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第25話:パレードから見えるもの
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城を出たリューファは、パレード用の馬車に乗り込む。
その馬車は屋根のない作りで、沿道からその姿がよく見えるようになっている。
リューファだけが乗り、護衛たちは距離を保ち歩いてついていくのが毎年恒例だ。
風などで髪が乱れたときのことを考え、ミーナだけが後ろの馬に乗って同行することになった。
ちなみにミーナは、リューファの乗馬訓練に付き合い続けているので一人で馬に乗れる。
「姫様ー!おめでとうございます!」
沿道の人々は姿を見せたリューファに歓声を送り、ゆっくり進む馬車を笑顔で迎えた。
リューファは大きく手を振って応じながら、
(ありがとう、みんな…大好き!)
大切な国民の幸せと平和を願う。
毎年こうして歓迎して祝ってくれる彼らのことが愛おしくてたまらないのだ。
(私は幸せ者ね。みんなに想って貰えて)
普段から街の人々と交流しているリューファは、国民からの支持を肌で感じている。
不満や要望に耳を傾けるのは、家族や友人の相談に乗るのと同じ感覚。
それを当たり前のように、城下町全ての人々に向けているリューファ。
その姿を見てきた城下町の住人から他の街へと評判が広がっていき、今では国中から愛されていると言える。
愛され度だけで言うなら国王すら超えていた。
「みんな、ありがとうー!」
声援に応えるために立ち上がり、声を張り上げて礼を言うリューファ。
城門から街の外れまで行き、そして戻るまでの間沿道の人々の人数が減ることはなかった。
「お帰りなさいませ」
何時間もかけて城へ戻ったリューファは、国賓との謁見のために急いで着替える。
「疲れたー、休みたいわ…」
ミーナが髪を整え直している間に、他の侍女らが手慣れた様子でリューファの手足にマッサージを施す。
椅子に腰掛けされるがままのリューファの口にお菓子が放り込まれた。
「んんんん、んーん(ありがと、ミーナ)」
「喉に詰まらせないでくださいませね、もう少しで終わりますから」
ルードヴィッヒをイメージして使ってもらった頭飾りを外し、国宝のティアラを頭に乗せる。
「重たいー」
年に数回しか着用しないこのティアラが、重たくて好きではないリューファ。
不満げに口を尖らせる彼女に苦笑しながら、ミーナが再びお菓子を差し出した。
「この後の謁見と夜会での懇談会が終わるまでの辛抱ですよ」
「それが長いんじゃないの。パレードはみんなの顔が見られるから楽しいけれど、お偉いさん方との懇談会なんて堅苦しいだけだわ」
重要な花婿探しの場、そう思っている者も多い。
心に決めた相手がいるリューファにとっては苦痛でしかないのだ。
その馬車は屋根のない作りで、沿道からその姿がよく見えるようになっている。
リューファだけが乗り、護衛たちは距離を保ち歩いてついていくのが毎年恒例だ。
風などで髪が乱れたときのことを考え、ミーナだけが後ろの馬に乗って同行することになった。
ちなみにミーナは、リューファの乗馬訓練に付き合い続けているので一人で馬に乗れる。
「姫様ー!おめでとうございます!」
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(ありがとう、みんな…大好き!)
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それを当たり前のように、城下町全ての人々に向けているリューファ。
その姿を見てきた城下町の住人から他の街へと評判が広がっていき、今では国中から愛されていると言える。
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「みんな、ありがとうー!」
声援に応えるために立ち上がり、声を張り上げて礼を言うリューファ。
城門から街の外れまで行き、そして戻るまでの間沿道の人々の人数が減ることはなかった。
「お帰りなさいませ」
何時間もかけて城へ戻ったリューファは、国賓との謁見のために急いで着替える。
「疲れたー、休みたいわ…」
ミーナが髪を整え直している間に、他の侍女らが手慣れた様子でリューファの手足にマッサージを施す。
椅子に腰掛けされるがままのリューファの口にお菓子が放り込まれた。
「んんんん、んーん(ありがと、ミーナ)」
「喉に詰まらせないでくださいませね、もう少しで終わりますから」
ルードヴィッヒをイメージして使ってもらった頭飾りを外し、国宝のティアラを頭に乗せる。
「重たいー」
年に数回しか着用しないこのティアラが、重たくて好きではないリューファ。
不満げに口を尖らせる彼女に苦笑しながら、ミーナが再びお菓子を差し出した。
「この後の謁見と夜会での懇談会が終わるまでの辛抱ですよ」
「それが長いんじゃないの。パレードはみんなの顔が見られるから楽しいけれど、お偉いさん方との懇談会なんて堅苦しいだけだわ」
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心に決めた相手がいるリューファにとっては苦痛でしかないのだ。
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