150 / 382
第7章 研究室と亜人大陸
9 【追っ手の正体3】
しおりを挟む
<<マサル視点>>
「良かった。わたしは、デカさんの依頼を受けてこちらに参りました。
族長のカーン様にお取り次ぎ頂けますでしょうか?」
俺がデカさんの名前を出したからだろうか、一瞬怪訝そうな表情を見せた兵士は、近くの兵士に声を掛けて小声で少し話すと、そのままその場から立ち去った。
「今、隊長は族長に連絡に行きました。
しばらくお待ち下さい。」
先程の兵士と入れ替わりにこの場に残った兵士が俺に話し掛けてきた。
「ところで、デカ様達はお元気でしょうか?」
「わたしがお会いしたのはデカさんだけです。
詳しくは、カーン様にお話しさせて頂きますが、わたしどものところまで来られる間にだいぶ苦労されたみたいです。」
他国と緊張状態にある現状、あまり情報は拡散させない方が、良いだろう。
「そうですか。デカ様達が出立した後直ぐにスパ二の間者が、数人姿を消したので、少し気になっていたのです。
でも、デカ様が無事で良かった。」
その間者達がデカさん達を追跡していたとしたら、デカさん達を襲った連中と考えてもおかしくは無い。
「はー、はー、お待たせ致しました、カトウ公爵様。
カーン様のところまでご案内致します。」
15分ほど前に立ち去った兵士が、息を切らしながら俺にそう告げる。
兵士に案内され、森の中をしばらく進むと、開けた場所に出た。
広場の奥にはいくつかの建物がみえる。
その中でも一際大きな建物に案内され、兵士に促されるままに1つの扉に入る。
「カーン様、カトウ公爵様をお連れ致しました。」
部屋の中には1人の男性が立ち上がって迎えてくれた。
「お初にお目にかかる、カトウ公爵殿。わたしは、ヤライ族 族長のカーンです。」
「初めまして、マサル・カトウです。
カーン様は、わたしのことをご存知でしたか?」
なぜ彼が俺のことをカトウ公爵と呼ぶのか不思議だ。
「様付けは必要ないですぞ。カトウ公爵のあちらでのご活躍は、サイカーのヤコブ族から、こちらのヤコブ族経由で伝わっております。
素晴らしい活躍で、ジャボ大陸を1つに纏められたとか。
巨大隕石のことも知っております。
そうそう、結婚式の時の祝福の光は、こちらにも届きましたぞ。
あの時は、大騒ぎでしたわ。はっはっはっ。」
「そうでしたか。サイカー経由でこちらとに情報が入っていたのですね。
カーン殿、わたしのことはマサルとお呼び下さい。」
「ではマサル殿、聞いた話では、デカの依頼でこちらにお越しになったとか。
デカの身に何かあったのでしょうか?」
「実はデカさんがルソン殿を探している間に3回ほど何者かに襲撃を受けたようで、3回目に襲撃を受けた際に1人で倒れているところを偶然通り掛かったわたしの息子が保護しました。
現在は、元気になられてルソン殿と面会も終えています。
わたしがこちらに来た用件は、ヤライ族の現状を把握するためと、ヤコブ族の跡目争いの状況を確認するためです。」
「そうでしたか。やはりデカは追跡されていたのですな。
デカの命を救って頂きありがとうございます。
現在の状況としては、『ロンドーは静観、スパ二は攻めあぐね。』というところでしょうか。
スパ二は、鉱山を手に入れようと小競り合いを仕掛けてきますが、今のところはなんとか防ぎ切っている状態です。
もしここで、スパ二に負けるようなことになると、間違いなくロンドーが攻めて来ます。
そそうならないうちに、盟友のヤコブを援軍として期待しているのですが、長男と3男が族長を巡り争っている始末です。
優秀であった次男のルソンは、相続争いになる事を予見していたのでしょうか、早くに一族の若者を連れて海を渡りました。
そしてルソンは、向こうで成功してからも、こちらとの情報交換は欠かすことはありませんでした。」
「先程兵士の方からデカさんの旅をスパ二の間者が追いかけて行ったと聞きました。
デカさんを襲ったのは、スパ二の間者でしょうか?」
「恐らくスパ二でしょう。
たぶんデカを人質に捕って戦況を有利に動かそうとしているのだと思います。」
なるほど、転移の魔道具を使ってナーラに移動したから、デカさんの居場所がすぐに突き止められることはないと思うが、保護を急いでおこう。
まず、トランシーバーでランスに連絡を入れる。
「ランス聞こえるか?」
「聞こえます。お父様、今どちらですか?」
「今亜人大陸のヤライ族のデカさんの家にいる。」
「デカさんも一緒ですか?」
「デカさんはナーラだ。ルソン殿と一緒にいる。
ランス、デカさんを襲った連中の正体だが、どうやらスパ二族の可能性が高い。
そちらに行く可能性も高いから気をつけてくれ。
デカさんはナーラでしばらく保護しておく。」
「分かりました。」
ランスとの通信を切って、次はリズに連絡をとる。
「リズ聞こえるか?」
「マサルさん、聞こえるわよ。」
「リズ、今すぐナーラに行けるか?」
「今ナーラにいるわ。」
「今からある女性をナーラの屋敷で保護して欲しい。
今、事務局の第3会議室にルソン殿といるはずだ。
俺は今亜人大陸にいるのだが、彼女は俺が今いる場所の族長の娘さんだ。
彼女は亜人大陸からの追っ手に狙われていて王都で襲われた。
俺が転移の魔道具でナーラに移動させたので、追っ手がナーラにいることに気付いていないとは思えないが、一応保護を頼む。
後、予備の転移魔道具を用意して欲しい。」
「分かりました。ちょっと待ってね。
………………………………………
………………………………
…………………………
………………
お待たせ、地下室に置いて来たわ。856429番よ。
デカさんとルソン様も家に連れて来たわ。」
「わかった。ありがとう。
こちらにも設置したら一度そちらに戻って説明する。」
「良かった。わたしは、デカさんの依頼を受けてこちらに参りました。
族長のカーン様にお取り次ぎ頂けますでしょうか?」
俺がデカさんの名前を出したからだろうか、一瞬怪訝そうな表情を見せた兵士は、近くの兵士に声を掛けて小声で少し話すと、そのままその場から立ち去った。
「今、隊長は族長に連絡に行きました。
しばらくお待ち下さい。」
先程の兵士と入れ替わりにこの場に残った兵士が俺に話し掛けてきた。
「ところで、デカ様達はお元気でしょうか?」
「わたしがお会いしたのはデカさんだけです。
詳しくは、カーン様にお話しさせて頂きますが、わたしどものところまで来られる間にだいぶ苦労されたみたいです。」
他国と緊張状態にある現状、あまり情報は拡散させない方が、良いだろう。
「そうですか。デカ様達が出立した後直ぐにスパ二の間者が、数人姿を消したので、少し気になっていたのです。
でも、デカ様が無事で良かった。」
その間者達がデカさん達を追跡していたとしたら、デカさん達を襲った連中と考えてもおかしくは無い。
「はー、はー、お待たせ致しました、カトウ公爵様。
カーン様のところまでご案内致します。」
15分ほど前に立ち去った兵士が、息を切らしながら俺にそう告げる。
兵士に案内され、森の中をしばらく進むと、開けた場所に出た。
広場の奥にはいくつかの建物がみえる。
その中でも一際大きな建物に案内され、兵士に促されるままに1つの扉に入る。
「カーン様、カトウ公爵様をお連れ致しました。」
部屋の中には1人の男性が立ち上がって迎えてくれた。
「お初にお目にかかる、カトウ公爵殿。わたしは、ヤライ族 族長のカーンです。」
「初めまして、マサル・カトウです。
カーン様は、わたしのことをご存知でしたか?」
なぜ彼が俺のことをカトウ公爵と呼ぶのか不思議だ。
「様付けは必要ないですぞ。カトウ公爵のあちらでのご活躍は、サイカーのヤコブ族から、こちらのヤコブ族経由で伝わっております。
素晴らしい活躍で、ジャボ大陸を1つに纏められたとか。
巨大隕石のことも知っております。
そうそう、結婚式の時の祝福の光は、こちらにも届きましたぞ。
あの時は、大騒ぎでしたわ。はっはっはっ。」
「そうでしたか。サイカー経由でこちらとに情報が入っていたのですね。
カーン殿、わたしのことはマサルとお呼び下さい。」
「ではマサル殿、聞いた話では、デカの依頼でこちらにお越しになったとか。
デカの身に何かあったのでしょうか?」
「実はデカさんがルソン殿を探している間に3回ほど何者かに襲撃を受けたようで、3回目に襲撃を受けた際に1人で倒れているところを偶然通り掛かったわたしの息子が保護しました。
現在は、元気になられてルソン殿と面会も終えています。
わたしがこちらに来た用件は、ヤライ族の現状を把握するためと、ヤコブ族の跡目争いの状況を確認するためです。」
「そうでしたか。やはりデカは追跡されていたのですな。
デカの命を救って頂きありがとうございます。
現在の状況としては、『ロンドーは静観、スパ二は攻めあぐね。』というところでしょうか。
スパ二は、鉱山を手に入れようと小競り合いを仕掛けてきますが、今のところはなんとか防ぎ切っている状態です。
もしここで、スパ二に負けるようなことになると、間違いなくロンドーが攻めて来ます。
そそうならないうちに、盟友のヤコブを援軍として期待しているのですが、長男と3男が族長を巡り争っている始末です。
優秀であった次男のルソンは、相続争いになる事を予見していたのでしょうか、早くに一族の若者を連れて海を渡りました。
そしてルソンは、向こうで成功してからも、こちらとの情報交換は欠かすことはありませんでした。」
「先程兵士の方からデカさんの旅をスパ二の間者が追いかけて行ったと聞きました。
デカさんを襲ったのは、スパ二の間者でしょうか?」
「恐らくスパ二でしょう。
たぶんデカを人質に捕って戦況を有利に動かそうとしているのだと思います。」
