上 下
220 / 382
第10章 ダンジョン攻略

7 【ランスの特訓1】

しおりを挟む
<<ランス視点>>
「ランス様、ダンジョン攻略にお付き合い頂いていますが、正直なところ、どうでしょうが?

お恥ずかしい話しですが、今のギルド所属の冒険者達では、これ以上の攻略は難しいと思っています。

全体的な底上げが必要なのです。

そこで恥を忍んでお願いしたいのですが、魔法を教えて頂けないでしょうか?」



グリルさんから冒険者の皆さんに教えて欲しいって頼まれちゃった。

教えるって言っても、僕も自己流なんだよねー。

「グリルさん、分かりました。
でも僕も自己流なので、教えられるか分かりませんよ。」

「ありがとうございます。
魔法を使える者を集めますので、何かコツだけでも掴んでもらうようにしたいんです。

ちょっと待って下さいね。
今呼んてきますから。」

グリルさんは急いで部屋を出て行っちゃった。

グリルさんが出て行ってすぐに受付のお姉さんが、お菓子を持って来てくれた。

昨日イリヤと行った店のお菓子だ。

美味しいって評判だから、楽しみにしていたのに、昨日は遅かったから売り切れていたんだよね。

お菓子を食べながら待っていると、グリルさんが10人ほどの冒険者を連れて戻ってきたんだ。

皆んなで練習場に移動する。

「ではランス様、お願いします。」

「「「お願いしまーす。」」」

「この間からダンジョンの中で見ていて思ったことを話しますね。

皆さんは、魔法を使う時に何を考えていますか?」

僕は1番魔法の威力が弱かったお姉さんを指さした。

「えーと、詠唱ですかね。
間違っちゃうと魔法が発動しないから、間違わないように頭の中で暗唱しながら魔法を使っています。」

「他の人はどうですか?
同じだという人は、手を挙げて下さい。」

ほとんどの手が挙がった。

おかしいなぁ。

お父様やパターソン先生から魔法を教えてもらったんだけど、詠唱については、何も言って無かったんだよね。

「魔法って詠唱しないと発動しないのですか?」

「はい、そう教えて頂きました。」

「あのぉ、僕は詠唱したことないですが。」

「「「………ええっー。」」」

皆さん驚いていることに、逆に驚いた。

「詠唱なんて無くても魔法は発動しますよ。

イメージが大切なんです。

お姉さん、手にこの棒を持って下さい。」

先程質問したお姉さんに小さな木の棒を渡す。

「その棒の先に火がついている様子をイメージして下さい。

出来れば形や色大きさも精緻に。

そしてイメージが出来たら、次に棒の先に火が着くまでのイメージを詳細に思い描いて下さい。」

お姉さんは一生懸命にイメージしている。

数秒後、棒の先に火が着いた。

「「「おおー。」」」

皆んな驚いている。

「今火が着く時、何か考えましたか?」

「はい、火が着くイメージをしました。

なんていうか、棒の先端から煙が出て、そこに種火が着き、火が徐々に大きくなるイメージですね。」

「詠唱無しでも魔法は発動しましたよね。

大事なのはイメージだと思うんです。

お姉さん、この棒に先程の火をもう一度着けてもらえますか。」

先程よりも少し大きな僕をお姉さんに渡す。

先程のイメージが残っていたのか、今度はすぐに火が着いた。

「じゃあ、その火を少しだけ大きくして下さい。」

お姉さんは火を大きくしようと頑張るがなかなか上手くいかない。

少し大きくなっても元に戻ったり、大きくなり過ぎたりしてる。

「火を燃やす時には酸素と言うものがいるって、お父様が言っていました。

酸素って言うのは見えないんだけど、僕達人間がいつも吸っているもので、それが無いと生きていけないそうです。

だから人が生きていられる場所であれば、どこでもあるそうです。

お姉さん、周りにある風を集めて少しずつ火に近づけるイメージをしてみて下さい。」

お姉さんは困ったような顔をしている。

何度も自分で息を吸って、風の流れをイメージしているようだ。

納得出来たのか、火に向かって数秒後、火は少しずつ大きくなっていった。

「「「おおー。」」」

周りがどよめいた。

「わたしも出来たー!」

後ろの方から声がした。

僕の説明に合わせて、自分でもやってみたみたい。

「皆さんもやってみて下さい。

上手くいかない人は、出来た人から、どんな風にイメージしたのかを聞いてみて下さいね。」

ギルドの練習場では、冒険者達が用意されたたくさんの棒を持って真剣に火をつけようとして頑張っていた。

「出来たわ。」
「わたしも。」
「俺なんてこんなに早く着けたぜ。」
「俺は火の強弱はお手の物だ。」

たくさんの喜んでる声や、イメージの仕方を習っている声が聞こえてくる。

でも、いくら頑張っても出来ない人もいた。

元々魔力が無いみたい。

そういう人もいるって、本で読んだことがある。

「魔力が無くても魔素があれば、魔法は使えるみたいです。

だって魔道具があるでしょ。

火を着けられなかった人は、魔素を集めるイメージをしてから、火を着けるイメージして下さい。」

僕がそう言うと、火が着かなかった人は一生懸命に挑戦していた。

やがて、その中から何人かは火を着けることが出来た。

さすがに全員に出来た訳では無いが、皆さん喜んでくれたみたいで良かったよ。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

異世界転生は、0歳からがいいよね

八時
ファンタジー
転生小説好きの少年が神様のおっちょこちょいで異世界転生してしまった。 神様からのギフト(チート能力)で無双します。 初めてなので誤字があったらすいません。 自由気ままに投稿していきます。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...