままで倒すことしかしていなかった。
知っていれば野宿のお供にしたのに。
肉への禁断症状が出た時などを思い出し、お腹が鳴りそうになるリリーナであった。
リリーナはアレクシオとマルロに「リリー」と呼ぶように頼んだ。
「せ…リリー様、本当に旅をなさるおつもりですか?」
真面目なアレクシオは神殿を出てから何度も同じ質問をしてくる。
マルロはあまり口数が多くないタイプらしく、じっと様子を窺っている。
「神託で拳闘士と告げられたのですから、これもまた神のご意志に違いありません」
きっと神は魔物が活発化した時のことを考えてリリーナに力を授けたのだろう、そういうことにしておこう。
リリーナの言葉にアレクシオは納得がいかないようだったが、マルロは無言で頷いている。
「さあ、ここでのんびりしていると早速野宿になってしまいます。先を急ぎますよ」
リリーナは野宿でも構わないのだが、しかし街で食事もしたい。
神殿近くの街は避け、なるべく離れてから休憩することに。
鉱山の街トンカーンが遠目に確認できるところまできたとき、
クケケケケッ
長い耳を引きずったウサギ型の魔物が三頭現れた。
「うわ!本当に魔物が出た!」
「リリー様、下がっていてください」
アレクシオとマルロはリリーナを庇おうと前に出る。
しかし守られるより守りたい、リリーナは二人を押し退けて魔物に殴りかかった。
「…えー!!??」
「……」
驚く二人を尻目に、一頭二頭と倒して行くリリーナ。
クケケケケーッ
怒った三頭目がリリーナ目掛けて飛び上がった。
さすがウサギ型、かなりのジャンプ力。
「リリー様危ない!」
「あらよっと」
敵の動きをしっかり見定め、リリーナはジャンプ攻撃をサッと避ける。
魔物が着地した瞬間、その脳天に拳を叩き込んで一撃で沈めた。
「…マジか」
「……」
アレクシオとマルロは拳で戦うリリーナの噂を知らなかったため、目の前で何が起きたのか理解が追いつかない。
神託で拳闘士と告げられたのも何かの間違いでは、と思っていたのだ。
「…神の御加護です。さ、参りましょう」
説明を放棄し歩き出そうとするリリーナを、マルロが呼び止めた。
「お待ちください」
「なんでしょう」
「この魔物は食用にできます、トンカーンに持っていけば売れますよ」
筋肉質で硬いため、煮込んでシチューにするか乾燥させて保存食にするらしい。
手慣れた様子で血抜きをし袋に入れるマルロ。
「慣れているのですね」
「父が猟師なのです」
なるほど、とリリーナは納得した。
彼の知識は役に立ちそうだ。
(魔物って食べられるのね…勿体ないことしたわ)
知らなかったリリーナは、いままで倒すことしかしていなかった。
知っていれば野宿のお供にしたのに。
肉への禁断症状が出た時などを思い出し、お腹が鳴りそうになるリリーナであった。
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