302 / 382
第14章 そして神になった
10【とある星の再生6】
しおりを挟む
<<ケンジ視点>>
いったい、どうしてこうなったんだ。
あれだけ順調に街が出来ていたのに。
ビルも20棟となり、食糧生産する村も10で商業ビルや工房ビル、住居専用ビルなど街としての十分過ぎる機能を持っていたはずだった。
ついこの前までこの新天地を求めて続々と人が集まってきていたというのに、何もかもが一瞬でパーになってしまった。
僅か10分。最初にムーア達の村を作ってから1年。その間にケンジが一生懸命に作った街は僅か10分で全て台無しになってしまったのだ。
ビルの残骸がそこかしこに横たわる場所にケンジは茫然自失として地面に膝をついていた。
「まさかあんな地震が来るなんてな。ケンジお前のせいじゃないさ。神様の悪戯なんだから。気を落とすなよ。」
横に来たムーアが声を掛けてくれた。
それは嬉しかったけど...
地震が来るなんて...
地震大国日本に住む日本人のケンジにとって地震は日常的なことであり、高層ビルだけでなく民家でも地震対策をしているものだということは 当然知っていたはずだったのだ。
なのに、ここに来てからはそんなことは一切抜けていた。
異世界だって地震はあるはずなのに、チートな力を貰って浮かれていた?
ここは現実じゃないと思っていた?
自問自答するが全ては後の祭りだ。
そう、ここはムーア達が住んでいる紛れもない現実世界だし、天変地異が起こらないなんてことはあり得なかったんだ。
現実問題として何年も旱魃に悩まされていたのを知っていたはずなのだから。
1時間程前、地震は何の前触れも無く訪れた。
それほど大きかったわけじゃない。震度で言ったら4くらいか。
そう、日本でもまれに起こるが、たいして騒ぎにもならない程度。
地震発生時、ケンジもそう思っていた。
だが現実は厳しかった。
砂上の地面に建っているだけの高層ビル。アンカーも無く基礎工事さえされていなければ倒壊は必然である。
最も震源に近いビルが大きな揺れを見せると徐々に傾き始めた。
「みんな逃げるんだー。早く、早く逃げるんだー。」
街全体に響き渡る全体放送でケンジは叫んでいた。
実際ビル内にいたケンジは肌で危険を感じたのだ。日本人のDNAかもしれない。
脱出用のシューターを各ビルに何個も付けて住人を逃がした。
1度目の揺れでビル群は傾きはしたものの住人達を逃がすことには成功したようだ。
8分後、2度目の揺れが来た。さっきよりも大きい、そう感じた時一番大きく傾いていたビルが崩れる。
そのあおりを受けて、かろうじて自身を支えていたビル達もドミノ倒しのように次々と倒れていったのだった。
人々の叫び声や子供の泣き声があっちこっちから聞こえてくる。
つい先ほどまで笑いの絶えなかった人々の顔が恐怖に変わり、地震が落ち着き荒廃した自分達の新天地であった場所が瓦礫の山と化したのを目の当たりにすると、諦めの表情に変わっていった。
「はあー。やはり神は我々に試練を与えたまうのか。怠惰な生活を戒められたのか。」
あちらこちらから聞こえる神への畏怖と自分達の堕落した生活。
それを悔いるような言葉が聞こえてくる。
誰もケンジを責めることは無い。茫然自失とするケンジに頭を下げて1家族、1家族と皆が街を去っていくのをケンジは見送ることしか出来なかった。
ケンジにしてみれば普通の生活だったが、この世界の民達にしてみれば神の世界にも思われるこの街での生活を謳歌していた自分達に、神の裁きを落ちるのは必然だと考えているのだろうか。
そんなことを頭に思い浮かべるも、今のケンジに出来ることは何もなかったのだ。
<<マサル視点>>
「って、こんな感じなんです。マサルさん、何か良いアドバイスはありませんか?
このままじゃケンジ君ダメになっちゃいそうでぇ。」
ここは異世界管理局のある世界の某居酒屋チェーン店の一室。
マサルは今日も今日とてマリス達に連れられて終わりのない酒盛りに参加している。
今マサルに延々と自分の管理する世界の話しをしているのは、つい最近運営課に配属になった新人のユリア様。
ユリア様がマリス様に相談したんだけど、自分で解決策が浮かばなかったマリス様が居酒屋に呼び出した俺に相談を押し付けてきたのだ。
「うーん、たしかにケンジ君はピンチですね。彼の能力からすれば回復することは可能でしょうけど、メンタル面がねえ。
まだ中2じゃ仕方ないか。今回の件も基礎工事だとか構造の強度とか中学生じゃ絶対分からないことですしね。」
「そうなのよ。全て順調でね、これならマリス先輩の持つ、最年少記録を更新できるかなって思っていたんですけどぉ...」
「ちょっと、あんたそんなこと考えてたの!」
「いやあの、だってマサルさんの新人研修を毎回聞いていたら、なんだか自分でも出来そうな気がしたんですう。」
「そりゃマサルさんの講義は完璧だからね。そう思ってもしようが無いかもね。」
俺が褒められるとマリス様が嬉しそうな表情に戻る。
「ところで今回の地震なんですけど、その世界では地震が良く起こる設定なんですか?」
「そんな面倒くさいことしてないですう。今回はたまたま神の気まぐれというか、何というか...」
「はいはい、新人歓迎会か何かの王様ゲームの罰ゲームなんですね。」
「「「.......!」」」
いったい、どうしてこうなったんだ。
あれだけ順調に街が出来ていたのに。
ビルも20棟となり、食糧生産する村も10で商業ビルや工房ビル、住居専用ビルなど街としての十分過ぎる機能を持っていたはずだった。
ついこの前までこの新天地を求めて続々と人が集まってきていたというのに、何もかもが一瞬でパーになってしまった。
僅か10分。最初にムーア達の村を作ってから1年。その間にケンジが一生懸命に作った街は僅か10分で全て台無しになってしまったのだ。
ビルの残骸がそこかしこに横たわる場所にケンジは茫然自失として地面に膝をついていた。
「まさかあんな地震が来るなんてな。ケンジお前のせいじゃないさ。神様の悪戯なんだから。気を落とすなよ。」
横に来たムーアが声を掛けてくれた。
それは嬉しかったけど...
