310 / 382
第14章 そして神になった
18【異世界に米を 6】
しおりを挟む
<<ヒロコ視点>>
硬貨をはじく以外の芸を考えているんだけど、なかなか良いのが浮かばない。
一座の皆さんにもコイン移動の手品を披露したんだけど、やっぱりムルカさんと同じ反応で、芳しくなかった。
それで今はコイン投げを練習中。
遠く離れたコップに硬貨を投げ入れるってだけの簡単な見世物なんだけど、これが難しい。
わたしって結構コントロールが良いみたいで、試してみるとそこそこコップに入る。
それだけでも一座の人達は褒めてくれるんだけど、芸としてやるんであれば100%成功しないと意味がない。
それで練習中。
手首と指のスナップを利かせてそれだけで飛ばすことで正確性を出そうとするんだけど、どうしても疲れてくると精度が極端に悪くなる。
コイン弾きの芸をしながら合間に毎日練習している。
「くそお、上手くいかないなあ。神様、このコインをあのコップに入れて!」
さすがにこの時間になると疲れが溜まってきて、今日はこれで最後にしようと決めた1投。
手元が狂って明らかにミスをしたにもかかわらず、コインは見事なカーブを描いてコインに吸い込まれた。
あれ?あの軌道は絶対に外れるはずなのに。神様にお願いしたのが良かったのかな?
もう一度神様にお願い押しながらコップに入るように願いを込めて投硬貨。
やはり不自然な軌跡を描いてコップの中へ。
次は明後日の方向へ願いを込めて投硬貨。とんでもないカーブを描いてコインはコップへと落ちた。
「今のなんだ?!」
セイムが驚きを含んだ声で走ってきた。
「今のなんだ?!すごく曲がって入ったじゃないか!まるで魔法みたいだ。
もう一度やって見せて。」
再度コップを背にしてコインを投げると、やはりコップに吸い込まれた。
ちなみに適当に投げた次のコインは見事に外れる。
「どうも、神様に祈りながら投げると、コップに入るみたい。」
わたしの言葉にセイムも絶句している。
「ふたりとも、ご飯が冷めるよーー。」
ムルカさんが呼びに来てくれた。
「セイム駄目じゃないか、ちゃんとヒロコちゃんを誘ってあげなきゃ。」
「ムルカさん、それどころじゃないんだ。これを見てくれよ。
ヒロコ、ほらもう1回やって見せて。」
「なんてことだい!ヒロコちゃん。今の魔法じゃないか。」
ムルカさんが興奮してまくしたてる。
わたし魔法なんて使えないんだけど。
「魔法だよ、魔法。今投げた時に魔力を感じたのさ。間違いないね。昔魔人が魔法を使うのを見たことあるけど、その時に感じたのと同じだよ。
ヒロコちゃん魔法が使えるんだね。こりゃたまげたよ。
えっ、自分では分からないだって!
