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第14章 そして神になった

41【この世界の果てで2】

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<<ダイス視点>>



とある日のこと、俺達は森の奥深くに迷い込んでいた。



「なあ、ダイス!ここどこだ!」



「そうだな、シンキの森を西から入ってきてもう2時間近く歩いてるから、そろそろ東の湖に出てもいい頃なんだが。」



「東の湖なら手前に木こり小屋が何軒かあったはずだ。そんなもん、どこにもないじゃないか!」



「マイル、そんな大声出してもしようが無いじゃないか。少し冷静になったらどうだ。」



「カイン!この状態で冷静になれってか!ダイスがこっちが近道だって言うから来たのに、こんなところで迷ってどうするんだ!」



「だから落ち着けって。ところでダイス、方向的には問題無いのか?」



「カイン、大丈夫だと思う。太陽の方向を見ながらきたから真っすぐ東に向かっていると思う。」



「しかし、時間的にはもうそろそろ森を抜けてもいいくらいだ。」




そう、俺達はもう2時間も森の中を彷徨っている。



俺とカイン、マイルは同じ班のメンバーとして、カレッジの校外研修に来ていた。



目的地はこのシンキの森の向こう側にあるシーラム湖で、そこにいるレインボーマスを捕獲することが研修の課題である。



シンキの森は別名「惑わしの森」と呼ばれる小さな森で、歩いて縦断しても2時間かからない程度の広さしかない。



だが、名前が示すように、時折森で迷って行方不明になる者がいると言われている。



ただ、あくまで噂だけで実際に行方不明になった者はここ何10年もいないということだ。



研修のルートはあくまで森を迂回して湖まで5時間かけていくルートなのだが、俺達は森を縦断することを選んだ。



俺はこの森には何度も兄貴達と入ったことがあり、特に気になることも無かったので今回も迂回ルートなんて初めから考えていなかったし、カインやマイルも賛同していたはずだ。



「で、ダイスどうするかな。」



「そうだな、マイルも苛立っているようだし、この辺りで一旦休憩でもするか。

少し休んだら俺が辺りを探って来るよ。」



俺達は少し開けた場所に持ってきたシートを広げて腰を下ろした。



不安もあるのか、ふたりとも口数は少ない。



「じゃあ、ちょっとその辺を見てくるからな。ここで待ってて。」



5分程休憩した後、俺は疲れで重い腰を上げて歩き出した。



「あんまり遠くまで行くなよ。早く帰ってこいよ。」



「わかってるよ。ちょっとその辺りまでだよ。」



ふたりの声を聞きながら俺は木々の間を抜けて奥へと入っていったのだ。




「俺が森を突っ切ろうぜって言ったからなあ。

あいつらも不安がってるし、何とかシーラム湖を探さないと。」



独り言でも言ってないと不安になって来る。



「そうだ、目印を付けて行こう。これで俺が迷ってしまったら洒落になんねえもんな。」



持っていたナイフで次々に木に目印を付けながら奥へと進んでいく。



しばらく歩いてみたが出口はさっぱりだ。



そろそろふたりも心配しているだろうから一旦戻ろうと、振り返って木に付けた目印をたどっていく。



「あれ?おかしいな。」



順に来たところを戻ってきたのだが、最初につけたはずの目印に着いてもふたりの姿を見つけることは出来なかった。



どこかに移動したのかと、少し待ってみたが戻ってこない。



そう言えばここは休憩していた場所と少し感じが違う気がする。



「惑わしの森か。」



俺はなぜか冷静に今の事態を考えていた。



答えは簡単だ。   ....迷ったんだ。



このまま座っていたって事態が変わるわけでもなく、俺は疲れを振り切って歩き出す。



この森、魔物が出ることはめったになく、昼間は比較的安全だと言われている。



だが夜になるとその表情は一転する。



夜行性の凶悪な動物が獲物を求めて出没するのだ。



太陽の傾きを見ると日没までに残された時間はおおよそ1時間。



この1時間の間に外に出ないと、俺の攻撃力じゃ美味しく頂かれるだけだろう。



気は急ぐが無情にも時間は過ぎていき、ついに日没を迎えた。



一気に暗くなる森の中、目を凝らすといくつかの微かな光が見える。



少しだけ漏れる月明かりが光らせる微かな、でも鋭い2つの光。猛獣の目だ。



周りを見渡すと少なくとも5頭は確認できた。



「まずいな。逃げられそうにないや。」



俺のつぶやきが聞こえたわけでは無いだろうが、5頭はゆっくりと、そして確実に近づいてきた。



そして....... 最初の1頭が飛びかかってきた。



その鋭い牙が目の前に来た時、俺の意識は飛んだ。




<<剣豪ムサシ視点>>



暗闇、何も無い漆黒の場所に俺はいた。



数多の強敵を倒してきた日々。彼らの怨念が死した俺をこの場所に留めて居るのだろうか。



それならそれで構わない。



この漆黒も俺の修業のひとつだと思えば何ということは無い。



もうどのくらいここにいるのだろうか。漆黒の中では時間の感覚も無くなるのだろうか。



俺は精神を研ぎ澄まし、極限まで集中力を高める。



「見える!!」



漆黒の闇の中、目を閉じて集中する俺の目に何かが見えるはずもない。



だが、闇に浮かぶ微かな2つの光。確実に俺を狙っているその光、いや眼が見えたのだ。



次の瞬間、俺は小太刀を抜き、その目を切り裂いた。



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