上 下
230 / 382
第10章 ダンジョン攻略

17 【ダンジョン踏破2】

しおりを挟む
<<マサル視点>>
グリルさんと冒険者ギルドで打ち合わせをしていると、グリルさんに渡してあるトランシーバーに通話が入った。

冒険者のナルンさんからだった。

どうやら、ダンジョンの最下層に辿り着いたみたいだ。

トランシーバーの音量を上げて、音声を共有してもらう。

赤い棒4本で出来た門があるだって!

俺にはそれが鳥居に思えたので、特徴を確認する。

やはり鳥居のようだ。

と、すると古代の転移者によるものに違いない。

「わたしも今からそっちに行きます。

すぐに行くので、そのまま動かないで下さいね。」

興奮気味にそれだけ言うと、俺はグリルさんを伴って、ナルンさん達のところへ転移した。



目の前に鳥居があった。

やはり、これは古代の転移者の遺物のようだ。

近寄ってみると、日本語で何か書いてある。

「門を抜けるには、狐が持つ石を2つの灯籠の上に2つづつおけ。」

俺は、鳥居の右下にある石の狐が持っている6個の石から4つを掴んで、左右にある灯籠にそれぞれ2つづつ置いた。

何も変わらない。

試しに鳥居を潜ってみると、普通に潜ることができた。

グリルさん達も潜ろうとしたが、潜れなかった。

どうやら、あの文章を読むことが出来る者だけ、つまり日本からの転移者のみが潜れるようだ。

「どうやら、わたししか潜れないようです。

ここから先は、わたしが行ってきます。」

俺は皆にそう言って、奥へと進んで行った。

しばらく歩くと後方に濃い霧が発生し、後ろが見えなくなる。

もう少し行くと、神社の境内が見えてきた。

境内には、人間と同じくらいの背丈のゴーレムが数体、掃き掃除をしている。

その横を抜けて更に奥に行くと、社があった。

木製の格子状になった扉を開く。

暗い社の中は少しカビ臭く、長い年月の経過を感じさせる。

「ライト」

光が俺の前方に現れ、次第に広がると共に、暗い社の中が露わになっていく。

正面には、女性が3人立ち、その側には竜と虎が控えている。

荒削りだが、活き活きとした躍動感のある木彫りの像だ。

女性3人は、マリス様とこの世界を作った2人の女神だろう。

確かシール様とポーラ様だったか。

竜はもしかすると、セイルかナージャだろう。

ホコリを払おうと像に近寄って行くと、像の背後から唸り声が聞こえてくる。

「グルルル」

素早く目の前に結界を張り、一歩下がる。

虎の像の背後から何か大きなものが飛び出して来た。

そいつが繰り出した虎爪攻撃は、俺が張った結界に弾かれ、そいつは一歩下がって、俺の前に立った。

体長5メートルはあろう、大きな虎だった。

「グルルル、ここに入って来たということは、お前も異世界の者か?」

「マリス様に召喚されたマサルと言います。」

「ほお、マリス様にか。どおりで強力な結界を張れるわけだ。」

「そこの像は、マリス様、シール様、ポーラ様、横の竜はセイル様でしょうか?」

「ほお、マリス様以外にも、シール様やポーラ様、それにセイルまで知っておるのか。

我の名はハリー。お主同様にマリス様に召喚されたタカシ殿の飼い猫だった者だ。」

「飼い猫?」

「そうだ。タカシ殿が召喚された時、我はタカシ殿の腕の中で生を終えるところであった。

しかし、召喚された時にタカシ殿の願いによって、我はマリス様より永遠の命を授かったのだ。

そして、タカシ殿が寿命で永眠された後は、3柱を守護するためにここに留まったのだ。」

「それはいつ頃の話でしょうか?」

「そうだな、まだこの世界に何も無かった頃だな。

マリス様が創造された人族に安定した生活基盤を用意することが、タカシ殿に課せられた使命であったからな。

5000年ほど前になるか。」

「5000年前!」

「そうだ、タカシ殿が田畑を作り、その技術をこの世界に広めたのだ。

そして村から町、そして国と言うこの世界の秩序の基礎を作ったのもタカシ殿なのだ。

その後もタカシ殿が生み出した様々な技術で、この世界の文明は発達していき、人族は大きな繁栄と力を手に入れた。

タカシ殿はマリス様から200年ほどの寿命をもらい、その天寿を全うされた。

それから我はセイルと共にマリス様達を守護しているのだ。」

「この社はタカシさんが作られたのですか?」

「そうだ、タカシ殿はこの社をこの世界の象徴として作られた。

だがタカシ殿の晩年近くになると、この社を自国の物にしようとする国家間での争いが頻繁に起きたのだ。

この社を手中にすることで、この世界での覇権を唱えたかったのだろう。

タカシ殿は、そのことを憂いて、人族の文明から最低限の知識以外を消して、お亡くなりになったのだ。

そして我はこの社を人族の目に付かないこの地に埋めることにした。

そして、ここで長い眠りについていたのだ。」

この世界の古代文明はタカシさんによって作られたのか。

「ところでお主、どこでセイルのことを知ったのだ?」

「このダンジョンの55階層におられました。

今は、地上の我が家に住んでおられます。」

「なんと、ここに来ておったのか。

セイルとは、この社を沈める時に別れたのだ。

彼奴は外の見張り役をしておったはずだが。」

とりあえずは、友好的に話しが出来そうだ。

「久しぶりに起きたことだし、セイルにも会いたい。

マサル殿と言ったか、我をセイルのところに案内してはくれぬか。」

「ハリー様、お連れするのはやぶさかではありませんが、そのお姿のままでは、ちょっと。」

「そうだな。セイルはどのような格好をしておったか?」

「セイル様は、人間の少女でした。」

「では我も少年になるとしよう。」

ハリー様はそう言うと、可愛らしい少年の姿に変わった。

「マサル殿、これでどうだ。」

「全く問題ありません。」

「ではこの姿にしよう。
それと、我のことはハリーと呼び捨てで良いぞ。

マサル殿はタカシ殿と同格であるし、何よりこの姿の我に敬語はおかしいだろう。」

「分かりました。では、ハリー君と呼ばせて頂きます。」

「それで良い。では行こうか。」

「ちょっとお待ち下さい。

鳥居のところで仲間が待っていますので、一言話してきます。」

俺はナルンに適当に話しをして、ハリー様と一緒に自宅に移動した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜

舞桜
ファンタジー
 初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎  って、何故こんなにハイテンションかと言うとただ今絶賛大パニック中だからです!  何故こうなった…  突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、 手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、 だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎  転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?  そして死亡する原因には不可解な点が…  様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、 目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“  そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪ *神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのかのんびりできるといいね!(希望的観測っw) *投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい *この作品は“小説家になろう“にも掲載しています

異世界道中ゆめうつつ! 転生したら虚弱令嬢でした。チート能力なしでたのしい健康スローライフ!

マーニー
ファンタジー
※ほのぼの日常系です 病弱で閉鎖的な生活を送る、伯爵令嬢の美少女ニコル(10歳)。対して、亡くなった両親が残した借金地獄から抜け出すため、忙殺状態の限界社会人サラ(22歳)。 ある日、同日同時刻に、体力の限界で息を引き取った2人だったが、なんとサラはニコルの体に転生していたのだった。 「こういうときって、神様のチート能力とかあるんじゃないのぉ?涙」 異世界転生お約束の神様登場も特別スキルもなく、ただただ、不健康でひ弱な美少女に転生してしまったサラ。 「せっかく忙殺の日々から解放されたんだから…楽しむしかない。ぜっっったいにスローライフを満喫する!」 ―――異世界と健康への不安が募りつつ 憧れのスローライフ実現のためまずは健康体になることを決意したが、果たしてどうなるのか? 魔法に魔物、お貴族様。 夢と現実の狭間のような日々の中で、 転生者サラが自身の夢を叶えるために 新ニコルとして我が道をつきすすむ! 『目指せ健康体!美味しいご飯と楽しい仲間たちと夢のスローライフを叶えていくお話』 ※はじめは健康生活。そのうちお料理したり、旅に出たりもします。日常ほのぼの系です。 ※非現実色強めな内容です。 ※溺愛親バカと、あたおか要素があるのでご注意です。