じゃあ、知らないで使ってたのかい。そりゃまたすごいじゃないかい。」
大興奮のムルカさんが一座の皆さんを呼びに行き、それからしばらく魔法?を使ってコイン投げしていたんだけど、急に眩暈がして記憶を失っちゃった。
<<セイル視点>>
ヒロコが魔法を使ったっていうことで一座の連中は大騒ぎ。
魔法を使えるのは魔人だけっていう定説があるんだけど、ヒロコはれっきとした人間みたいだし、これは大発見かもってことになった。
とりあえず、どんなことが出来るのかコイン投げをいろんな形で行って検証することに。
ヒロコが言う『神様に祈って』というのをやると上手くいくみたい。
何度も試していると、突然ヒロコが倒れた。
慌てて駆け寄る。
「恐らく魔力切れじゃないかな。魔人に聞いたことがあるよ。魔力っていうのは使えば使うほど体内に溜まる容量が増えるみたいなんだけど、最初は貯蓄量が少なくて魔力切れを頻繁に起こすらしい。
気を失っても少し安静にしていれば魔力の回復と共に意識も回復するって言ってたっけ。」
僕は大人数人と一緒にヒロコをベッドに運んで寝かせた。
ムルカさんはああ言ってたけど、意識が戻る保証なんて無いし心配じゃないか。
結局ヒロコのベッド横で眠りに落ちてしまったらしく、翌朝、気が付いたヒロコに起こされることになったんだ。
ヒロコは真面目な性格だから、今日も朝からコイン投げの練習をしている。
回数やいろんなパターンを試したりしてメモを取っているみたいだ。
器用に四角い枠をたくさん書いて、その中に線を規則正しく書いていく。
横、その下に縦、その右側に横、縦棒の左に縦、一番下に横。
1つの線が1回を表し、5回毎に1つの記号が作られていく。
その記号が20を超えた頃、ヒロコはまた意識を失った。
5時間後、意識を回復したヒロコは、またコイン投げを始めた。
今度は33、その次は50とどんどん回数が増えていく。
その度に意識を失うもんだから心配でしようがないんだけど、ムルカさん曰く、問題ないそうだ。
魔人は小さい時からこういった訓練を繰り返して魔力量を上げているらしい。
数日経って記号の数が100を超えたところで、ヒロコは別のことをやり始めた。
手から水を出すという。魔人であるまいし、人間にそんなことが出来るもんか。と思うが一生懸命なヒロコに水を差すわけにもいかず、側で見ている。
2時間後、ヒロコの目の前には大きな水の玉が出来ていた。
硬貨をはじく以外の芸を考えているんだけど、なかなか良いのが浮かばない。
一座の皆さんにもコイン移動の手品を披露したんだけど、やっぱりムルカさんと同じ反応で、芳しくなかった。
それで今はコイン投げを練習中。
遠く離れたコップに硬貨を投げ入れるってだけの簡単な見世物なんだけど、これが難しい。
わたしって結構コントロールが良いみたいで、試してみるとそこそこコップに入る。
それだけでも一座の人達は褒めてくれるんだけど、芸としてやるんであれば100%成功しないと意味がない。
それで練習中。
手首と指のスナップを利かせてそれだけで飛ばすことで正確性を出そうとするんだけど、どうしても疲れてくると精度が極端に悪くなる。
コイン弾きの芸をしながら合間に毎日練習している。
「くそお、上手くいかないなあ。神様、このコインをあのコップに入れて!」
さすがにこの時間になると疲れが溜まってきて、今日はこれで最後にしようと決めた1投。
手元が狂って明らかにミスをしたにもかかわらず、コインは見事なカーブを描いてコインに吸い込まれた。
あれ?あの軌道は絶対に外れるはずなのに。神様にお願いしたのが良かったのかな?
もう一度神様にお願い押しながらコップに入るように願いを込めて投硬貨。
やはり不自然な軌跡を描いてコップの中へ。
次は明後日の方向へ願いを込めて投硬貨。とんでもないカーブを描いてコインはコップへと落ちた。
「今のなんだ?!」
セイムが驚きを含んだ声で走ってきた。
「今のなんだ?!すごく曲がって入ったじゃないか!まるで魔法みたいだ。
もう一度やって見せて。」
再度コップを背にしてコインを投げると、やはりコップに吸い込まれた。
ちなみに適当に投げた次のコインは見事に外れる。
「どうも、神様に祈りながら投げると、コップに入るみたい。」
わたしの言葉にセイムも絶句している。
「ふたりとも、ご飯が冷めるよーー。」
ムルカさんが呼びに来てくれた。
「セイム駄目じゃないか、ちゃんとヒロコちゃんを誘ってあげなきゃ。」
「ムルカさん、それどころじゃないんだ。これを見てくれよ。
ヒロコ、ほらもう1回やって見せて。」
「なんてことだい!ヒロコちゃん。今の魔法じゃないか。」
ムルカさんが興奮してまくしたてる。
わたし魔法なんて使えないんだけど。
「魔法だよ、魔法。今投げた時に魔力を感じたのさ。間違いないね。昔魔人が魔法を使うのを見たことあるけど、その時に感じたのと同じだよ。
ヒロコちゃん魔法が使えるんだね。こりゃたまげたよ。
えっ、自分では分からないだって!
