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第14章 そして神になった
2【セミナー】
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<<マサル視点>>
ランスに禅譲してから俺の生活もだいぶ変わってきた。
星王を名乗るようになってしばらくはこの星の人達も混乱したりしたが、ネクター王達の協力もあり数年で落ち着きを取り戻した。
混乱の最大の原因は、やはりというべきか宗教だ。
俺を神として祀りあげる者達が俄かに現れ、自治政府となり一時的に力を落とした国々を牛耳ろうとしだした。
民を扇動して国家転覆を画策した奴等もいた。
もちろん、これらは俺達の想定範囲内で、ネクター王を中心とした国際連合事務局の重鎮達の間では最初から予想していた事態だったのだ。
いつの時代も宗教を使って人の心を惑わせる奴等はいる。
これまで絶対君主であった王の絶対性が一時的とはいえ衰えたと見た奴等がこの機を逃すはずも無いと。
今回の星王によるラスク星統一の陰にはこういった不穏分子を炙り出す意図もあった。
ということで、数年で混乱は収まりマリス様や俺を祀る宗教も一本化され、教祖としてイリヤが就任することで落ち着いたのだが。
俺はといえば体よくラスク星全体の責任と他星との外交を押し付けられた形になったわけだ。
シンゲン星との交易は想像以上に両星の発展に繋がり、経済・技術共に急速な革新をもたらした。
その結果マリス様の同僚?こちらの基準でいうと他の星を管轄する神々の注目を集め、ラスク星やシンゲン星と交易したいという星がいくつも打診されている。
距離的なものや文化的な相違があまりにも違う星はお断りしているが、マリス様の顔を立てるためにもここ300年で10ほどの星と新たに友好条約を結び、現在も進行中である。
日本から召喚される人数も急激に増えていると聞いている。
最近では不慮の事故により亡くなられた方のうち希望者は神々(異世界管理局運営課の担当者)から好条件でオファーされているらしい。
ただ期待値が非常に高く、神々の期待に応えられない方も多いため、最近では召喚者の育成が問題になっているそうだ。
そこで俺に白羽の矢が立ったみたいで、召喚者育成カリキュラムの中に俺の講義が組み込まれるようになった。
「モチベーションの維持や現地の人間との付き合い方」、「現地となじむ技術提案の順序と加減」など召喚された後に上手く日本での経験値を異世界で発揮し、神々の期待に沿えるように教育するのだ。
「マサルさん、今日もセミナー講師なの?どこで?」
「今日は異世界管理局本局のセミナールーム2です。」
「あら隣りね。わたしはセミナールーム3で新人研修なの。終了後予定ある?」
「いえ、特にはありませんが。」
「じゃあ付き合ってよ。一度マサルさんを紹介しなさいよって、シールとポーラに言われているの。
今日丁度2人と飲む約束しているから、一緒に来てくれない?」
「シール様とポーラ様ってラスク星を作った時に現場を担当された方達でしたよね。」
「そうよ。2人共今は運営課に異動になっていて、召喚者の指導に頭を悩ませているみたいなのね。
ちょっとだけでもいいから話しを聞いてやって。お.ね.が.い.」
「わかりました。どこでやるんですか?」
「ありがとう。前にさあ、ゼウスさんの送別会で行った居酒屋あるでしょ。あそこよ。わたしの名前で予約してあるわ。」
「最近セミナー終了後の質問が多いんで、ちょっと遅れるかもしれませんが必ず行きます。」
「ほんとありがとね。待っているわ。」
マリス様と約束した俺は、そのままセミナールーム2へ移動する。
頭に思い描くだけで一瞬で移動できるから、どこにいても遅刻なしだ。
セミナールームに入ると60名定員の会場は既に超満員になっている。80人は居そうだ。
中には何回かセミナーで顔を見かけた人達もいる。
期待に満ちた顔、面倒くさそうな顔、助けて欲しそうな暗い顔、様々な顔の日本人を前に講師台に立つ。
「皆さん、お疲れ様です。
本日講師を務めさせて頂きます加藤優と申します。
よろしくお願いします。」
俺はいつものように、日本での経験や召喚された時の様子、リズとの出会いと農村改革を始めた経緯などを説明する。
真剣に聴いているのは約半数。
想定内だ。
農村改革の事例紹介の後はカトウ運輸の話しだ。
この辺りで7割くらいが耳を傾けてくれる。
その流れから婚活パーティーのヤリテさんの話しをするとほぼ全員が失笑しながらも前のめりになるのだ。
ここまでくれば掴みはオーケー。
この後はいろいろなエピソードを交えながら実践的な説明をしていくのだ。
時間通りに講義を終え、軽く30分ほど質問を受けてセミナールームを出る。
ちょっと遅くなったけど、マリス様達が待つ居酒屋に向かおうか。
===============
※異世界管理局、シールさんポーラさんについては第1章8話と11話を読み返してください。
