298 / 382
第14章 そして神になった
6【とある星の再建2】
しおりを挟む
<<ムーア視点>>
ムーアは閉まっていく扉を黙って見ていた。
閉まってしまったものはしょうがない。
そう思えるくらいムーアの肝が据わっているのはさすが村長の息子というところか。
「皆んな大丈夫か。」
不安そうな顔をしている皆を安心させるように、なるべく柔らかい言葉を使う。
こんな狭い空間に押し込められるのは2度目か。
前は探検していた洞窟が突然崩れた時だっけ。
あの時は土まみれになって死ぬかと思った。
あの時に比べたら、この中は綺麗なものだ。
ただ、身体の中から何かが出てきそうな嫌な感覚があるのだけが気に入らない。
皆んなも同じように感じているのか口数が少ない。
チーン!
突然音が鳴り何事かと身構える。
すると勝手に扉が開いたのだ。
開いた扉からは、入って来た場所とは似ても似つかないおかしな光景が広がっていたのだ。
<<ケンジ視点>>
プールサイドのビーチチェアで寛いでいると、エレベーターが動いていることに気づいた。
やべっ!
誰かビル内に入って来やがったか?
そういえば、鍵をかけ忘れていたな。
村の者だとは思うが、用心に越したことはない。
俺はエアガンを創造した。
本当の銃は子供には扱えないってテレビでやっていたから、それ以外で武器としてケンジが思い付くのがエアガンだけだったのだ。
エアガンなら、ネット動画で撃っているところを見たことがあるし、空き缶を貫通していたから撃退くらいは出来ると思う。
刑事ドラマみたいにエレベーターの脇に移動して隠れた。
チーン!
10秒ほどでエレベーターが到着、ケンジに緊張が走る。
はたしてエレベーターから出て来たのは、子供ばかり4人。
先頭は狐につままれたような惚け顔のムーアだった。
ケンジはこの世界に転移してから、ムーア達の村に世話になっていた。
もちろんムーアを含む4人とも知り合いだ。
「ムーア達か。どうしたんだ?」
ケンジはムーアに声を掛ける。
その声に我に返ったムーアがケンジに向かって槍を構えた。
「ちょ、ちょっと待ってよ。俺だよ、俺、ケンジだよ。」
「ケンジ?」
訝しげにこちらを睨むムーアに隙は無い。
彼から俺は逆光で見えにくいのだ。
俺は少し横に移動して太陽の影に入る。
ようやく俺の姿を認識出来たムーア達はやっと槍を下ろしてくれた。
「ケンジ、ここはどこだ?
俺達は化かし狐に騙されているのか?」
「ムーア、ここは俺が作ったビルの屋上だ。」
「ビル?それはなんだ?」
「そうか、ビルなんてこの世界には無いもんな。
まぁいいや。ムーア、こっちへ来いよ。」
俺は屋上の端の方にムーア達を呼ぶ。
「ここから下を覗いてみて。」
「うわっ!なんだあれは!」
ムーア達が見たのは、けし粒みたいな彼らの村だった。
「ここは山の上なのか?」
「違うよ。ここは大きな家だと考えてくれていい。
その屋根の上だな。
ちなみにハルナの山と同じくらいの高さかな。」
俺は近くに見える山を指差して説明した。
「屋根の上に水溜りがあるものか!
