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第14章 そして神になった

【次元の狭間1】

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<<アキラ視点>>

ここはいったいどこなんだろうか?

真っ暗な何も見えない世界。

身体中の痛みも無くなり、身体が浮いているみたいに軽い。

長期のベッド生活ですっかり衰えた筋肉は自分を支えることすら出来なかったのに、ここならどんな体勢でもとれそうだな。





俺は死んだはずだ。
彼女はたしかにそう言った。

朦朧とする意識が徐々に無くなっていく中で突然現れた彼女は俺に新しい生を与えてくれると言った。

小さい頃に不治の病と診断され、もうすぐ成人を迎える時になるまで入院生活を余儀なくされていた俺にとって、健康な身体で新しい人生を送れるなんて願ってもないことだ。

彼女が手招きする方へ進んでいた時、突然目の前が真っ暗になってここにいたのだ。

呼び掛けても彼女は答えない。

いや闇が俺の声を飲み込んで声になっていないのかも。





そして俺はここにいる。
この暗闇の世界。意識はある。手足の感覚は…わからない。
掴む物も無ければ踏む床も大地も無い。

自分で触ってみてもわかるような、わからないような。

重さも……わからない。

身体は浮いているようだし、重さを感じる物が何も無いから。

時間は…わからない。

時計も無いし、日の光も無ければそんなものだろう。

腹も減らなければ、オムツを替えてもらうことも無いから、病室で退屈が当たり前だった俺には時間なんてどうでもいい。

だが、新しい生を得られると期待した俺にはこんな生死を感じられない場所に居るのは堪えられないことなんだ。



<<異世界管理局運営課ミリヤ視点>>

久しぶりに当たった召喚ビンゴでアースの日本人をゲットしたわ。

ヒロコに続いて2人目よ。

ヒロコも最初はどうしようも無かったけど、マサルさんのセミナーに参加させるようになってからは、上手くやってくれているみたいね。

あの子食いしん坊みたいだから、米の食べ方をいっぱい普及させているみたいよ。

自分は料理できないからって、一緒にいる旅芸人の料理人にどんな料理かを伝えて作ってもらっているみたいね。

その時にレシピをしっかり残しているみたいだから、そのレシピが巡業に合わせて世界中を回っているのよ。

おかげでお米もすっかり根付いたわ。



あっそうだ、今はヒロコの話しをしている場合じゃなかった。
大変なことになっちゃったのよ。

新しい召喚者えーっと、そうアキラ君、そのアキラ君をいつもの召喚の部屋に連れてくる時に彼が突然消えちゃったの。

召喚の部屋って、運営課の一番奥にある会議室のひとつで、よく召喚されて『真っ白な明るい場所で女神と会った』ってあるじゃない。

あの場所のことよ。

ライトアップとかしてそれなりの雰囲気を出してるんだ。
ちなみに隣には衣装室とメイク室もあって、専用のメイクさんがお化粧してくれるのよ。

って、また脱線しちゃった。

ヒロコの時と同じようにアキラ君に声を掛けて意思確認。

彼、二つ返事でOKって言ってくれたから、この部屋に呼んだの。

順調にこちらに向かって歩いて来てたんだけど、途中で黒い靄が現れたかと思うと忽然と消えてしまったのよ。

慌てて探しに行ったんだけど、どこにもいなかった。

こんなこと初めてだし『どうしよう』って思って慌てて事務所にいったら、ちょうどマリス先輩がいたんで事情を話してアキラ君が消えた辺りに一緒に行ってもらったの。

マリス先輩もそんな目に遭ったことが無いみたいで、ふたりで一生懸命辺りを探したわ。

でもアキラ君はいなかったの。

「困った時のマサルさんね。」

マリス先輩がマサルさんを呼んだら、マサルさんすぐに来てくれたわ。

「マリス様、どうしたんですか?」

「マサルさーん、ちょっと困ってるのよ。ほらミリア!説明しなさい!」

「はーい。マサルさん、今召喚者を呼んでたんですけどここに着く直前で消えたんです。」

「ミリヤ様、もう少し詳細に聞かせてもらえますか。」

「そうねー、アキラ君 あー召喚したアースの子なんだけど、アキラ君に異世界に行く気があるか確認したら二つ返事でOKを貰ったの。

それでこちらに来てっていうとアキラ君こちらに向いて歩いてきたのよ。

それで、ちょうどこの辺りまで来た時点で黒い靄みたいなのが出てきてアキラ君を隠したと思ったら、そのままいなくなってしまったのよ。」

「靄が掛かっただけですか?」

「そう、それ以外には音も匂いも無かったわ。」

「わかりました。ちょっと調べてみますね。『トレース』」

マサルさんが現場の床に手を当てながら魔法を唱えるとほのかな明かりの中に映像が映し出された。

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