地震が来るなんて...
地震大国日本に住む日本人のケンジにとって地震は日常的なことであり、高層ビルだけでなく民家でも地震対策をしているものだということは 当然知っていたはずだったのだ。
なのに、ここに来てからはそんなことは一切抜けていた。
異世界だって地震はあるはずなのに、チートな力を貰って浮かれていた?
ここは現実じゃないと思っていた?
自問自答するが全ては後の祭りだ。
そう、ここはムーア達が住んでいる紛れもない現実世界だし、天変地異が起こらないなんてことはあり得なかったんだ。
現実問題として何年も旱魃に悩まされていたのを知っていたはずなのだから。
1時間程前、地震は何の前触れも無く訪れた。
それほど大きかったわけじゃない。震度で言ったら4くらいか。
そう、日本でもまれに起こるが、たいして騒ぎにもならない程度。
地震発生時、ケンジもそう思っていた。
だが現実は厳しかった。
砂上の地面に建っているだけの高層ビル。アンカーも無く基礎工事さえされていなければ倒壊は必然である。
最も震源に近いビルが大きな揺れを見せると徐々に傾き始めた。
「みんな逃げるんだー。早く、早く逃げるんだー。」
街全体に響き渡る全体放送でケンジは叫んでいた。
実際ビル内にいたケンジは肌で危険を感じたのだ。日本人のDNAかもしれない。
脱出用のシューターを各ビルに何個も付けて住人を逃がした。
1度目の揺れでビル群は傾きはしたものの住人達を逃がすことには成功したようだ。
8分後、2度目の揺れが来た。さっきよりも大きい、そう感じた時一番大きく傾いていたビルが崩れる。
そのあおりを受けて、かろうじて自身を支えていたビル達もドミノ倒しのように次々と倒れていったのだった。
人々の叫び声や子供の泣き声があっちこっちから聞こえてくる。
つい先ほどまで笑いの絶えなかった人々の顔が恐怖に変わり、地震が落ち着き荒廃した自分達の新天地であった場所が瓦礫の山と化したのを目の当たりにすると、諦めの表情に変わっていった。
「はあー。やはり神は我々に試練を与えたまうのか。怠惰な生活を戒められたのか。」
あちらこちらから聞こえる神への畏怖と自分達の堕落した生活。
それを悔いるような言葉が聞こえてくる。
誰もケンジを責めることは無い。茫然自失とするケンジに頭を下げて1家族、1家族と皆が街を去っていくのをケンジは見送ることしか出来なかった。
ケンジにしてみれば普通の生活だったが、この世界の民達にしてみれば神の世界にも思われるこの街での生活を謳歌していた自分達に、神の裁きを落ちるのは必然だと考えているのだろうか。
そんなことを頭に思い浮かべるも、今のケンジに出来ることは何もなかったのだ。
<<マサル視点>>
「って、こんな感じなんです。マサルさん、何か良いアドバイスはありませんか?
このままじゃケンジ君ダメになっちゃいそうでぇ。」
ここは異世界管理局のある世界の某居酒屋チェーン店の一室。
マサルは今日も今日とてマリス達に連れられて終わりのない酒盛りに参加している。
今マサルに延々と自分の管理する世界の話しをしているのは、つい最近運営課に配属になった新人のユリア様。
ユリア様がマリス様に相談したんだけど、自分で解決策が浮かばなかったマリス様が居酒屋に呼び出した俺に相談を押し付けてきたのだ。
「うーん、たしかにケンジ君はピンチですね。彼の能力からすれば回復することは可能でしょうけど、メンタル面がねえ。
まだ中2じゃ仕方ないか。今回の件も基礎工事だとか構造の強度とか中学生じゃ絶対分からないことですしね。」
「そうなのよ。全て順調でね、これならマリス先輩の持つ、最年少記録を更新できるかなって思っていたんですけどぉ...」
「ちょっと、あんたそんなこと考えてたの!」
「いやあの、だってマサルさんの新人研修を毎回聞いていたら、なんだか自分でも出来そうな気がしたんですう。」
「そりゃマサルさんの講義は完璧だからね。そう思ってもしようが無いかもね。」
俺が褒められるとマリス様が嬉しそうな表情に戻る。
「ところで今回の地震なんですけど、その世界では地震が良く起こる設定なんですか?」
「そんな面倒くさいことしてないですう。今回はたまたま神の気まぐれというか、何というか...」
「はいはい、新人歓迎会か何かの王様ゲームの罰ゲームなんですね。」
「「「.......!」」」
0
お気に入りに追加
329
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
婚約破棄されたので暗殺される前に国を出ます。
なつめ猫
ファンタジー
公爵家令嬢のアリーシャは、我儘で傲慢な妹のアンネに婚約者であるカイル王太子を寝取られ学院卒業パーティの席で婚約破棄されてしまう。
そして失意の内に王都を去ったアリーシャは行方不明になってしまう。
そんなアリーシャをラッセル王国は、総力を挙げて捜索するが何の成果も得られずに頓挫してしまうのであった。
彼女――、アリーシャには王国の重鎮しか知らない才能があった。
それは、世界でも稀な大魔導士と、世界で唯一の聖女としての力が備わっていた事であった。
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる