183 / 382
第8章 亜人大陸の開発
14 【さてどうしようか】
しおりを挟む
<<ランス視点>>
僕とイリヤは今カトウ運輸のロンドー物流センターにいます。
どうしてって?
最近ロンドーやヤライ、ヤコブにスパニからの亡命者がたくさん入ってきているからなんです。
カトウ運輸でも、結構な数の亡命者が働いています。
お父様曰く、『亡命者は新しい土地で働くところも住むところも無い人が多いから、そのままにしておくと、困窮してしまう人が多い。
だから、早く働き先や住居を与えてあげた方が、本人達のためにも、街の治安面からも良いことなんだよ』って。
まぁカトウ運輸なら、寮も食堂も完備だから亡命者の人達が働くには最適かも。
特にスパニの人のほとんどは獣人だから身体能力は高いし、物流センターでの作業や配送には向いているかもね。
「会頭、最近入社したスパニからの亡命者達についてなのですが。」
番頭のヤングさんは、今こちらに来ていて、新しく採用した従業員達と個人面談しているみたい。
そして、今回面談した従業員の大半がスパニからの亡命者なんだよね。
今は会議室で、面談結果をお父様に報告しているところです。
だから、何故僕達がいるんだって?
実は僕とイリヤは国際連合から亜人大陸との正式な親善大使として任命されたからなんです。
亜人大陸の各国との円滑な関係を維持・発展させていくのが僕達2人の役割です。
今ロンドー、ヤコブ、ヤライの3国は国際連合にも加盟し、非常に良好な関係にあります。
経済的にも安定し、目立ったトラブルも無いから安心なんだけど、スパニだけ孤立しているんです。
元々スパニは他の3国とずっと対立しているから、孤立しているのは前からなんだけど、3国が同盟を結びジャボ大陸との国交まで出来てしまったから、亜人大陸におけるスパニの立ち位置が微妙なんだよね。
親善大使としては、少しでも亜人大陸に懸念があるなら、スパニの情報も掴んでおきたいんだけど、なかなかその機会が無かったんだ。
今日ヤングさんがお父様にスパニからの亡命者の面談結果を報告するって聞いたから、お父様にお願いして一緒に聞かせてもらっています。
「まずスパニの状況ですが、ここ数年の急激な軍備の増強のために、税が国民の限界を超えるほどに上昇しているようです。
また、2年前のヤライ出兵で、数万人単位の兵力を失ったため、その補充として無理な徴兵も行われています。
村々からは若い男性が兵士として徴発され、耕作自体が滞る有様にも関わらず高い税を要求されて、疲弊した農民が大量に亡命しているようです。
また軍においても、軍隊上層部の腐敗が激しく、兵に倦厭気分が蔓延しているそうで、今回面談した中にも、多数の元兵士が混じっていました。」
「そうですか。スパニもひどいことになっているようですね。
ただそんな中でも軍備の増強をしているということは、他国への侵攻を諦めていないということですね。」
「恐らくそうだと思われます。」
「ヤングさんありがとうございます。一度国際連合の会議にかけて、今後の対応について検討してみます。」
ヤングさんの報告が終わり、別の話しがあるとのことで、僕達はその場を後にしました。
「お父様も大変なことになっているみたいね。わたし達にも何かできることはないでしょうか?」
「うん~ん。難しいよね。国レベルの話しになっちゃうと、僕達じゃまだまだ無理だよね。」
「でもね、困っている人達がたくさんいるのが分かっているのに、何もしないなんて嫌だわ。」
「イリヤの言うことは良く分かるよ。
せっかく国際連合から親善大使なんてたいそうな肩書をもらったんだから、何かしたいよね。
何が出来るか、よく考えてみようか。」
今回の問題は、明らかにスパニの内部的な問題です。
スパニに抗議して亡命者を返すことは出来ますが、そんなことをすると、亡命者に待っているのは死のみでしょう。
『スパニがこちらに何か言って来ない以上、こちらから手を出すのは内政干渉となり、それを口実にスパニは戦争を仕掛けてくるだろう。』ってお父様が言っていました。
本当に厄介な問題だと思います。
そんなことを話しながら、イリヤとロンドーの街を抜けて、スパニとの国境付近の村までやって来ました。
実はロンドー王妃になったデカさんから、美味しいスイーツを作っている店がこの村にあると聞いていたので、イリヤの沈んだ気持ちを何とかしたいと思って、ここまで来たのです。
「イリヤ、前にデカさんが言ってた美味しいスイーツのある村に着いたよ。
食べて行こうよ。」
「うん。お兄ちゃん、優しいね。大好きだよ。
さあ早く行こうよ。」
イリヤは俯いていた顔を上げて、満面の笑みを浮かべると、僕の腕をとって走り出した。
はっきり言おう。
美味しかった。この店のスイーツは天下一品と言って過言ではない。
至福の顔をしながら食べていたイリヤだったが、食べ終わってからの残念な顔が面白かったのは内緒。
もちろんお土産にたくさん買ったのは当然だよね。
「く、来るなー、やめろー」
遠くから女の人の声がかすかに聞こえます。
イリヤも聞こえたようで、2人で顔を見合わせ確認すると、声のした方へ急いで飛んでいきました。
僕とイリヤは今カトウ運輸のロンドー物流センターにいます。
どうしてって?
最近ロンドーやヤライ、ヤコブにスパニからの亡命者がたくさん入ってきているからなんです。
カトウ運輸でも、結構な数の亡命者が働いています。
お父様曰く、『亡命者は新しい土地で働くところも住むところも無い人が多いから、そのままにしておくと、困窮してしまう人が多い。
だから、早く働き先や住居を与えてあげた方が、本人達のためにも、街の治安面からも良いことなんだよ』って。
まぁカトウ運輸なら、寮も食堂も完備だから亡命者の人達が働くには最適かも。
特にスパニの人のほとんどは獣人だから身体能力は高いし、物流センターでの作業や配送には向いているかもね。
「会頭、最近入社したスパニからの亡命者達についてなのですが。」
番頭のヤングさんは、今こちらに来ていて、新しく採用した従業員達と個人面談しているみたい。
そして、今回面談した従業員の大半がスパニからの亡命者なんだよね。
今は会議室で、面談結果をお父様に報告しているところです。
だから、何故僕達がいるんだって?
実は僕とイリヤは国際連合から亜人大陸との正式な親善大使として任命されたからなんです。
亜人大陸の各国との円滑な関係を維持・発展させていくのが僕達2人の役割です。
今ロンドー、ヤコブ、ヤライの3国は国際連合にも加盟し、非常に良好な関係にあります。
経済的にも安定し、目立ったトラブルも無いから安心なんだけど、スパニだけ孤立しているんです。
元々スパニは他の3国とずっと対立しているから、孤立しているのは前からなんだけど、3国が同盟を結びジャボ大陸との国交まで出来てしまったから、亜人大陸におけるスパニの立ち位置が微妙なんだよね。
親善大使としては、少しでも亜人大陸に懸念があるなら、スパニの情報も掴んでおきたいんだけど、なかなかその機会が無かったんだ。
今日ヤングさんがお父様にスパニからの亡命者の面談結果を報告するって聞いたから、お父様にお願いして一緒に聞かせてもらっています。
「まずスパニの状況ですが、ここ数年の急激な軍備の増強のために、税が国民の限界を超えるほどに上昇しているようです。
また、2年前のヤライ出兵で、数万人単位の兵力を失ったため、その補充として無理な徴兵も行われています。
村々からは若い男性が兵士として徴発され、耕作自体が滞る有様にも関わらず高い税を要求されて、疲弊した農民が大量に亡命しているようです。
また軍においても、軍隊上層部の腐敗が激しく、兵に倦厭気分が蔓延しているそうで、今回面談した中にも、多数の元兵士が混じっていました。」
「そうですか。スパニもひどいことになっているようですね。
ただそんな中でも軍備の増強をしているということは、他国への侵攻を諦めていないということですね。」
「恐らくそうだと思われます。」
「ヤングさんありがとうございます。一度国際連合の会議にかけて、今後の対応について検討してみます。」
ヤングさんの報告が終わり、別の話しがあるとのことで、僕達はその場を後にしました。
「お父様も大変なことになっているみたいね。わたし達にも何かできることはないでしょうか?」
「うん~ん。難しいよね。国レベルの話しになっちゃうと、僕達じゃまだまだ無理だよね。」
「でもね、困っている人達がたくさんいるのが分かっているのに、何もしないなんて嫌だわ。」
「イリヤの言うことは良く分かるよ。
せっかく国際連合から親善大使なんてたいそうな肩書をもらったんだから、何かしたいよね。
何が出来るか、よく考えてみようか。」
今回の問題は、明らかにスパニの内部的な問題です。
スパニに抗議して亡命者を返すことは出来ますが、そんなことをすると、亡命者に待っているのは死のみでしょう。
『スパニがこちらに何か言って来ない以上、こちらから手を出すのは内政干渉となり、それを口実にスパニは戦争を仕掛けてくるだろう。』ってお父様が言っていました。
本当に厄介な問題だと思います。
そんなことを話しながら、イリヤとロンドーの街を抜けて、スパニとの国境付近の村までやって来ました。
実はロンドー王妃になったデカさんから、美味しいスイーツを作っている店がこの村にあると聞いていたので、イリヤの沈んだ気持ちを何とかしたいと思って、ここまで来たのです。
「イリヤ、前にデカさんが言ってた美味しいスイーツのある村に着いたよ。
食べて行こうよ。」
「うん。お兄ちゃん、優しいね。大好きだよ。
さあ早く行こうよ。」
イリヤは俯いていた顔を上げて、満面の笑みを浮かべると、僕の腕をとって走り出した。
はっきり言おう。
美味しかった。この店のスイーツは天下一品と言って過言ではない。
至福の顔をしながら食べていたイリヤだったが、食べ終わってからの残念な顔が面白かったのは内緒。
もちろんお土産にたくさん買ったのは当然だよね。
「く、来るなー、やめろー」
遠くから女の人の声がかすかに聞こえます。
イリヤも聞こえたようで、2人で顔を見合わせ確認すると、声のした方へ急いで飛んでいきました。
0
お気に入りに追加
329
あなたにおすすめの小説
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる