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第7章 研究室と亜人大陸

1 【6年生】

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<<イリヤ視線>>
新しい制服を少し不恰好に着た新入生が、今年も私達の小学校に入学してきました。

お兄ちゃんとわたしは8歳で6年生になりました。

わたし達の生活は相変わらずです。
最近は研究室にいることが多いですが。

研究室は、ずいぶんと大きくなりました。

最初は小学校の裏にあった空き地に建てた小さな小屋のような建物だけだったのですが、初めての参観日にネクターおじ様が視察され、公費を入れて建て替えして下さいました。

今では、共同研究室が5部屋、個人部屋が40、その他食堂や面会室等を含め、校舎と同じくらいの大きさにまでなっています。

その広さに合わせるかのように、今では先生方の人数も30人を越える、キンコー王国最大の研究施設になっています。

もちろん研究テーマは、『都市開発』と『薬学』の2つです。

30人を越える様々な分野の先生方が、この2つのテーマに合わせて、色々な手法で研究をされています。



お兄ちゃんは、レスリーさん達と剣に夢中です。

結構強くなっているみたいで、ときどき王都騎士団に行って稽古をつけてもらっています。

わたしは、シルビア先生に薬学を学んでいます。

シルビア先生は、大陸随一と言われる薬学の研究家です。

たまたまローバー先生が仕事先で意気投合したそうで、わたしが薬学を志していることを聞いて、3年くらい前に研究室に入って下さったみたいです。

シルビア先生ってちょっと変わっているんです。

普段の生活はズボラそのもので、部屋なんかも汚いし、着ている服もボロボロなんだけど、ぜんぜん気にしないんです。

でもいざ研究対象となると人が変わります。

どんなに些細なことでも自分が納得いくまで緻密に調べていきます。

絶対妥協しない姿勢と集中力には、いつも尊敬しています。

シルビア先生の個人部屋は、たくさんの鉢植えで埋め尽くされています。

花や草木等、色とりどりの植物があります。
中には、動くものを見つけたらそちらに牙を見せるような、怖い植物もありますが。

薬学は、草木や花から抽出した成分を混ぜ合わせて、薬用効果を出したり、抽出後の成分を加熱やアルコールに溶かす等加工して、薬用効果を作り出す方法を研究する学問です。

当然、病気のことをよく知らないと出来ないので、上級のお医者様に近い知識が必要です。

シルビア先生も、薬学の学者になる前は、王都で高名なお医者様だったそうです。

わたしもシルビア先生から病気の種類と症状、発症原因、治療方法を教えて頂いています。

「イリヤちゃんは、覚えがはやいねぇ。

もう医学については、ほぼ一通り覚えたんじゃないかい。

まだ3年しか経って無いのにねぇ。

医学生でも普通は8年以上掛かる内容なんだけどねぇ。

しかもまだ8歳じゃないか。いくら救国の英雄と聖女様の子供だと言っても規格外だよ。大したもんだよねぇ。」

「先生ありがとうございます。
いろいろ教えて頂けるのが楽しくって。

でも、実際に治療したことがないので、ちゃんと覚えているか心配です。」

シルビア先生が研究室に来られてから、ずっと医学について教えてもらっていました。

シルビア先生の話しだと、少し前までは、病気は『呪いや不信心による神様の怒り』なんていう迷信がまだ多く信じられており、病気になるとお祓いをするのが一般的だったそうです。

ここ10年くらいになって、病気の原因が細菌や感染によるものだと分かってきて、お医者様と言う職業が日の目を見るようになったらしいです。

先生がおっしゃるには、わたしのお父様やお母様が街の浄化を推進してきたことで、劇的に病気に掛かる人が減ったことで、それまで異端だった『細菌や感染による病気の発症論』が認められたんだそうです。

だから今の医学の発展は、わたしの両親のおかげだっていつも言っておられます。

お父様にこの話しをしてみると、お父様はニコニコして仰います。

「お父さんの生まれた世界でも500年くらい前までは、そんな感じだったんだ。

今では、細菌や感染なんて考え方は当たり前なんだよ。」

そうなんだ。だからお父様は、街の浄化を推進されたんだね。

わたしが生まれた時には、王都には上下水道が当たり前だったし、スラムも無くなっていたから全然実感が無いけどね。



「じゃあ来週からは、実際に病院に行って治療を見学させてもらおうとするかねぇ。」

「はいっ」

先ずはお医者様を目標に頑張ろうと思います。






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この話しを書いている時点で入院6日目です。
(投稿日はもう少し先になっていると思います。)

ようやく腹痛もおさまり、点滴も外れたので、投稿できるようになりました。

4、5ケ月前から続いていたお腹の張りと鈍痛をなんとか誤魔化していたんですが、深夜に強烈な痛みに襲われ、これまでだったら排便で解決していたものが、朝になっても痛みが取れず、病院に駆け込みました。
1軒目では検査機器が足りないということで、そのまま紹介状を持って別の病院へ。
そこで即入院と言われ、そのまま入院しました。

結局、その日の夜に座薬を入れてもらうまで、腹痛はおさまりませんでした。

その日から昨日まで5日間点滴だけの絶食生活でした。

とりあえず今日からは、検査を開始し、治療や手術に向けての検査を始めるそうです。


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