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第7章 研究室と亜人大陸

9 【追っ手の正体3】

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<<マサル視点>>
「良かった。わたしは、デカさんの依頼を受けてこちらに参りました。
族長のカーン様にお取り次ぎ頂けますでしょうか?」

俺がデカさんの名前を出したからだろうか、一瞬怪訝そうな表情を見せた兵士は、近くの兵士に声を掛けて小声で少し話すと、そのままその場から立ち去った。

「今、隊長は族長に連絡に行きました。
しばらくお待ち下さい。」

先程の兵士と入れ替わりにこの場に残った兵士が俺に話し掛けてきた。

「ところで、デカ様達はお元気でしょうか?」

「わたしがお会いしたのはデカさんだけです。

詳しくは、カーン様にお話しさせて頂きますが、わたしどものところまで来られる間にだいぶ苦労されたみたいです。」

他国と緊張状態にある現状、あまり情報は拡散させない方が、良いだろう。

「そうですか。デカ様達が出立した後直ぐにスパ二の間者が、数人姿を消したので、少し気になっていたのです。

でも、デカ様が無事で良かった。」

その間者達がデカさん達を追跡していたとしたら、デカさん達を襲った連中と考えてもおかしくは無い。

「はー、はー、お待たせ致しました、カトウ公爵様。

カーン様のところまでご案内致します。」

15分ほど前に立ち去った兵士が、息を切らしながら俺にそう告げる。

兵士に案内され、森の中をしばらく進むと、開けた場所に出た。

広場の奥にはいくつかの建物がみえる。

その中でも一際大きな建物に案内され、兵士に促されるままに1つの扉に入る。

「カーン様、カトウ公爵様をお連れ致しました。」

部屋の中には1人の男性が立ち上がって迎えてくれた。

「お初にお目にかかる、カトウ公爵殿。わたしは、ヤライ族 族長のカーンです。」

「初めまして、マサル・カトウです。

カーン様は、わたしのことをご存知でしたか?」

なぜ彼が俺のことをカトウ公爵と呼ぶのか不思議だ。

「様付けは必要ないですぞ。カトウ公爵のあちらでのご活躍は、サイカーのヤコブ族から、こちらのヤコブ族経由で伝わっております。

素晴らしい活躍で、ジャボ大陸を1つに纏められたとか。

巨大隕石のことも知っております。

そうそう、結婚式の時の祝福の光は、こちらにも届きましたぞ。

あの時は、大騒ぎでしたわ。はっはっはっ。」

「そうでしたか。サイカー経由でこちらとに情報が入っていたのですね。

カーン殿、わたしのことはマサルとお呼び下さい。」

「ではマサル殿、聞いた話では、デカの依頼でこちらにお越しになったとか。

デカの身に何かあったのでしょうか?」

「実はデカさんがルソン殿を探している間に3回ほど何者かに襲撃を受けたようで、3回目に襲撃を受けた際に1人で倒れているところを偶然通り掛かったわたしの息子が保護しました。

現在は、元気になられてルソン殿と面会も終えています。

わたしがこちらに来た用件は、ヤライ族の現状を把握するためと、ヤコブ族の跡目争いの状況を確認するためです。」

「そうでしたか。やはりデカは追跡されていたのですな。

デカの命を救って頂きありがとうございます。

現在の状況としては、『ロンドーは静観、スパ二は攻めあぐね。』というところでしょうか。

スパ二は、鉱山を手に入れようと小競り合いを仕掛けてきますが、今のところはなんとか防ぎ切っている状態です。

もしここで、スパ二に負けるようなことになると、間違いなくロンドーが攻めて来ます。

そそうならないうちに、盟友のヤコブを援軍として期待しているのですが、長男と3男が族長を巡り争っている始末です。

優秀であった次男のルソンは、相続争いになる事を予見していたのでしょうか、早くに一族の若者を連れて海を渡りました。

そしてルソンは、向こうで成功してからも、こちらとの情報交換は欠かすことはありませんでした。」

「先程兵士の方からデカさんの旅をスパ二の間者が追いかけて行ったと聞きました。

デカさんを襲ったのは、スパ二の間者でしょうか?」

「恐らくスパ二でしょう。
たぶんデカを人質に捕って戦況を有利に動かそうとしているのだと思います。」

なるほど、転移の魔道具を使ってナーラに移動したから、デカさんの居場所がすぐに突き止められることはないと思うが、保護を急いでおこう。

まず、トランシーバーでランスに連絡を入れる。

「ランス聞こえるか?」

「聞こえます。お父様、今どちらですか?」

「今亜人大陸のヤライ族のデカさんの家にいる。」

「デカさんも一緒ですか?」

「デカさんはナーラだ。ルソン殿と一緒にいる。

ランス、デカさんを襲った連中の正体だが、どうやらスパ二族の可能性が高い。

そちらに行く可能性も高いから気をつけてくれ。

デカさんはナーラでしばらく保護しておく。」

「分かりました。」

ランスとの通信を切って、次はリズに連絡をとる。

「リズ聞こえるか?」

「マサルさん、聞こえるわよ。」

「リズ、今すぐナーラに行けるか?」

「今ナーラにいるわ。」

「今からある女性をナーラの屋敷で保護して欲しい。

今、事務局の第3会議室にルソン殿といるはずだ。

俺は今亜人大陸にいるのだが、彼女は俺が今いる場所の族長の娘さんだ。

彼女は亜人大陸からの追っ手に狙われていて王都で襲われた。

俺が転移の魔道具でナーラに移動させたので、追っ手がナーラにいることに気付いていないとは思えないが、一応保護を頼む。

後、予備の転移魔道具を用意して欲しい。」

「分かりました。ちょっと待ってね。

………………………………………
………………………………
…………………………
………………

お待たせ、地下室に置いて来たわ。856429番よ。

デカさんとルソン様も家に連れて来たわ。」

「わかった。ありがとう。

こちらにも設置したら一度そちらに戻って説明する。」
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