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第52話:王子の婚約者
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「今日は私を祝うために集まってくれてありがとう」
アルベール王子の挨拶が行われ、人々が拍手を送る。
そしてその場で更に発表されたのは、王子とアレクシア嬢の婚姻が結ばれるというめでたい報告であった。
「まだ若い。そう思う者もいるだろう。しかし私は変わらぬ愛をアレクシアに注ぎ、そしてこの国を支え続ける事をこの場で誓う」
胸を張るアルベールに続き、国王も口を開く。
「まだまだ私も現役でいるつもりだが、優秀な世継ぎに恵まれ誇らしい限りだ」
国王夫妻は婚姻から五年間子供に恵まれず、王妃マリアンヌに問題があるのではないかと責められていたらしい。
そんな日々が嘘のように、アルベールを授かってから二年後にアルティーナ王女も生まれ、その三年後にはイルシオン王子も生まれた。
イルシオン王子は現在隣国へ留学中のため、今日の誕生会には出られなかったようだ。
国王と王子の挨拶が終わり、ジークハルトはシズリアの手を取り王子へ祝いの言葉を伝えに向かう。
「ランカスター公爵、そして夫人。来てくれてありがとう」
「本日はおめでとうございますアルベール殿下。そしてアレクシア嬢」
「其方が妻を娶ったと聞いてからずっと、早く続きたいと思っていたのだよ。今日この日がどれほど待ち遠しかったことか」
「そうでしたか、私共が急かしてしまいましたか?」
肩をすくめて冗談めかすジークハルト。
アルベールは笑いながら手を差し出し、二人は硬い握手を交わす。
「貴方を兄の様に慕い追い続けてきたのです、ようやく同じ舞台に立てると思ったのに。もうじき産まれるのだろう?また先を行かれてしまうな」
「俺は遅いくらいだと言われてきたからな、それくらい許してくれ」
父ディルクが公爵だった頃、ジークハルトは何度も父に連れられて城へ来ていた。
幼かったアルベールにとって、若い頃から魔物討伐などを行っていたジークハルトは憧れの存在。
力強い兄のようで、いつもその背中を追っていたらしい。
男二人が親しく会話している横で、シズリアはアレクシアに話しかけられた。
「初めまして、シズリア夫人」
「お初にお目にかかります、アレクシア様」
「ねえ、もうすぐ出産なのよね?少しだけ触っても良いかしら、あやかりたいわ」
「勿論ですわ」
アルベールより一つ年下だというアレクシアは、目を輝かせてシズリアの腹に手を添える。
「…まあ!今、動きました?」
「はい、アレクシア様に触れて頂けて喜んでいるようですわ」
「凄い…お母さんになるってこういう感じなのね」
「とても不思議な感覚です」
アレクシアはまだ19歳と若い。
胎動に驚きつつも感動した様子で両手を合わせて笑う姿は可愛らしく、国王夫妻も微笑ましい目で見つめていた。
「シズリア夫人。貴女のことは両陛下から聞いているわ。いつかお話ししたいと思っていたの、出産を終えて落ち着いてからでも是非お茶をしましょう」
「両陛下から?お誘いいただきありがとうございます、身に余る光栄ですわ」
何故かは分からないが、妙に気に掛けてくれているらしい。
不思議がるシズリアに、国王夫妻は笑顔で頷くだけだった。
アルベール王子の挨拶が行われ、人々が拍手を送る。
そしてその場で更に発表されたのは、王子とアレクシア嬢の婚姻が結ばれるというめでたい報告であった。
「まだ若い。そう思う者もいるだろう。しかし私は変わらぬ愛をアレクシアに注ぎ、そしてこの国を支え続ける事をこの場で誓う」
胸を張るアルベールに続き、国王も口を開く。
「まだまだ私も現役でいるつもりだが、優秀な世継ぎに恵まれ誇らしい限りだ」
国王夫妻は婚姻から五年間子供に恵まれず、王妃マリアンヌに問題があるのではないかと責められていたらしい。
そんな日々が嘘のように、アルベールを授かってから二年後にアルティーナ王女も生まれ、その三年後にはイルシオン王子も生まれた。
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「ランカスター公爵、そして夫人。来てくれてありがとう」
「本日はおめでとうございますアルベール殿下。そしてアレクシア嬢」
「其方が妻を娶ったと聞いてからずっと、早く続きたいと思っていたのだよ。今日この日がどれほど待ち遠しかったことか」
「そうでしたか、私共が急かしてしまいましたか?」
肩をすくめて冗談めかすジークハルト。
アルベールは笑いながら手を差し出し、二人は硬い握手を交わす。
「貴方を兄の様に慕い追い続けてきたのです、ようやく同じ舞台に立てると思ったのに。もうじき産まれるのだろう?また先を行かれてしまうな」
「俺は遅いくらいだと言われてきたからな、それくらい許してくれ」
父ディルクが公爵だった頃、ジークハルトは何度も父に連れられて城へ来ていた。
幼かったアルベールにとって、若い頃から魔物討伐などを行っていたジークハルトは憧れの存在。
力強い兄のようで、いつもその背中を追っていたらしい。
男二人が親しく会話している横で、シズリアはアレクシアに話しかけられた。
「初めまして、シズリア夫人」
「お初にお目にかかります、アレクシア様」
「ねえ、もうすぐ出産なのよね?少しだけ触っても良いかしら、あやかりたいわ」
「勿論ですわ」
アルベールより一つ年下だというアレクシアは、目を輝かせてシズリアの腹に手を添える。
「…まあ!今、動きました?」
「はい、アレクシア様に触れて頂けて喜んでいるようですわ」
「凄い…お母さんになるってこういう感じなのね」
「とても不思議な感覚です」
アレクシアはまだ19歳と若い。
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「シズリア夫人。貴女のことは両陛下から聞いているわ。いつかお話ししたいと思っていたの、出産を終えて落ち着いてからでも是非お茶をしましょう」
「両陛下から?お誘いいただきありがとうございます、身に余る光栄ですわ」
何故かは分からないが、妙に気に掛けてくれているらしい。
不思議がるシズリアに、国王夫妻は笑顔で頷くだけだった。
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