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第11章 ランスの恋

9 【お茶会2】

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<<リザベート視点>>
先日のマリアナ様の意見を参考に目的別のお茶会について考えてみました。

まずは『交流会』。
これは日頃会うことが少ない地方貴族の奥様方の交流を目的としたものです。

次は『情報交換会』。
各地での悩み事や問題点を出し合って、皆で解決策を出し合おうというものです。

次は『勉強会』。
様々な美術、音楽、料理等をみんなで学んでいこうというものです。


『情報交換会』については、事前に各国首脳夫人に議題を精査して頂き、その一覧を各国首脳夫人に配布し、テーマとしてふさわしいものを多数決で順位付けして、議題を決めることにしました。


『勉強会』については、やはり料理に関するものを望む声が多く、次が特産物についてでした。
特産物はちょっと以外でしたが、それだけ自領の活性化に強い危機感を持っているのでしょう。

第1回の勉強会の時には各領地の特産物を持参して頂き、品評会を行いました。

それぞれご自慢の特産物を熱心に説明されており、『次からは御用商人を連れてきてもよいか』との意見も出るほどの盛況ぶりでした。

第2回目は、1回目で披露された特産物の中からいくつかのアレンジ料理の作り方について披露しました。

アレンジ料理はわたしもすっかり得意になりましたし、お義母様の発想も侮れません。

マサルさんも加わって、かなり出来の良いものができたと思います。


特産物ではあるものの、その調理方法が少なく輸出量が増えずに困っていた領主夫人は、今回のアレンジ料理をすごく喜んでくれました。

早速それを参考にして、自領の特産物拡販を進めるようです。

またアレンジ方法は他の食材にも応用できるため、今回の料理から漏れた特産物についても、『自領で考える良い機会になった』と言って頂いています。





さて、本日のお茶会は『新作レシピを楽しむ会』です。

これは各国最大の情報発信元である首脳夫人が集まって行う秘密のお茶会です。

何をするのかって?

タイトルの通りです。

各国が選りすぐりのお菓子をや料理を持ち寄り、その品評を楽しむものです。

もちろん、『新作レシピ』ですから、毎回新しいものだけに限定されます。

2回目となる本日は、我が国は『イチゴムース』を出すことにしました。
ディフェンディング・チャンピオンとしては、2連覇のかかった大事な一戦です。

おっと、ハローマ王国からは『チョコレート・ブラウニー』ですか。
そういえばハローマ王国ではカカオの生産に力を入れていましたね。

少し苦みのある味と、ふんわり触感がお茶うけにたまりません。
しっとり感のあるものも並んでいて、こちらも高評価です。

一口サイズというのも侮れませんね。うむ、強敵です。

他の国からも趣向を凝らしたお菓子が続々と出されてきました。

全て美味しそうですね。各国で食に関する研究開発が進んでいる証拠です。

美味しいもの大好きのわたしにとっては嬉しい限りですが、最近は体型が心配です。

今度は、ハイキングを目的としたお茶会を増やそうかな。


投票の結果、ハローマ王国の『チョコレート・ブラウニー』が優勝でした。

2連覇を逃したのは悔しいですが、次回頑張りましょう。

優勝者にはトロフィーが授与されます。

表彰台に立ったのは、ガード王夫人のサリダ様ではなく、マリー様でした。
この『チョコレート・ブラウニー』はマリー様が考えたものだそうです。

ハローマ王国の行政改革大臣として、今も現役で頑張っておられますが、産業振興の一環として特産物の加工にも力を注いでおられるようで、今回の『チョコレート・ブラウニー』は、マリー様のご自慢の一品だったみたいです。

お義母様も久しぶりの再会に大喜びでした。




<<トカーイ帝国皇帝夫人マリアナ視点>>
リザベート様の発案で始まった、マサル共和国でのちょっと変わったお茶会。

お互いの顔色を伺いながらの駆け引きをするこれまでのお茶会とは一線をどころか、次元を画しての楽しい会合になりました。

お茶会の名のもと、特産物の取引や販売方法をお互いに勉強しあい切磋琢磨する。
他国にも販売ルートを拡大できる。
など、わたし達にとってもメリットがいっぱいです。

でも何より良いのは、各ご夫人が積極的に動くようになったことですね。

他領で実施していることや他国での情報等、地方に住む領主夫人じゃ、知る機会すら無かったのですから、この場で覚えたり、見知ったことはきっと自領の発展に繋いでくれるでしょう。

ただでさえ自尊心の強い元貴族令嬢達ですから、よそに負けじと頑張ってご主人のお尻を叩いてくれることを期待していますよ。

これだけでも充分価値がある会合です。

参加者も回数を重ねる毎に増え、ほぼ毎日といっていいくらい何らかのお茶会が開催されているのではないでしょうか。

最近では、有志による『お茶会事務局』なるものも出来て、リザベート様のお手を煩わさずともお茶会が開催されるようになっています。

もちろん、開催に必要な費用も参加費として『お茶会事務局』が徴収・管理しています。

全くマサル様といい、リザベート様といい、かつて、この世界にこれ程の影響力を持った人間がいたでしょうか。

これだけの影響力を持ちながらも、自身は国王とすら名乗らず、なんら驕ることも無く、飄々としているあのふたりを見ていると、少し羨ましいです。

まあ、わたしはわたしにできることを頑張りましょう。


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