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第14章 そして神になった

【怪盗スペルチ団1】

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<<マサル視点>>

「ジオン様、今日も講義お願いいたします。」

「おいおいマサル君、そろそろ様付けは止めてくれないかね。

背中がむず痒くていかん。」

「しかしジオン様、「ほらまた。」」

「マサルさん、ジオンさんでいいじゃない。
ほらジ、オ、ンさん。」

「しかしユウコさん。」

「しかしもへったくれもないの!
ジ、オ、ンさん。」

「分かったよ。ではこれからジオンさんって呼ばせてもらいますね、ジオンさん。」

「うむ、そちらの方がしっくりくるな。

では今日の講義を始めようか。」

「「よろしくお願いいたします。」」

俺とユウコさんは新しく調査室に入られたジオンさんから次元について学んでいる。

地球で言う4次元、つまり縦橫高さを持つ立体空間に時間が加わった世界。

まあ時間の代わりになるものもあるみたいだが、俺には理解出来ていない。

こちらの世界では、そもそも縦橫高さと言う概念が曖昧である。

物質の形や硬度が自在に変わったりするのだ。

それに時間が加わると、消えたり、現れたり、瞬間移動したりとなる。

俺達が物を空間上で動かすのと同じように、こちらの世界では物の形を自在に変えたり、瞬間移動させたり出来るのだ。

その上、時間軸が無数に存在し、その全てに自在に移動可能なのだ。

だから、俺達地球人の考える次元とこちらで言う次元は全く違うものである。

ではこちらで言う次元とは何かというと、これがまた難しい。

まあ、簡単にいうと時間の流れになるんだが、時間の流れは無数にある上に、様々な方向を向いている。

交差する場合もあれば、途中で合流してまた別れることもある。

しかもその方向は一定ではなくいつ変わるか分からない。

だから、迂闊にこの世界に入ると何百年も先に行ったり、全く違う場所に瞬間移動していたりしてしまうのだ。

でもこちらの世界の人達はこれを当たり前のように使いこなしている。

俺達にとって生まれた時から地球の3次元が当たり前のようにね。


ちなみにこの時間の流れはどういうわけか、過去には遡らないみたいだ。

俺達の固定概念では時間の方向が反対向けば過去に行きそうなものだが、そもそも縦橫高さが曖昧なこの世界では方向に何の意味も無いみたいだ。



「だからね、次元とは君達のいうところの時間軸にあたる。

ただ、アースを始めとするわたし達が創った世界には時間軸がひとつしか無い。

まあ、ひとつの方が管理し易いから必然的にそうしたんだけどね。

だが裏を返せばわたし達が創った世界以外には、ここと同じように複数の時間軸がある可能性が高いということだな。」

「とすると、次元の狭間にも複数の時間軸があるということですか?」

「そうだね、まだ次元の狭間についての研究は途中だから、はっきりとは言えないが、可能性は高いね。」

「それなら、時間軸の端通しが繋がって輪になることもあり得ますか?」

「あり得るね。ただ、我々の技術レベルでは完全にループさせることは難しいんだけどね。

時間軸はしっかりと固定しておかないと流動性が高いんだ。

一直線に作るだけなら固定も難しくはないんだが、途中で繋ぐとなると繋ぎ目がどうしても不安定になってしまうのだよ。

繋ぎ目から流入出する何らかの作用が少しずつ時間軸に変化をもたらすことになるだろうな。」

「そうよマサルさん!
この前弥生ちゃん達がいた世界。たしかにあの世界は時間がループしていたわ。

弥生ちゃんの僅かに残っていた記憶やあなたの存在が時間軸のループに作用して、完全なループにならなかったのね。」

「でも中にいた俺達はそのことに違和感を感じながらも全く気付けなかった。
たまたまユウコさんが見ていてくれたから良かったものの、あのままだと俺もあの世界に閉じ込められていた...うん?閉じ込められていた?

ジオンさん、あの時ユウコさんに気付かされた俺達は何者かに攻撃を受けました。
もしかして、その何者かがあの世界の時間軸を繋いだんじゃ。

いやあの世界自体を創り、次元を交差させて次元の狭間に落ちるように仕向けた可能性もあるのではないでしょうか。」

俺は思いついた可能性についてジオンさんにぶつけてみた。

ユウコさんもうんうん頷いている。

「マサル君、さすがだな。恐らく君の言う通りだろう。

わたしも次元について長年研究しているんだが、まだまだ未知の部分が多い。
ただ理論的には君の言ってることは可能だし、実際に実験では成功しているだよ。

もしその世界が不安定でいつ壊れても良いということが前提であればね。」

ジオンさんの端正な顔が少し歪んだ。

この世界は創られた異世界に住む生命体から集めた生命エネルギーを糧として成り立っている。

異世界管理局は”異世界という農場”を作って”生命エネルギーを収穫”している農業法人のようなものであり、その収穫された生命エネルギーはこの世界の重要な食料資源となっているのだ。

当然、そのエネルギーを強奪しようとする輩もいるが、その辺りは異世界管理局の公安課や監査部が目を光らせて阻止しているのだろう。

だが、公安課や監査部の知らないところで今回のような”使い捨ての世界”が作られているとしたら。

そのために異世界の住人が犠牲になっているとしたら。

「マサルさん?」

その時の俺の顔は怒りで歪んでいただろう。


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