じゃあ、知らないで使ってたのかい。そりゃまたすごいじゃないかい。」
大興奮のムルカさんが一座の皆さんを呼びに行き、それからしばらく魔法?を使ってコイン投げしていたんだけど、急に眩暈がして記憶を失っちゃった。
<<セイル視点>>
ヒロコが魔法を使ったっていうことで一座の連中は大騒ぎ。
魔法を使えるのは魔人だけっていう定説があるんだけど、ヒロコはれっきとした人間みたいだし、これは大発見かもってことになった。
とりあえず、どんなことが出来るのかコイン投げをいろんな形で行って検証することに。
ヒロコが言う『神様に祈って』というのをやると上手くいくみたい。
何度も試していると、突然ヒロコが倒れた。
慌てて駆け寄る。
「恐らく魔力切れじゃないかな。魔人に聞いたことがあるよ。魔力っていうのは使えば使うほど体内に溜まる容量が増えるみたいなんだけど、最初は貯蓄量が少なくて魔力切れを頻繁に起こすらしい。
気を失っても少し安静にしていれば魔力の回復と共に意識も回復するって言ってたっけ。」
僕は大人数人と一緒にヒロコをベッドに運んで寝かせた。
ムルカさんはああ言ってたけど、意識が戻る保証なんて無いし心配じゃないか。
結局ヒロコのベッド横で眠りに落ちてしまったらしく、翌朝、気が付いたヒロコに起こされることになったんだ。
ヒロコは真面目な性格だから、今日も朝からコイン投げの練習をしている。
回数やいろんなパターンを試したりしてメモを取っているみたいだ。
器用に四角い枠をたくさん書いて、その中に線を規則正しく書いていく。
横、その下に縦、その右側に横、縦棒の左に縦、一番下に横。
1つの線が1回を表し、5回毎に1つの記号が作られていく。
その記号が20を超えた頃、ヒロコはまた意識を失った。
5時間後、意識を回復したヒロコは、またコイン投げを始めた。
今度は33、その次は50とどんどん回数が増えていく。
その度に意識を失うもんだから心配でしようがないんだけど、ムルカさん曰く、問題ないそうだ。
魔人は小さい時からこういった訓練を繰り返して魔力量を上げているらしい。
数日経って記号の数が100を超えたところで、ヒロコは別のことをやり始めた。
手から水を出すという。魔人であるまいし、人間にそんなことが出来るもんか。と思うが一生懸命なヒロコに水を差すわけにもいかず、側で見ている。
2時間後、ヒロコの目の前には大きな水の玉が出来ていた。
0
お気に入りに追加
333
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
転生令嬢の食いしん坊万罪!
ねこたま本店
ファンタジー
訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。
そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。
プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。
しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。
プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。
これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。
こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。
今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。
※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。
※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。
転生幼女の怠惰なため息
(◉ɷ◉ )〈ぬこ〉
ファンタジー
ひとり残業中のアラフォー、清水 紗代(しみず さよ)。異世界の神のゴタゴタに巻き込まれ、アッという間に死亡…( ºωº )チーン…
紗世を幼い頃から見守ってきた座敷わらしズがガチギレ⁉💢
座敷わらしズが異世界の神を脅し…ε=o(´ロ`||)ゴホゴホッ説得して異世界での幼女生活スタートっ!!
もう何番煎じかわからない異世界幼女転生のご都合主義なお話です。
全くの初心者となりますので、よろしくお願いします。
作者は極度のとうふメンタルとなっております…
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
神に同情された転生者物語
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。
すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。
悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。
異世界転生は、0歳からがいいよね
八時
ファンタジー
転生小説好きの少年が神様のおっちょこちょいで異世界転生してしまった。
神様からのギフト(チート能力)で無双します。
初めてなので誤字があったらすいません。
自由気ままに投稿していきます。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる