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第10章 ダンジョン攻略
25 【ワルダー盗賊団4】
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<<ワルダー盗賊団参謀アレン視点>>
マサルの国に盗みに入るにあたり、事前調査をして来た。
俺は旅の商人に化けて、マサル共和国に侵入した。
事前に得た情報では、マサル共和国は、各国に過去の犯罪者の写真を提供してもらえるよう、依頼しているらしい。
恐らく入国審査に使うのだろう。
お頭も俺も、犯罪者として写真を取られているから、そのまま乗り込んだら、すぐに捕まってしまうに違いない。
当然変装しても無駄だろうな。
入国者の取締りを強化しているのだから、街中にも何らかの仕掛けがあるに違いない。
観光客に化けてマサル共和国に侵入した。
船着場から入国審査場に向かう。
俺達の写真が未だ届いていないのは、10年前俺達が捕まった国に潜入している味方からの情報で、分かっている。
しかし襲撃までには届くだろう。
何食わぬ顔で、旅の商人として審査場を通過する。
審査に当たる警備隊の顔を1人づつしっかり覚えておく。
この中から内通者を作るのが手っ取り早い。
晴れて入国後は、街をぶらつき警備隊の詰所の位置や、見廻りの時間を調べておく。
「このトマト旨そうだねー。
ひとつもらおうか。
ところで、この国の警備隊は熱心だねぇ、こんなに頻繁に見廻りをするんだ。」
「旦那、旅の商人かい。
この国の警備隊は良いよ。不正なんかしないし、仕事熱心だしね。
この前も、各地域毎に魔道具を設置していてね、俺っちが、何か尋ねたんだが、喧嘩とかを自動で感知して、警報を鳴らすんだってさ。
面倒事をとっとと知らせてくれるんだったら、安全ってもんさね。」
「それは凄いな。安全なこの街はますます儲かるわけだな。
ありがとうよ。」
なんということだ。
警報の魔道具まで配備しているなんて。
事前調査に来て良かった。
それから2、3日俺は街の調査を続けた。
もう、得られる情報も無いと判断し、明日にはアジトへ戻ろうと考えていた時、入国審査場にいた警備隊員が私服で歩いているのを見つけた。
なんとか内通者に仕立てあげたくて、貴族の執事だとか適当に話しをこじつけて、強引に酒場に連れ込む。
適当な話しをしながら弱味を探ると、うまい具合に国に置いてきた女の話しが出てきた。
『女の家族を助ける』と嘘をついて、相手の出方を見る。
おっ、乗って来そうだ。
我々一味が無事に入国出来るように、誤魔化してもらう約束を取り付けた。
それと、魔道具の設置場所もだ。
これだけの情報があれば、街の襲撃は成功したようなものだろう。
俺は意気揚々と、アジトに戻った。
お頭に報告する。
お頭も、マサルの用心深さに少し驚いていたが、こちらの準備も万端だ。
そして遂にその日が来た。
俺達20人は、定期船でマサル共和国に到着する。
入国審査場にはあのクルスがひとりでいた。
予め観光客が少ない時間帯を確認してその時間にひとりで担当するように打ち合わせておいたのだ。
ワルダー様には頰被りをしてもらい、お忍びの貴族を気取ってもらう。
無事に入国出来た。
まずは第一関門突破だ。
次は魔道具が無いエリアを狙って騒ぎを起こし、その隙に大手商会に押し入る寸法だ。
騒ぎを起こす者を街の中に忍ばせておき、夜を待つ。
狙う商会も事前に調査済みだ。
そして深夜、遂に決行する。
街に潜ませた者が、火が着いた油樽を道にばら撒き、火事だと騒ぎ立てる。
その隙に俺達は商会を襲うのだが、……
時間になっても騒ぎが起きない。
その時、商会の近くで潜んでいた俺達の肩を叩く奴等がいた。
<<マクベス視点>>
少し前から入国審査場のクルスの様子がおかしい事に気付いていた。
いつもは明るく誰とでも笑い合っているのに、何か思い詰めたような顔をしている。
俺はクルスを酒場に誘った。
酒場が近くなるとクルスの奴、突然泣き出した。
事情を聞いてみると、お忍びの貴族を入国時に目溢しする約束をしたらしい。
俺はピンときた。
そいつらは恐らく盗賊団に違いない。
俺はクルスに黙っているように告げ、マサル様に相談した。
マサル様は、クルスを処罰するのではなく、逆に労るような言葉を下さった。
有り難い。本当に神様のような人だと思う。
マサル様は、俺に魔道具をひとつ下さった。
時計台に設置すると、街中が画面に表示される魔道具だ。
クルスに聞いた日時から街中を監視する。
クルスには、予定通り盗賊団を入国させた。
その時に撮った一味の顔写真と監視の魔道具を使って、奴等の動きは丸見えだ。
奴等を警備隊員に尾行させ、騒ぎを起こす前に捕まえてやった。
もちろん、大商会の前で所在なさげな奴等は、俺が一網打尽にしてやったが。
大捕物の翌日、クルスは辞表を持って俺のところにやってきた。
やはり本人なりの呵責があるのだろう。
マサル様に、今回のことの顛末とクルスの決意を伝えた。
マサル様は少し思案した後ボソリと呟かれた。
「わたしも少し動いてみましょう。」
それから1週間後、クルスが入国審査場に立つ最後の日が来た。
クルスの事情を知った大商会の支店長は、除隊後のクルスを雇って下さることになった。
最終の連絡船が到着した時、クルスの顔に久しぶりの笑顔があった。
幼なじみの女性の顔がそこにあったからだ。
第10章 完
マサルの国に盗みに入るにあたり、事前調査をして来た。
俺は旅の商人に化けて、マサル共和国に侵入した。
事前に得た情報では、マサル共和国は、各国に過去の犯罪者の写真を提供してもらえるよう、依頼しているらしい。
恐らく入国審査に使うのだろう。
お頭も俺も、犯罪者として写真を取られているから、そのまま乗り込んだら、すぐに捕まってしまうに違いない。
当然変装しても無駄だろうな。
入国者の取締りを強化しているのだから、街中にも何らかの仕掛けがあるに違いない。
観光客に化けてマサル共和国に侵入した。
船着場から入国審査場に向かう。
俺達の写真が未だ届いていないのは、10年前俺達が捕まった国に潜入している味方からの情報で、分かっている。
しかし襲撃までには届くだろう。
何食わぬ顔で、旅の商人として審査場を通過する。
審査に当たる警備隊の顔を1人づつしっかり覚えておく。
この中から内通者を作るのが手っ取り早い。
晴れて入国後は、街をぶらつき警備隊の詰所の位置や、見廻りの時間を調べておく。
「このトマト旨そうだねー。
ひとつもらおうか。
ところで、この国の警備隊は熱心だねぇ、こんなに頻繁に見廻りをするんだ。」
「旦那、旅の商人かい。
この国の警備隊は良いよ。不正なんかしないし、仕事熱心だしね。
この前も、各地域毎に魔道具を設置していてね、俺っちが、何か尋ねたんだが、喧嘩とかを自動で感知して、警報を鳴らすんだってさ。
面倒事をとっとと知らせてくれるんだったら、安全ってもんさね。」
「それは凄いな。安全なこの街はますます儲かるわけだな。
ありがとうよ。」
なんということだ。
警報の魔道具まで配備しているなんて。
事前調査に来て良かった。
それから2、3日俺は街の調査を続けた。
もう、得られる情報も無いと判断し、明日にはアジトへ戻ろうと考えていた時、入国審査場にいた警備隊員が私服で歩いているのを見つけた。
なんとか内通者に仕立てあげたくて、貴族の執事だとか適当に話しをこじつけて、強引に酒場に連れ込む。
適当な話しをしながら弱味を探ると、うまい具合に国に置いてきた女の話しが出てきた。
『女の家族を助ける』と嘘をついて、相手の出方を見る。
おっ、乗って来そうだ。
我々一味が無事に入国出来るように、誤魔化してもらう約束を取り付けた。
それと、魔道具の設置場所もだ。
これだけの情報があれば、街の襲撃は成功したようなものだろう。
俺は意気揚々と、アジトに戻った。
お頭に報告する。
お頭も、マサルの用心深さに少し驚いていたが、こちらの準備も万端だ。
そして遂にその日が来た。
俺達20人は、定期船でマサル共和国に到着する。
入国審査場にはあのクルスがひとりでいた。
予め観光客が少ない時間帯を確認してその時間にひとりで担当するように打ち合わせておいたのだ。
ワルダー様には頰被りをしてもらい、お忍びの貴族を気取ってもらう。
無事に入国出来た。
まずは第一関門突破だ。
次は魔道具が無いエリアを狙って騒ぎを起こし、その隙に大手商会に押し入る寸法だ。
騒ぎを起こす者を街の中に忍ばせておき、夜を待つ。
狙う商会も事前に調査済みだ。
そして深夜、遂に決行する。
街に潜ませた者が、火が着いた油樽を道にばら撒き、火事だと騒ぎ立てる。
その隙に俺達は商会を襲うのだが、……
時間になっても騒ぎが起きない。
その時、商会の近くで潜んでいた俺達の肩を叩く奴等がいた。
<<マクベス視点>>
少し前から入国審査場のクルスの様子がおかしい事に気付いていた。
いつもは明るく誰とでも笑い合っているのに、何か思い詰めたような顔をしている。
俺はクルスを酒場に誘った。
酒場が近くなるとクルスの奴、突然泣き出した。
事情を聞いてみると、お忍びの貴族を入国時に目溢しする約束をしたらしい。
俺はピンときた。
そいつらは恐らく盗賊団に違いない。
俺はクルスに黙っているように告げ、マサル様に相談した。
マサル様は、クルスを処罰するのではなく、逆に労るような言葉を下さった。
有り難い。本当に神様のような人だと思う。
マサル様は、俺に魔道具をひとつ下さった。
時計台に設置すると、街中が画面に表示される魔道具だ。
クルスに聞いた日時から街中を監視する。
クルスには、予定通り盗賊団を入国させた。
その時に撮った一味の顔写真と監視の魔道具を使って、奴等の動きは丸見えだ。
奴等を警備隊員に尾行させ、騒ぎを起こす前に捕まえてやった。
もちろん、大商会の前で所在なさげな奴等は、俺が一網打尽にしてやったが。
大捕物の翌日、クルスは辞表を持って俺のところにやってきた。
やはり本人なりの呵責があるのだろう。
マサル様に、今回のことの顛末とクルスの決意を伝えた。
マサル様は少し思案した後ボソリと呟かれた。
「わたしも少し動いてみましょう。」
それから1週間後、クルスが入国審査場に立つ最後の日が来た。
クルスの事情を知った大商会の支店長は、除隊後のクルスを雇って下さることになった。
最終の連絡船が到着した時、クルスの顔に久しぶりの笑顔があった。
幼なじみの女性の顔がそこにあったからだ。
第10章 完
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