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。

前世は最悪だったのに神の世界に行ったら神々全員&転生先の家族から溺愛されて幸せ!?しかも最強➕契約した者、創られた者は過保護すぎ!他者も!?

a.m.
ファンタジー
主人公柳沢 尊(やなぎさわ たける)は最悪な人生だった・・耐えられず心が壊れ自殺してしまう。 気が付くと神の世界にいた。 そして目の前には、多数の神々いて「柳沢尊よ、幸せに出来なくてすまなかった転生の前に前の人生で壊れてしまった心を一緒に治そう」 そうして神々たちとの生活が始まるのだった... もちろん転生もします 神の逆鱗は、尊を傷つけること。 神「我々の子、愛し子を傷つける者は何であろうと容赦しない!」 神々&転生先の家族から溺愛! 成長速度は遅いです。 じっくり成長させようと思います。 一年一年丁寧に書いていきます。 二年後等とはしません。 今のところ。 前世で味わえなかった幸せを! 家族との思い出を大切に。 現在転生後···· 0歳  1章物語の要点······神々との出会い  1章②物語の要点······家族&神々の愛情 現在1章③物語の要点······? 想像力が9/25日から爆発しまして増えたための変えました。 学校編&冒険編はもう少し進んでから ―――編、―――編―――編まだまだ色んなのを書く予定―――は秘密    処女作なのでお手柔らかにお願いします。文章を書くのが下手なので誤字脱字や比例していたらコメントに書いていただけたらすぐに直しますのでお願いします。(背景などの細かいところはまだ全く書けないのですいません。)主人公以外の目線は、お気に入り100になり次第別に書きますのでそちらの方もよろしくお願いします。(詳細は200) 感想お願いいたします。 ❕只今話を繋げ中なためしおりの方は注意❕ 目線、詳細は本編の間に入れました 2020年9月毎日投稿予定(何もなければ)  頑張ります (心の中で読んでくださる皆さんに物語の何か案があれば教えてほしい~~🙏)と思ってしまいました。人物、魔物、物語の流れなど何でも、皆さんの理想に追いつくために! 旧 転生したら最強だったし幸せだった

使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。気長に待っててください。月2くらいで更新したいとは思ってます。

前世で家族に恵まれなかった俺、今世では優しい家族に囲まれる 俺だけが使える氷魔法で異世界無双

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
家族や恋人もいなく、孤独に過ごしていた俺は、ある日自宅で倒れ、気がつくと異世界転生をしていた。 神からの定番の啓示などもなく、戸惑いながらも優しい家族の元で過ごせたのは良かったが……。 どうやら、食料事情がよくないらしい。 俺自身が美味しいものを食べたいし、大事な家族のために何とかしないと! そう思ったアレスは、あの手この手を使って行動を開始するのだった。 これは孤独だった者が家族のために奮闘したり、時に冒険に出たり、飯テロしたり、もふもふしたりと……ある意味で好き勝手に生きる物語。 しかし、それが意味するところは……。

異世界転生したら何でも出来る天才だった。

桂木 鏡夜
ファンタジー
高校入学早々に大型トラックに跳ねられ死ぬが気がつけば自分は3歳の可愛いらしい幼児に転生していた。 だが等本人は前世で特に興味がある事もなく、それは異世界に来ても同じだった。 そんな主人公アルスが何故俺が異世界?と自分の存在意義を見いだせずにいるが、10歳になり必ず受けなければならない学校の入学テストで思わぬ自分の才能に気づくのであった。 =========================== 始めから強い設定ですが、徐々に強くなっていく感じになっております。

処理中です...