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第14章 そして神になった
39【召喚者エレジー2】
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<<タクマ視点>>
この世界に転生してから50年、今日もひとりで討伐依頼を受けている。
蒼い稲妻を解散してからはあまり大きな討伐に出ることも無くなった。
年齢が55を越えてから長期の依頼を受けるのがつらくなってきたこともある。
何より、ひとりで活動するようになってから遠征が億劫になっていたのだ。
いつも遠征の時は隣に仲間がいて共に語らい笑いあって過ごしていた。
ひとりでの野宿は虚しすぎるのだ。
そしてこの20年間、ソロでの活動は拠点としている冒険者ギルドから長くとも2日以内で終えられるものに限定している。
仕事の内容もS級に相応しくないものが多い。
そもそもS級の仕事なんて1地方において多いはずもなく、遠征しない俺に回ってくることは稀である。
それでも俺は冒険者に拘った。
転移してから50年、冒険者しかしてこなかったし、それ以外の仕事を考えられなかったからだ。
蓄えはそれなりにあるのでいつでも引退は出来る。
それでももうすぐ65歳を迎えるのに止めないのは、引退した後の寂しさを想うからだろうか。
この20年間、全くのソロだったわけでもない。
ギルドから依頼されて新人教育をするために数カ月間の臨時チームを組んだこともあったし、助っ人でチームに参加することもあった。
おかげでギルド内にさえいれば、誰かが声を掛けてくれる。
そして60を越える老人を師匠と言って慕ってくれるのだ。
元蒼い稲妻の中には、解散時の分配金を元手に商売を成功させている奴もいる。
逆に失敗して無一文になり、冒険者に戻って散っていった奴らも大勢いた。
実家の農家を継ぎ、幸せに暮らしている奴もいれば、小貴族の当主になった奴もいた。
皆んな、それぞれの人生を送っている。
昨日、サチが亡くなったとの情報を耳にした。
サチはあの後、資金を元手に地元に戻り小料理屋を始めていたらしい。
蒼い稲妻時代の仲間もたまに集っていたらしく、たまたま俺のいる冒険者ギルドへ来ていた元仲間が教えてくれた。
俺は彼女が埋葬されている墓の前で過去を振り返る。
もし、サチと一緒になっていたら。サチを蒼い稲妻に繋ぎとめていたら。
可笑しくなって頭を軽く振る。
今更そんなことを考えても仕方の無いことだった。
人生にはいくつも岐路があった。そして俺はその時に最善だと思われる道を選んだはずだった。
本当に最善だったかは誰にも分からない。もちろん俺にも。
だが今が真実なのだ。そしてこれからもいくつもの岐路があるに違いない。
ただ、ただその時の判断を信じて進むよりほかに無いのだろう。
今日も俺はいつものカウンターに座っている。
20年間温め続けている俺の席。いつの間にか誰も座らなくなった俺専用の席で俺はいつも通り酒を飲む。
深酒はしない。毎日決まった量をゆっくりとマスターと語らいながら飲むのが楽しみの一つだ。
今のマスターも新人時代から知っているから、気の置けない間柄である。
そして翌日は早朝から討伐依頼や新人教育をこなして、夕方からはまたこの席に着くのだ。
俺の残り人生がどれほどあるのかは分からないが、そう長くはないだろう。
だが俺は今の生活が気に入っている。
きっと死ぬまでこのままなのだろうな。
召喚者エレジー編 完
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いつもお読み頂き有難うございます。
今回はある召喚者の人生について書いてみました。
マサルのように華やかな人生を送るものもいるのでしょうが、きっとわずかだと思います。
10代前半で召喚された者のほとんどは、自分のやるべき事を見つけられずに惰性でタクマ君のような人生を送るのではないでしょうか。
召喚者の様々な側面についても今後書いていきたいと思っています。
この世界に転生してから50年、今日もひとりで討伐依頼を受けている。
蒼い稲妻を解散してからはあまり大きな討伐に出ることも無くなった。
年齢が55を越えてから長期の依頼を受けるのがつらくなってきたこともある。
何より、ひとりで活動するようになってから遠征が億劫になっていたのだ。
いつも遠征の時は隣に仲間がいて共に語らい笑いあって過ごしていた。
ひとりでの野宿は虚しすぎるのだ。
そしてこの20年間、ソロでの活動は拠点としている冒険者ギルドから長くとも2日以内で終えられるものに限定している。
仕事の内容もS級に相応しくないものが多い。
そもそもS級の仕事なんて1地方において多いはずもなく、遠征しない俺に回ってくることは稀である。
それでも俺は冒険者に拘った。
転移してから50年、冒険者しかしてこなかったし、それ以外の仕事を考えられなかったからだ。
蓄えはそれなりにあるのでいつでも引退は出来る。
それでももうすぐ65歳を迎えるのに止めないのは、引退した後の寂しさを想うからだろうか。
この20年間、全くのソロだったわけでもない。
ギルドから依頼されて新人教育をするために数カ月間の臨時チームを組んだこともあったし、助っ人でチームに参加することもあった。
おかげでギルド内にさえいれば、誰かが声を掛けてくれる。
そして60を越える老人を師匠と言って慕ってくれるのだ。
元蒼い稲妻の中には、解散時の分配金を元手に商売を成功させている奴もいる。
逆に失敗して無一文になり、冒険者に戻って散っていった奴らも大勢いた。
実家の農家を継ぎ、幸せに暮らしている奴もいれば、小貴族の当主になった奴もいた。
皆んな、それぞれの人生を送っている。
昨日、サチが亡くなったとの情報を耳にした。
サチはあの後、資金を元手に地元に戻り小料理屋を始めていたらしい。
蒼い稲妻時代の仲間もたまに集っていたらしく、たまたま俺のいる冒険者ギルドへ来ていた元仲間が教えてくれた。
俺は彼女が埋葬されている墓の前で過去を振り返る。
もし、サチと一緒になっていたら。サチを蒼い稲妻に繋ぎとめていたら。
可笑しくなって頭を軽く振る。
今更そんなことを考えても仕方の無いことだった。
人生にはいくつも岐路があった。そして俺はその時に最善だと思われる道を選んだはずだった。
本当に最善だったかは誰にも分からない。もちろん俺にも。
だが今が真実なのだ。そしてこれからもいくつもの岐路があるに違いない。
ただ、ただその時の判断を信じて進むよりほかに無いのだろう。
今日も俺はいつものカウンターに座っている。
20年間温め続けている俺の席。いつの間にか誰も座らなくなった俺専用の席で俺はいつも通り酒を飲む。
深酒はしない。毎日決まった量をゆっくりとマスターと語らいながら飲むのが楽しみの一つだ。
今のマスターも新人時代から知っているから、気の置けない間柄である。
そして翌日は早朝から討伐依頼や新人教育をこなして、夕方からはまたこの席に着くのだ。
俺の残り人生がどれほどあるのかは分からないが、そう長くはないだろう。
だが俺は今の生活が気に入っている。
きっと死ぬまでこのままなのだろうな。
召喚者エレジー編 完
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いつもお読み頂き有難うございます。
今回はある召喚者の人生について書いてみました。
マサルのように華やかな人生を送るものもいるのでしょうが、きっとわずかだと思います。
10代前半で召喚された者のほとんどは、自分のやるべき事を見つけられずに惰性でタクマ君のような人生を送るのではないでしょうか。
召喚者の様々な側面についても今後書いていきたいと思っています。
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