上 下
342 / 382
第14章 そして神になった

50【売れっ子ラノベ作家になりたい5】

しおりを挟む
<<シロウ視点>>



王都に帰還する2日間の行程途中、ユリウス君は頻繁に話しかけてきた。



彼が行動を共にしているのは皆中級貴族の子弟である。



どうやら彼らは貴族家の一員として今回のような合戦に参加する義務を負っているようで、ユリウス君同様次男、3男だそうだ。



彼らは形式だけ参加していれば良く、一塊になって無難な位置にいたようなのだが、今回はこちら側の奇襲ということもあり、いつもより戦場に近くなってしまったらしい。



そこに敵が襲い掛かってきたところで俺が現れて、そいつらを殲滅したらしい。



だから彼らにとって俺は命の恩人というわけだ。




俺にしたら転移させられた直後のことで、何が何か分からないままの出来事なので助けたという覚えがない。



その態度が俺を謙虚だと勘違いさせてしまったようだ。



突然現れて武器も持たずに敵を一瞬でなぎ倒す。



その姿に憧れに似たものを感じてたらしい。



まあ俺の目的は信長さんなんだから、彼が今から向かう王城に連れて行ってくれるのであれば結果オーライということなのだが。



とにかく、ユリウス君達の色々聞かれながらも2日間の行軍を経て王都に到着した。



ユリウス君が「是非家に!」と言ってくれるので甘えることにする。



ユリウス君の家、いや屋敷は大きかった。



屋敷の使用人に迎えられたユリウス君が俺を連れて向かったのは立派な扉の書斎。



中には彼のお父さんであるシーザー伯爵がおられた。



「父上、ただいま戦場より帰還致しました。こちらは敵に襲われたわたし達を助けて下さったシロウ様です。



王都は初めてということでお連れ致しました。」



「うむ、お帰りユリウス。快勝であったそうだな。まずは初陣おめでとう。



さてシロウ殿、報告は既に家人より聞いておる。ユリウス達の命を助けて頂き感謝する。



王城での戦勝会までにはまだ時間もある。ゆっくり湯にでも浸かって疲れを癒されよ。



ユリウス、案内して差し上げるのだ。」



「はい、父上。シロウさん、行きましょう。」



どうやらユリウス君と行動を共にしていた家臣の人がひと足先に屋敷に戻って仔細を伝えていたようだ。



そして風呂で汗を流した俺達は王城の戦勝会の開かれる王城の大広間へと向かった。



戦勝会の会場には数多くの貴族が集まっていた。かなり場違いな気もするが、ユリウス君の隣にいるだけで、道を開けてくれる。



中には怪訝そうに俺を見ている人達もいるが、むしろこちらの方が自然なんだろうな。



合戦に参加した者として前の方に並ぶ。



ざわめく会場の中がしーんと静まり返った時、王様が姿を現した。



簡単な挨拶の後、宰相より論功行賞が発表される。



1番武功は信長さんであった。今回の戦術考案者であり、敵大将の首を取ったのだから当然と言えば当然か。



信長さんは正式に国の軍師として採用されるらしい。



2番はこの国の将軍。これも順当。



3番、4番は公爵家と侯爵家のそれぞれの嫡男。ユリウス君曰くこれも初めから決まっていたという。



そして5番武功に....俺の名が呼ばれた。



驚いてユリウス君の顔を見ると、ニコニコしながら背中を押してくれたのでそのまま一歩踏み出すと、後は大きな拍手に背中を押される格好で王の前に出ていた。



一応表彰を見ていたから、皆んなと同じ格好で拝礼する。



「シロウ殿、シーザー伯爵家並びに多くの貴族家から今回の活躍について武功表彰の推薦状が出ておる。」



宰相の言葉に続いて王から言葉を頂く。



「ソチがシロウか。武器も持たずに初陣の者達を守りながら何人もの敵将を討ったそうじゃな。

天晴な活躍であった。」



褒章の勲章を戴いてユリウス君の隣に戻ると、ユリウス君の満面の笑みが迎えてくれた。



その後20人くらい表彰されて王様が退場される。



そして歓談タイム。



俺の元には多くの貴族が集まってきた。



その中には俺が助けた子息の親兄弟もいたが、正体不明で第5位論功行賞を受けた俺に興味津々で近づいてくる貴族達も多く混じっていた。



「シロウ君、なかなか様になってたじゃないか。



君もこれで王国騎士の一員となったな。歓迎するよ。」



シーザー伯爵とシルベスト将軍がニコニコしながらやって来た。



「君の活躍はシルベスト将軍の伝令からも聞いていたんだ。

出自は不明だがひどくタフな兵士が居るとね。



たまたまユリウスの使者からも同様に君を推挙して欲しいと言ってきた。



だから武功に君を推薦したんだよ。



将軍、なかなか良い人材じゃないか。」



「軍務卿、どうだ俺の見立てに間違いないだろう。ハハハーー。」



どうやらシーザー軍務卿とシルベスト将軍に上手く取り込まれたようだけど、まあ、これでこの世界にも信長さんにも繋がりそうだから良しとするか。


しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

慟哭の時

レクフル
ファンタジー
物心ついた時から、母と二人で旅をしていた。 各地を周り、何処に行くでもなく旅をする。 気づいたらそうだったし、何の疑問も持たなくて、ただ私は母と旅を続けていた。 しかし、母には旅をする理由があった。 そんな日々が続いたある日、母がいなくなった。 私は一人になったのだ。 誰にも触れられず、人と関わる事を避けて生きていた私が急に一人になって、どう生きていけばいいのか…… それから母を探す旅を始める。 誰にも求められず、触れられず、忘れ去られていき、それでも生きていく理由等あるのだろうか……? 私にあるのは異常な力だけ。 普通でいられるのなら、こんな力等無くていいのだ。 だから旅をする。 私を必要としてくれる存在であった母を探すために。 私を愛してくれる人を探すために……

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

異世界転生は、0歳からがいいよね

八時
ファンタジー
転生小説好きの少年が神様のおっちょこちょいで異世界転生してしまった。 神様からのギフト(チート能力)で無双します。 初めてなので誤字があったらすいません。 自由気ままに投稿していきます。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

処理中です...