なるほど、転移の魔道具を使ってナーラに移動したから、デカさんの居場所がすぐに突き止められることはないと思うが、保護を急いでおこう。
まず、トランシーバーでランスに連絡を入れる。
「ランス聞こえるか?」
「聞こえます。お父様、今どちらですか?」
「今亜人大陸のヤライ族のデカさんの家にいる。」
「デカさんも一緒ですか?」
「デカさんはナーラだ。ルソン殿と一緒にいる。
ランス、デカさんを襲った連中の正体だが、どうやらスパ二族の可能性が高い。
そちらに行く可能性も高いから気をつけてくれ。
デカさんはナーラでしばらく保護しておく。」
「分かりました。」
ランスとの通信を切って、次はリズに連絡をとる。
「リズ聞こえるか?」
「マサルさん、聞こえるわよ。」
「リズ、今すぐナーラに行けるか?」
「今ナーラにいるわ。」
「今からある女性をナーラの屋敷で保護して欲しい。
今、事務局の第3会議室にルソン殿といるはずだ。
俺は今亜人大陸にいるのだが、彼女は俺が今いる場所の族長の娘さんだ。
彼女は亜人大陸からの追っ手に狙われていて王都で襲われた。
俺が転移の魔道具でナーラに移動させたので、追っ手がナーラにいることに気付いていないとは思えないが、一応保護を頼む。
後、予備の転移魔道具を用意して欲しい。」
「分かりました。ちょっと待ってね。
………………………………………
………………………………
…………………………
………………
お待たせ、地下室に置いて来たわ。856429番よ。
デカさんとルソン様も家に連れて来たわ。」
「わかった。ありがとう。
こちらにも設置したら一度そちらに戻って説明する。」
0
お気に入りに追加
333
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
転生令嬢の食いしん坊万罪!
ねこたま本店
ファンタジー
訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。
そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。
プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。
しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。
プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。
これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。
こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。
今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。
※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。
※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。
転生幼女の怠惰なため息
(◉ɷ◉ )〈ぬこ〉
ファンタジー
ひとり残業中のアラフォー、清水 紗代(しみず さよ)。異世界の神のゴタゴタに巻き込まれ、アッという間に死亡…( ºωº )チーン…
紗世を幼い頃から見守ってきた座敷わらしズがガチギレ⁉💢
座敷わらしズが異世界の神を脅し…ε=o(´ロ`||)ゴホゴホッ説得して異世界での幼女生活スタートっ!!
もう何番煎じかわからない異世界幼女転生のご都合主義なお話です。
全くの初心者となりますので、よろしくお願いします。
作者は極度のとうふメンタルとなっております…
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
神に同情された転生者物語
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。
すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。
悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。
異世界転生は、0歳からがいいよね
八時
ファンタジー
転生小説好きの少年が神様のおっちょこちょいで異世界転生してしまった。
神様からのギフト(チート能力)で無双します。
初めてなので誤字があったらすいません。
自由気ままに投稿していきます。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる