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第41話:異変?

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「シズリアの様子がおかしい?」


久しぶりにキリアが執務室へ来たから何事かと身構えたジークハルトは、シズリアが独り言を言ったりお金を数えていたりすると聞き首を傾げた。


「きっと悪阻つわりがお辛いんです、どんなに愛し合っている夫婦でも辛い時は辛いというのに。仕事で妊娠してくださったのですから、もっと労って差し上げてください!」


労ろうにも、常にシズリアの側で睨みを効かせているのはキリアなのだが。

そうは思っても口に出せば火に油を注ぐだけだと分かっているため、ジークハルトは真面目な顔で頷くに留める。


「そうだな、精神的にも肉体的にも辛いに違いない。俺からもさりげなく話を聞いてみることにする」


話し合うと約束し、納得したキリアは執務室を出て行った。


「…ふー…」


ジークハルトは椅子に深く腰掛け息を吐く。


「奥様、心配ですね」


声を掛けてきたのはクラウス、優秀な執事である彼も全ての事情を知る一人。

キリアがシズリア派だとしたらクラウスはジークハルト派、あるじであるジークハルトに絶対の忠誠を誓いつつも口出しもできる人物だ。


「金を数える、か…それは趣味というか楽しみの一つだと聞いているのだがな」


シズリアがうっとりと紙幣に頬擦りしている姿はジークハルトも見たことがあり、初めて見た時は引いたものだ。


「あれは確かに不気味だが、それくらいでは異常行動とは言えない…と思ってしまう時点で俺もおかしいのか?」

「すっかり奥様に毒されて…いえ、失礼いたしました。ご理解のある素晴らしい旦那様になられましたね」


笑顔のクラウスをチラリと睨みつけ、ジークハルトは考え込む。


「シズリアは我慢し過ぎるからな、気をつけてやらないといけないのは間違いない。キリアが過保護すぎるだけなら良いが、思い詰めているなら何か策を練ってやらねば」


契約婚だからと一定の距離を保ってきたジークハルトだが、彼なりにシズリアを気にかけてきた事をクラウスは知っている。


(キリアは奥様を案ずるあまりに盲目になっている部分があるようだが、その点ではジークハルト様のほうが理解してらっしゃるかもしれないな)


金を愛でるシズリアを初めて見て部屋に戻ってきた時のジークハルトの顔と、先程のキリアの表情は似ていた。

クラウスは思い出しながら密かに笑いを噛み殺し、シズリアのために悩んでいるジークハルトを見守る。


「買い物に連れ出す…いや、寒いしそもそも物欲があまり無いから喜ばないか。音楽隊でも呼んでみるか…?動物はどうだろうか、馬を気にしているとツェーザルが言っていたな」


ブツブツ呟くジークハルト、書類整理の途中だったのだが完全に手が止まっている。

後で処理しておいてやろう、残業を決意するクラウスであった。
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