まあ、たしかにハルナの山の上から見た村の様子には似ているが……
しかし、村からハルナの山の頂上までは半日は余裕でかかるぞ。
俺達はここまであっという間に着いたが。」
「君達が乗って来たのはエレベーターって機械だよ。
このビルの中を縦に通っていて、下から上まで自在に移動させてくれるんだ。」
「それなら、このビルとか言う物の中に住めるのか?」
「まぁ住めると思うよ。
ちょっと下に行ってみようか。」
俺はムーア達を誘って下の階に移動する。
エレベーターで中程のフロアに降りると、そこには広い空間が広がっている。
特に中はイメージしなかったから、こんなものか。
俺はそこに村の風景を思い描く。
皆んなの家々、集会所、炊事場、その他様々な建物をイメージして次々と創造していく。
ビルのワンフロアに出来た自分達の村を見て、ムーア達の開いた口が塞がらない。
「あっ、あああっ、ど、どういうことなんだ?」
「村が出来ちゃったよ。」
「ウチの家もあるね。」
皆んなそれぞれに驚いてる。
最年少のリンがいちばん順応性が高いのか、真っ先に自分の家に向かって行った。
「お母さんいなかった。」
項垂れながらすぐに戻って来たリン。
「そうだ、村の皆んなでここに引っ越してきたらどう?
ここだったら山賊も、猛獣も襲って来ないよ。」
村の周りを囲む壁や空を塞ぐ天井を見てムーアは悩む。
たしかに気持ちの良い暖かさだし、目に刺さる強い日差しも無い。
エレベーターというわけのわからない物に乗らないとここに辿り着かないとすると、ケンジの言う通り山賊や森の猛獣に襲われることも無いだろう。
「ケンジ、わかった。
大人達とも相談する必要があるから一旦村に戻るよ。」
「それなら、俺も一緒に行くよ。」
俺達は村の大人達に説明するために村に戻ったのだ。
ムーアは閉まっていく扉を黙って見ていた。
閉まってしまったものはしょうがない。
そう思えるくらいムーアの肝が据わっているのはさすが村長の息子というところか。
「皆んな大丈夫か。」
不安そうな顔をしている皆を安心させるように、なるべく柔らかい言葉を使う。
こんな狭い空間に押し込められるのは2度目か。
前は探検していた洞窟が突然崩れた時だっけ。
あの時は土まみれになって死ぬかと思った。
あの時に比べたら、この中は綺麗なものだ。
ただ、身体の中から何かが出てきそうな嫌な感覚があるのだけが気に入らない。
皆んなも同じように感じているのか口数が少ない。
チーン!
突然音が鳴り何事かと身構える。
すると勝手に扉が開いたのだ。
開いた扉からは、入って来た場所とは似ても似つかないおかしな光景が広がっていたのだ。
<<ケンジ視点>>
プールサイドのビーチチェアで寛いでいると、エレベーターが動いていることに気づいた。
やべっ!
誰かビル内に入って来やがったか?
そういえば、鍵をかけ忘れていたな。
村の者だとは思うが、用心に越したことはない。
俺はエアガンを創造した。
本当の銃は子供には扱えないってテレビでやっていたから、それ以外で武器としてケンジが思い付くのがエアガンだけだったのだ。
エアガンなら、ネット動画で撃っているところを見たことがあるし、空き缶を貫通していたから撃退くらいは出来ると思う。
刑事ドラマみたいにエレベーターの脇に移動して隠れた。
チーン!
10秒ほどでエレベーターが到着、ケンジに緊張が走る。
はたしてエレベーターから出て来たのは、子供ばかり4人。
先頭は狐につままれたような惚け顔のムーアだった。
ケンジはこの世界に転移してから、ムーア達の村に世話になっていた。
もちろんムーアを含む4人とも知り合いだ。
「ムーア達か。どうしたんだ?」
ケンジはムーアに声を掛ける。
その声に我に返ったムーアがケンジに向かって槍を構えた。
「ちょ、ちょっと待ってよ。俺だよ、俺、ケンジだよ。」
「ケンジ?」
訝しげにこちらを睨むムーアに隙は無い。
彼から俺は逆光で見えにくいのだ。
俺は少し横に移動して太陽の影に入る。
ようやく俺の姿を認識出来たムーア達はやっと槍を下ろしてくれた。
「ケンジ、ここはどこだ?
