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第6章〜過去〜
第71話
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我に帰ったジェイは、血塗れのヴィンを見て表情を険しくする。
「え、なんで船長血がついてるの?誰かにやられたの?」
記憶が飛んでいるらしく、自分から移ったのだと理解していない。
殺さなきゃ!と周囲を見渡したジェイは、立っているのが仲間だけだということに気づいた。
「あれ?」
そして頭から被った返り血が流れて目に入りそうになり、慌てて手で擦る。
その手も血に染まっているのを見て、ようやく自分が暴走したことを自覚した。
「あ…もしかしなくても、僕やっちゃった?」
テヘッと笑う彼に苦笑しながら、ヴィンは頭を撫でてやる。
「よくやった、お陰で仲間は無事だよ」
ジェイは殺し屋になるために生み出された存在だった。
生まれた時からそう決められており、初めて人を殺したのは2歳の時。
同じ頃に生まれた者達を殺すことで、生きることを許された。
その繰り返しで生きてきた彼は、ヴィンに出会うまで人間ではなく人形だったのだ。
一方のジェニファーは、目の前の惨劇に顔を上げたが力なく座り込んだまま。
自分を守る兵が一人残らず殺されても何も感じていないようだった。
「妾は…世界の女王となるのだ…」
彼女の野望は消えていない。
女尊男卑の国に生まれその精神を教え込まれて育った彼女は、若い頃から世界を制したいという野望に取り憑かれていた。
美しさに寄ってくる他国の男など眼中に無かったし気持ち悪かったけれど、踏み台になるならばと外交に力を入れていた時期もある。
子供を授かったのはその頃だった…たった一度の逢瀬。
それ自体後悔していた彼女は、妊娠に気づいた時すでに五ヶ月を迎えており焦った。
無理が祟って体調を崩していると思い込み、医師の診察を拒み。
全てが手遅れだったのだと頭を抱えている間に子供が産まれてしまった。
どうしたらいいか分からず、しかし殺す事ができなくて。
誕生日にだけ顔を出していたら、ある時怒ったような顔で子供達に言われてしまったのだ。
『おかあさまはリリーだよ!あなたはこわいひと!』
目の前が赤く染まった。
それは怒りによるものなのか、リリーの血によるものなのか今でも分からないけれど。
あの日のことはきっと一生忘れないだろう…泣き叫ぶ我が子達の声も。
腹を痛めて産んだのは自分なのに、少しも懐かない子供達。
年に一度会いに行ってやったのに、一度も笑顔を見た事が無かった。
なぜ?あなたたちの母は、このわたくしよ…
「え、なんで船長血がついてるの?誰かにやられたの?」
記憶が飛んでいるらしく、自分から移ったのだと理解していない。
殺さなきゃ!と周囲を見渡したジェイは、立っているのが仲間だけだということに気づいた。
「あれ?」
そして頭から被った返り血が流れて目に入りそうになり、慌てて手で擦る。
その手も血に染まっているのを見て、ようやく自分が暴走したことを自覚した。
「あ…もしかしなくても、僕やっちゃった?」
テヘッと笑う彼に苦笑しながら、ヴィンは頭を撫でてやる。
「よくやった、お陰で仲間は無事だよ」
ジェイは殺し屋になるために生み出された存在だった。
生まれた時からそう決められており、初めて人を殺したのは2歳の時。
同じ頃に生まれた者達を殺すことで、生きることを許された。
その繰り返しで生きてきた彼は、ヴィンに出会うまで人間ではなく人形だったのだ。
一方のジェニファーは、目の前の惨劇に顔を上げたが力なく座り込んだまま。
自分を守る兵が一人残らず殺されても何も感じていないようだった。
「妾は…世界の女王となるのだ…」
彼女の野望は消えていない。
女尊男卑の国に生まれその精神を教え込まれて育った彼女は、若い頃から世界を制したいという野望に取り憑かれていた。
美しさに寄ってくる他国の男など眼中に無かったし気持ち悪かったけれど、踏み台になるならばと外交に力を入れていた時期もある。
子供を授かったのはその頃だった…たった一度の逢瀬。
それ自体後悔していた彼女は、妊娠に気づいた時すでに五ヶ月を迎えており焦った。
無理が祟って体調を崩していると思い込み、医師の診察を拒み。
全てが手遅れだったのだと頭を抱えている間に子供が産まれてしまった。
どうしたらいいか分からず、しかし殺す事ができなくて。
誕生日にだけ顔を出していたら、ある時怒ったような顔で子供達に言われてしまったのだ。
『おかあさまはリリーだよ!あなたはこわいひと!』
目の前が赤く染まった。
それは怒りによるものなのか、リリーの血によるものなのか今でも分からないけれど。
あの日のことはきっと一生忘れないだろう…泣き叫ぶ我が子達の声も。
腹を痛めて産んだのは自分なのに、少しも懐かない子供達。
年に一度会いに行ってやったのに、一度も笑顔を見た事が無かった。
なぜ?あなたたちの母は、このわたくしよ…
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