*婚活パーティーの話しは第4章9話くらいからになります。
ランスに禅譲してから俺の生活もだいぶ変わってきた。
星王を名乗るようになってしばらくはこの星の人達も混乱したりしたが、ネクター王達の協力もあり数年で落ち着きを取り戻した。
混乱の最大の原因は、やはりというべきか宗教だ。
俺を神として祀りあげる者達が俄かに現れ、自治政府となり一時的に力を落とした国々を牛耳ろうとしだした。
民を扇動して国家転覆を画策した奴等もいた。
もちろん、これらは俺達の想定範囲内で、ネクター王を中心とした国際連合事務局の重鎮達の間では最初から予想していた事態だったのだ。
いつの時代も宗教を使って人の心を惑わせる奴等はいる。
これまで絶対君主であった王の絶対性が一時的とはいえ衰えたと見た奴等がこの機を逃すはずも無いと。
今回の星王によるラスク星統一の陰にはこういった不穏分子を炙り出す意図もあった。
ということで、数年で混乱は収まりマリス様や俺を祀る宗教も一本化され、教祖としてイリヤが就任することで落ち着いたのだが。
俺はといえば体よくラスク星全体の責任と他星との外交を押し付けられた形になったわけだ。
シンゲン星との交易は想像以上に両星の発展に繋がり、経済・技術共に急速な革新をもたらした。
その結果マリス様の同僚?こちらの基準でいうと他の星を管轄する神々の注目を集め、ラスク星やシンゲン星と交易したいという星がいくつも打診されている。
距離的なものや文化的な相違があまりにも違う星はお断りしているが、マリス様の顔を立てるためにもここ300年で10ほどの星と新たに友好条約を結び、現在も進行中である。
日本から召喚される人数も急激に増えていると聞いている。
最近では不慮の事故により亡くなられた方のうち希望者は神々(異世界管理局運営課の担当者)から好条件でオファーされているらしい。
ただ期待値が非常に高く、神々の期待に応えられない方も多いため、最近では召喚者の育成が問題になっているそうだ。
そこで俺に白羽の矢が立ったみたいで、召喚者育成カリキュラムの中に俺の講義が組み込まれるようになった。
「モチベーションの維持や現地の人間との付き合い方」、「現地となじむ技術提案の順序と加減」など召喚された後に上手く日本での経験値を異世界で発揮し、神々の期待に沿えるように教育するのだ。
「マサルさん、今日もセミナー講師なの?どこで?」
「今日は異世界管理局本局のセミナールーム2です。」
「あら隣りね。わたしはセミナールーム3で新人研修なの。終了後予定ある?」
「いえ、特にはありませんが。」
「じゃあ付き合ってよ。一度マサルさんを紹介しなさいよって、シールとポーラに言われているの。
今日丁度2人と飲む約束しているから、一緒に来てくれない?」
「シール様とポーラ様ってラスク星を作った時に現場を担当された方達でしたよね。」
「そうよ。2人共今は運営課に異動になっていて、召喚者の指導に頭を悩ませているみたいなのね。
ちょっとだけでもいいから話しを聞いてやって。お.ね.が.い.」
「わかりました。どこでやるんですか?」
「ありがとう。前にさあ、ゼウスさんの送別会で行った居酒屋あるでしょ。あそこよ。わたしの名前で予約してあるわ。」
「最近セミナー終了後の質問が多いんで、ちょっと遅れるかもしれませんが必ず行きます。」
「ほんとありがとね。待っているわ。」
マリス様と約束した俺は、そのままセミナールーム2へ移動する。
頭に思い描くだけで一瞬で移動できるから、どこにいても遅刻なしだ。
セミナールームに入ると60名定員の会場は既に超満員になっている。80人は居そうだ。
中には何回かセミナーで顔を見かけた人達もいる。
期待に満ちた顔、面倒くさそうな顔、助けて欲しそうな暗い顔、様々な顔の日本人を前に講師台に立つ。
「皆さん、お疲れ様です。
本日講師を務めさせて頂きます加藤優と申します。
よろしくお願いします。」
俺はいつものように、日本での経験や召喚された時の様子、リズとの出会いと農村改革を始めた経緯などを説明する。
真剣に聴いているのは約半数。
想定内だ。
農村改革の事例紹介の後はカトウ運輸の話しだ。
この辺りで7割くらいが耳を傾けてくれる。
その流れから婚活パーティーのヤリテさんの話しをするとほぼ全員が失笑しながらも前のめりになるのだ。
ここまでくれば掴みはオーケー。
この後はいろいろなエピソードを交えながら実践的な説明をしていくのだ。
時間通りに講義を終え、軽く30分ほど質問を受けてセミナールームを出る。
ちょっと遅くなったけど、マリス様達が待つ居酒屋に向かおうか。
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※異世界管理局、シールさんポーラさんについては第1章8話と11話を読み返してください。
*婚活パーティーの話しは第4章9話くらいからになります。
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