俺達は化かし狐に騙されているのか?」
「ムーア、ここは俺が作ったビルの屋上だ。」
「ビル?それはなんだ?」
「そうか、ビルなんてこの世界には無いもんな。
まぁいいや。ムーア、こっちへ来いよ。」
俺は屋上の端の方にムーア達を呼ぶ。
「ここから下を覗いてみて。」
「うわっ!なんだあれは!」
ムーア達が見たのは、けし粒みたいな彼らの村だった。
「ここは山の上なのか?」
「違うよ。ここは大きな家だと考えてくれていい。
その屋根の上だな。
ちなみにハルナの山と同じくらいの高さかな。」
俺は近くに見える山を指差して説明した。
「屋根の上に水溜りがあるものか!
まあ、たしかにハルナの山の上から見た村の様子には似ているが……
しかし、村からハルナの山の頂上までは半日は余裕でかかるぞ。
俺達はここまであっという間に着いたが。」
「君達が乗って来たのはエレベーターって機械だよ。
このビルの中を縦に通っていて、下から上まで自在に移動させてくれるんだ。」
「それなら、このビルとか言う物の中に住めるのか?」
「まぁ住めると思うよ。
ちょっと下に行ってみようか。」
俺はムーア達を誘って下の階に移動する。
エレベーターで中程のフロアに降りると、そこには広い空間が広がっている。
特に中はイメージしなかったから、こんなものか。
俺はそこに村の風景を思い描く。
皆んなの家々、集会所、炊事場、その他様々な建物をイメージして次々と創造していく。
ビルのワンフロアに出来た自分達の村を見て、ムーア達の開いた口が塞がらない。
「あっ、あああっ、ど、どういうことなんだ?」
「村が出来ちゃったよ。」
「ウチの家もあるね。」
皆んなそれぞれに驚いてる。
最年少のリンがいちばん順応性が高いのか、真っ先に自分の家に向かって行った。
「お母さんいなかった。」
項垂れながらすぐに戻って来たリン。
「そうだ、村の皆んなでここに引っ越してきたらどう?
ここだったら山賊も、猛獣も襲って来ないよ。」
村の周りを囲む壁や空を塞ぐ天井を見てムーアは悩む。
たしかに気持ちの良い暖かさだし、目に刺さる強い日差しも無い。
エレベーターというわけのわからない物に乗らないとここに辿り着かないとすると、ケンジの言う通り山賊や森の猛獣に襲われることも無いだろう。
「ケンジ、わかった。
大人達とも相談する必要があるから一旦村に戻るよ。」
「それなら、俺も一緒に行くよ。」
俺達は村の大人達に説明するために村に戻ったのだ。
0
お気に入りに追加
333
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
転生令嬢の食いしん坊万罪!
ねこたま本店
ファンタジー
訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。
そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。
プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。
しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。
プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。
これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。
こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。
今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。
※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。
※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
神に同情された転生者物語
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。
すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。
悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。
異世界転生は、0歳からがいいよね
八時
ファンタジー
転生小説好きの少年が神様のおっちょこちょいで異世界転生してしまった。
神様からのギフト(チート能力)で無双します。
初めてなので誤字があったらすいません。
自由気ままに投稿していきます。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
記憶喪失の転生幼女、ギルドで保護されたら最強冒険者に溺愛される
マー子
ファンタジー
ある日魔の森で異常が見られ、調査に来ていた冒険者ルーク。
そこで木の影で眠る幼女を見つけた。
自分の名前しか記憶がなく、両親やこの国の事も知らないというアイリは、冒険者ギルドで保護されることに。
実はある事情で記憶を失って転生した幼女だけど、異世界で最強冒険者に溺愛されて、第二の人生楽しんでいきます。
・初のファンタジー物です
・ある程度内容纏まってからの更新になる為、進みは遅めになると思います
・長編予定ですが、最後まで気力が持たない場合は短編になるかもしれません⋯
どうか温かく見守ってください♪
☆感謝☆
HOTランキング1位になりました。偏にご覧下さる皆様のお陰です。この場を借りて、感謝の気持ちを⋯
そしてなんと、人気ランキングの方にもちゃっかり載っておりました。
本当にありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる