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第12章 イリヤと薬学

7 【サヤマ村の魔素事件の顛末】

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<<シルビヤ視点>>
マサル様のお屋敷に着いて、イリヤちゃんにリビングに案内された。

この国のお茶会で不動の一番人気を誇る『ダージリン』という紅茶を飲みながら、『ドラム缶』を処分しに行かれたマサル様を待っている。

10分ほどでマサル様が戻ってこられた。


「シルビア先生、お待たせしました。ドラム缶は処分してきましたよ。

メアリさん、僕にもダージリンをお願いできるかな。


さてシルビア先生、ドラム缶について説明しますね。但し、ここで聞いたことは秘密でお願いしますね。」

メアリさんが持ってきたダージリンを美味しそうに一口啜ってから、お父様は話し出されました。

話しは2000年前に遡ります。

当時この世界はまだ発展途上中で、マリス様達が介入して世界を作っているところでした。

マリス様は様々な世界から開拓の指導者となる者を呼び寄せ、世界を発展させていったのです。

その時、不幸にもドラム缶を異世界から持ち込んだ者がいました。

ドラム缶に入っている魔素を生み出す物質は、当時の文明を急速に発展させたエネルギーだったのです。」

「2000年前というと、超古代文明?」

「シルビア先生、その通りです。

当時はドラム缶に入っていたエネルギー源を用いて、今では考えられないような先進的な文化が発達していました。

あのドラム缶に入っている物質は、エネルギーとして使った後の廃棄物なのです。

ドラム缶に入った廃棄物は、地下深くに埋められて保管されていました。

しかし、廃棄物を収めたドラム缶は、長い月日での中で風化し、やがて中の魔素が漏れ出したのです。

シルビア先生は、6年ほど前にキンコー王国で瘴気騒ぎがあったのを覚えておられますか?」

「ええ、ランス君とイリヤちゃんが活躍したスタンピードの時のことですね。」

「その通りです。実はあの魔素と思われている物質の正体は瘴気なのです。

あの6年前にも、瘴気が噴出していた場所から今回と同じドラム缶が大量に出てきました。

当時は混乱を防ぐために、このことは秘密裏に処理されましたが。

もちろん、ランスやイリヤも知りませんでした。」

わたし達が唖然とする中、マサル様はダージリンをひとくち口に含み、話しを続けられます。

「あの時全てのドラム缶を処分したはずだったのですが、今回の1つだけあの場所まで移動していたみたいです。

先程マリス様に確認してきたのですが、どうやら6年前の騒動があった森から今回の場所まで、1500年前まで川が流れていたみたいで、今回のドラム缶が何らかの事情で川を流れてたどり着いたようです。

ちなみに、この大陸全体をくまなく調査してみたところ、他の場所からドラム缶は見つかりませんでした。

瘴気と魔素はよく似ており、魔獣化は瘴気によって引き起こされることはご存じだと思います。

今回はドラム缶1つ分だったので、6年前の瘴気騒動までには至らなかったのですが、もしヤシム君の件がなければ、遠くない未来にあの場所でスタンピードが起こっていたかも知れません。

いや、もしかするとヤマトー侯爵の残党が無頼化したのも、関係していたのかもしれませんが。」


マサル様の説明は、到底理解の及ぶところではなかった。

だが、マサル様が嘘をつくはずもなく、受け入れるしかなかった。

こんな話しは、誰に話しても信用されるはずもなく、混乱を起こすだけなので、マサル様に言われた通り、墓場まで持って行こうと心に誓った。



<<ヤシム視点>>
俺はあの病気以来、魔力を制御する方法をずっと続けているよ。

あれから3週間くらい経っているので、あの時の魔素は完全に抜けているはずなんだけど、体の中にはまだ魔素が有って、少し増えているような気がする。

シルビア先生とイリヤちゃんは1週間おきくらいに症状をチェックしに来てくれているんだ。

魔素の量については、シルビア先生曰く、『魔素が通り易い体になったのかも知れないね。』ってことだ。

そういえば、あの時と違って魔素が身体に有っても身体がだるいことはない。

最近ではイリヤちゃんから生活魔法の使い方を教えてもらっているんだ。

薪に火をつけたり、水で消したりできるくらいなんだけど、お母さんからは重宝がられている。

村長さんや村の皆んなは、『この村始まっての魔法使いの誕生だ』って大喜びなんだよね。

もし、もしもだよ、このまま魔法をうまく使えるようになったら、この国の魔法師団に入れてもらえるかもしれないから、その日まで魔法制御の練習は、毎日頑張ろうと思っているんだ。


お母さん期待しておいてね。
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